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この秋に登場したPICO 4は、視野角105°、解像度は単眼あたり2160×2160の4Kディスプレイ、薄型パンケーキレンズの光学系、Qualcomm XR2プロセッサとメインメモリに8GBを搭載した一体型VRヘッドセットである。高画質と装着のしやすさ、導入しやすい価格設定で俄然、注目されているPICOのエントリーモデルについて、早速レビューしてみた。
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概要
2022年9月22日、スペイン・バルセロナにおいて、PICOから次世代オールインワンVRヘッドセット「PICO 4」が発表された。PICO 4は、軽量なボディと快適な装着感、パンケーキレンズの採用、単眼あたり2160×2160の4Kディスプレイ、そして、使いやすいUIを特徴としている。
PICO 4は、PCやスマホがなくても、6DoFのコンテンツを楽しめるスタンドアローンのVRヘッドセットだ。さらには、PCと接続することにより、SteamVRなどのPC用VRアプリを利用することもできる。
PICO 4は、中国をはじめ、日本と韓国、そして、イギリス、フランス、ドイツ、スペインなどのヨーロッパ13カ国で販売されており、日本での発売が開始されたのが2022年10月7日である。
PICO社は、2015年3月に中国・北京において設立され、統合XRプラットフォームの構築を目指したVR業界のリーディングカンパニーの一つであり、中国のVRゴーグル市場において、高いシェア率を有している。ITおよび通信分野に関する調査・分析をグローバルにおこなっているIDCの調査によれば、世界市場においても業界第3位を誇っている企業だ。2021年8月には、SNSのTikTokを運営するByteDance(字節跳動)が買収し、同社の傘下となった。
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![Vol.26 装着感とコスパに優れたオールインワン型VRヘッドセット「PICO 4」レビュー[染瀬直人のVRカメラ最前線]](https://jp.static.pronews.com/pronewscore/wp-content/uploads/2022/11/68a3d4ae25469c13e915fd877ff3b65a.jpg)
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スペックと外観
PICO 4は、PCに接続したり、ベースステーションを設置する必要もなく、装着するだけで単独でVRを楽しむことができるスタンドアローン型のVRヘッドセットだ。4つのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)トラッキングカメラで、コントローラーや腕の位置を認識する6DoF(6自由度)のインサイドアウト方式を実装している。起動後に空間のプレイエリアを設定して、立位、あるいは座位の状態でVRを体験する。ディスプレイの解像度は両眼で4320×2160、単眼で2160×2160。リフレッシュレートは72Hz/90Hz、視野角は105°。画素密度は1200 PPである。筐体の前面の中央部に単眼のRGBシースルーカメラを搭載しており、装着したまま、パススルーの状態で外部を視認できる。光学系にパンケーキレンズを採用することで、VRヘッドセット部分の幅も35.8mmと薄くなり、小型・軽量化にも成功している。
重量はVRヘッドセット本体が295gとされており、バッテリーやストラップを含めると、筆者が計測したところでは582gであった。瞳孔間距離(IPD)は、62~72mmまで電動で調整が可能となっている。
プロセッサはQualcomm Snapdragon XR2を搭載。RAMは8GB。ストレージ容量は、128GBと256GBの2種類がある。OSは原稿執筆時点でPICO OS 5.2である。
デュアルステレオスピーカーとデュアルマイクが内蔵されているが、外部用のポートはUSB Type-Cのみで、Meta Quest 2(以下:Quest 2)とは異なり、イヤホン端子は用意されていない。USB Type-Cポートから変換アダプターを用いれば、イヤホンを使うことはできる。Bluetoothヘッドセットも利用することが可能だ。
USB Type-Cのポートは、充電やPCとの接続の際にも使用することになる。電源は、最大3時間のプレイが可能な大容量5300mAhのリアマウントバッテリーを内蔵。充電は最大20Wの急速充電のUSB Quick Charge QC 3.0/Power Delivery対応で、充電器はUSB Type-C 20Wが同梱されている。
コントローラーには、ジョイスティック、ホーム、トリガー、グリップの各ボタンを配置。加えて、右手のコントローラーにはABボタンとスクリーンショットボタンが、左手のコントローラーにはXYボタン、メニューボタンが用意されている。スクリーンショットボタンは、静止画の他、長押しで録画もできる。電源は単3の乾電池2つをバッテリーケースに装填する。このバッテリーケースの脱着のフィーリングはなかなか良い。コントローラーの重量は電池を装填した状態で178gであった。
また、画面内に表示されている映像をPCやスマホ、スマートTVに表示できるスクリーンキャスト機能があるから、周囲にいる人たちにもプレイ内容を共有することができる。
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![Vol.26 装着感とコスパに優れたオールインワン型VRヘッドセット「PICO 4」レビュー[染瀬直人のVRカメラ最前線]](https://jp.static.pronews.com/pronewscore/wp-content/uploads/2022/11/67f2a8412ad4a4bf93575a2eaed84e11.jpg)
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![Vol.26 装着感とコスパに優れたオールインワン型VRヘッドセット「PICO 4」レビュー[染瀬直人のVRカメラ最前線]](https://jp.static.pronews.com/pronewscore/wp-content/uploads/2022/11/IPD.jpg)
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装着感について
PICO 4はカウンターウェイト設計により、前方と後頭部の重量バランスがほぼ均等に分散されているから、軽く感じられてつけ心地が良い。ストラップも大きく上げ下げできるので、装着もしやすい。後部のホイール状のストラップ調整ダイヤルで調節する仕様なので、ストラップをきつく締めつけたりしなくても、ずり落ちてこないから快適である。
顔面に接触するフェイスクッションには速乾性に優れた独自素材のSuperSkinが採用されており、肌触り、フィット感もなかなか良い。マグネットで取り外しも簡単なので、洗浄・消毒したり、交換も容易だ。ヘッドセット後頭部には、滑り止め加工が施されたPUレザーが使用されており、頭にしっかりホールドされる印象だ。
眼鏡をかけて装着するための空間をつくる眼鏡スペーサーも同梱されており、本体にはマグネットでスムーズに脱着する。また、先頃、眼鏡ブランドのJINSのオンラインショップにて、オーダーメイド専用の視度補正レンズの販売が開始された。この視度補正レンズを利用することで、メガネの装着が不要になり、VR体験がより快適になる。
本体にはSoC(Qualcomm Snapdragon XR2)の温度上昇を防ぐための放熱用のファンが配備されており、内部の曇りを防いでいる。
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操作感とトラッキングの精度について
PICO 4のディスプレイは、ドイツの認証機関であるテュフ・ラインランド社の低ブルーライト比率の認証を受けており、長時間の視聴においても眼の疲れを低減する。また、PICO 4の特徴として、フルカラーのパススルー機能が備わっていることが挙げられる。装着したままで、ヘッドセットの外の様子をカラー表示で確認できるのだ。色彩がある分、Quest 2等のモノクロ表示より、外部の状況が把握しやすい。設定からクイックシースルーモードをオンにすると、ヘッドセットの右側面を2回叩く動作だけで、パススルー機能が有効になるので、切り替えもスムーズだ。ただし、パススルー機能は、ヘッドセット正面の中央部分の単眼のカメラが担っているため、立体視ではない。遠近感は感じられないから、移動する場合は注意が必要だ。
PICO 4のコントローラーは、赤外線センサーが配置され、6DoFに対応している。デザイン性と構造強度を考慮したトラッキングリングを配したデザインとなっており、触覚のフィードバックも、かなりリアルに感じられる。スクリーンショットボタンが、単独で用意されている点も便利で評価できる。
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画質と音質について
PICO 4のディスプレイの視野角は105°、両眼の解像度は4320×2160ピクセル、片目あたりの解像度は2160×2160ピクセルとなっている。解像度はQuest 2の両眼3664×1920ピクセル、片目1832×1920ピクセルより若干上回っているが、8Kのサンプル動画やローカルのストレージに保存した筆者が撮影した8KのVR動画の映像の表示を比較してみたところ、画質はQuest 2の方が些か発色が派手でシャープな印象だった。PICO 4はハイライト部のディテールの再現性が良く、落ち着いた自然な発色だと感じられた。
オーディオについては、内蔵スピーカーやマイクは価格相応のクオリティーだと思われる。音質にこだわる場合は、USB Type-C端子を介すか、Bluetoothのヘッドセットを利用することをおすすめする。
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コンテンツについて
動画の視聴としては、PICO VIDEOのアプリに、数々のVR動画や映画コンテンツが用意されている。PICO VIDEOには、TikTokとの連携やPICO VRライブストリーミングのテスト運用も始められている模様だ。
その他、YouTube、Hulu、Prime Video、Disney+、Apple TV+、U-Next、DMM、ゲーム・エンタメ系のライブ配信のTwitchなどのサービスが、Webブラウザを利用する形態として、ラインナップされている。
VRゲームについては、Quest 2の充実度よりは劣るものの、現在、PICO Storeには100以上のタイトルが揃っている。国内のコンテンツとしては、VRアクションアドベンチャーゲーム「オノゴロ物語~The Tale of Onogoro~」やVR魔法アクションRPG「RUINSMAGUS~ルインズメイガス~」などが順次、リリースされる。日本のUUUM株式会社とのコラボレーションとして、インフルエンサーVRチャンネルが立ち上げられたことなどもユニークな動向だ。
また、PICO 4にはフィットネス・トラッキングのプログラムである「PICO Fitness Program」が導入されており、ユーザーは、過去のVRゲームのプレイのデータや、エネルギー消費量を確認することができるようになっている。
PICO 4はスタンドアローンで機能するVRヘッドセットだが、PCと接続することによりSteamVRで配信されているアプリやゲームを楽しむことができる。公式の接続アプリ「ストリーミングアシスタント」を利用して、USB 3.0以上のType-Cケーブルによる有線接続、あるいは、Wi-Fi(5GHz帯以上)による無線接続が可能となっている。また、サードパーティーの無線接続用アプリ「バーチャルデスクトップ」も、PICO 4ならびに、前機種のPico Neo 3をサポートしている。
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まとめ
PICO 4の発売は、競合機と位置づけられるQuest 2の登場から2年後であるが、その間のさまざまな研究や分析の成果がハードウェアやUIの仕上がりに反映されており、かなり使い勝手が良いと感じられた。
2022年8月には円安等の影響もあり、Quest 2の日本国内の販売価格が、37,180円(128GBモデル)から59,400円へ値上げされている。一方、PICO 4の128GBモデルの価格は49,000円と、Quest 2より1万円ほど安価に入手ができる。比較的低価格であり、装着がしやすく、軽量に感じられ、高画質を達成したPICO 4は、VR入門機としては大変魅力的である。価格については、ブラックフライデー等のキャンページ時には、各機種でポイントの付与等による実質的な値引きが行われており、年末年始にかけて、価格の変動には注意してほしい。
Quest 2と比較して、現状のVRゲームコンテンツの充実度には些か引けを取るが、ローカルの環境で、実写系VR動画を視聴したり、YouTubeやPrime Video、Twitchなどの配信を視聴して楽しむには十分であり、軽量で持ち運びも楽なプライベートシアターとして十分に機能するだろう。
今後は、clusterやVRChatなどメタバースアプリへの対応なども期待したい(PSVRとして、VRChat等は利用できる)。
PICO 4 128GB 49,000円(税込)とPICO 4 256GB 59,400円(税込)は、Amazon、ヨドバシカメラ、ビックカメラ(コジマ・ソフマップ)、ヤマダデンキ(TSUKUMO・EC)、エディオン(100満ボルト)、ケーズデンキ等の正規販売店で発売中。
アクセサリーとしては、下半身の動きをモニタリングする「PICO Fitnessバンド」、携帯用の「キャリーケース」、安定したワイヤレス接続のための「PCワイヤレスドングル」などが2023年に発売される予定になっている。
PICO 4には、アイトラッキングやフェイストラッキングの機能を実装した中国国内限定のコンシューマー向け上位機種「PICO 4 Pro」が存在する。中国以外の一部の海外における法人向け機種の「PICO 4 Enterprise」については、国内では2023年1月より、株式会社アスクを通じて発売予定だ。
PICO 4 Enterpriseは、顔、目、手を正確に追跡する機能、正確なIPD自動調整機能等が搭載。同期、ストリーミング、キオスクモードにより、複数のVRデバイスを接続した状態でのライブストリーミングや自動的な視聴が可能となっている。利用者には、専用のEnterprise App Store、開発者キットなどがサポートされる模様だ。PICO 4 Enterpriseは、2023年11月1日より予約受付中で、日本での販売価格は、141,900円(税込)である。
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WRITER PROFILE
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