映像業界にもNFTがやってきた
クエンティン・タランティーノ監督が1994年に公開したアカデミー受賞映画「パルプ・フィクション」の未編集シーンをNFTとして公開することが11月2日(米国時間)発表された。
これはニューヨークのNFT.NYCカンファレンスでの発表だ。NFT.NYCはタイムズスクエア付近に4会場点在して開催されており、筆者はパラディウム・タイムズ・スクエアに足を踏み入れた。
なんとそのステージ上に映画「パルプ・フィクション」の生みの親クエンティン・タランティーノ監督がスピーチをしているのを観て驚いた。しかも「パルプ・フィクション」の7つのオリジナルシーンをNFTで販売するという。いよいよ映像業界にもNFT(非代替性トークン)の波がやってきたと言える。
映画の脚本を美術館のガラスケースに閉じ込めておくよりも、NFTとしてコミュニティに展開しみんなで楽しむ方がグルーヴィーだと思っている。
とタランティーノ監督は言う。さすが、刺激的な作品を作る監督は刺激的な方法でファンを喜ばせてくれる。
このタランティーノ監督のNFTとしての脚本・未公開シーンは「シークレットNFT」としてプライバシーを重視したブロックチェーン「Secret Network」上に構築され、NFTマーケットプレイス「OpenSea」でオークションにかけられるという。
このNFTには、90年代に最も影響を与えた芸術作品のひとつである「パルプ・フィクション」の秘密が隠されているそうだ。「パルプ・フィクション」の特定の象徴的なシーンの、これまで知られていなかった秘密が1つ以上含まれているという。それが合計7シーン分オークションにかけられるという。オーナーだけへの特権は、
- 秘密を永遠に自分のものにする
- 信頼できる大切な人たちと秘密を共有する。
- 全世界に公開する
選択肢がオーナーに委ねられている。いままで映画の未公開シーンはブルーレイ特典となるか、アナザーカットとしてストリーミングされるのが常だっただろう。それは不特定多数の誰かに向けての発信となってしまう。一方通行のコミュニケーションでしかない。
それを今回タランティーノ監督はNFTとしてオークションに賭けることにより、多くのファンと盛り上がり、そしてオークション勝者であるオーナーとの新たな関係性を作ることができる。
流通経路も変わる。いままでは映画の配給会社などのライセンス管理者が市場公開を一任されていたのがNFTとしてオークションにかかることにより、いままでタランティーノと直接関係なかった私のような一ファンであったとしても、未公開映像を公開する権利を得ることができるのだ。
さて、なぜNFTなのか?
NFTに馴染みのない方のために説明すると、NFTはブロックチェーン上で生成され、誰が発行人で誰がオーナーなのかの身元が確認できるため、価値を保証することができる。
例えばあなたがタランティーノ監督のNFTを入手した場合、その情報はブロックチェーン上に刻まれるため、オーナーであるあなたが未公開映像を公開する、二次流通にかけたとしても出典元が保証されているため、価値が担保認された状態で取引が行われていく。
この、デジタル流通でも価値が保証され流通する部分が、これまでのデジタルアセットと違うところだ。
「007 No Time to Die」もジェームズ・ボンドのNFTを発売することを発表している。これから映画の未公開シーン、関連アセットの流通をNFTで行うことが当たり前になるのではないかと実感した。この始まりをタランティーノのステージで興奮しながら感じた。
今回筆者は、NFTコレクター、MeebitsDAO(自立分散型組織)のファウンダーとしてメタバース空間での組織やコミュニティのあり方を学ぶことをミッションとしてNFT.NYCに参加している。
何よりも「美術館のガラスケースに入るよりグルーヴィーだ」というタランティーノの発言にしばらく痺れていられそうだ。