2025年6月11日〜13日に幕張メッセで開催されたInterop Tokyo 2025は、3日間で136,875人の来場者を記録し、例年以上に熱気ある展示会となった。放送や映像制作に関わる分野では、Internet x Media Summit(IMS)だけでなく、ShowNetや各社ブースでも実演を交えた提案が随所に見られたのが印象的だった。

今回はその中から、IMS以外のブース展示に注目し、「実際に使えるかどうか」に軸足を置いた製品をいくつか紹介したい。数字やカタログスペックでは語りきれない、“現場でどう感じたか”にフォーカスしたレポートとしてお読みいただければと思う。

NETGEAR – フルマネージスイッチ「M4350」新モデル

NETGEARのM4350シリーズに、SMPTE ST 2110対応の新モデルが4機種追加されていた。中でも「これは使い勝手が良さそうだ」と注目を集めていたのが、1Uハーフサイズ筐体の「M4350-8M2V」だ。

PoE++対応の1G/2.5Gポート×8に加え、25G SFP28×2も装備。ファンレスに近い静音設計とあいまって、中継車や仮設スタジオなどでも“そのまま”使える実用的なスペックとなっていた。

GUIの操作性もさることながら、筐体前面のポートLEDがプロファイルごとに色分けされる構造が個人的にはとても印象的だった。視認性が高く、接続状況も一目で把握できる。トラブル時の原因切り分けにかかる時間をぐっと減らしてくれそうだ。スペックに加え、こうした運用面での工夫が“気が利いてる”と感じられる製品だった。

ジャパンマテリアル – インタラクティブサイネージ「BrightSign」シリーズ 新機能

ジャパンマテリアルのブースでは、BrightSign製品にLiDARセンサーを組み合わせたインタラクティブサイネージのデモが展示されていた。人が近づいたり動いたりすると、映像が切り替わる。正直、思っていたよりも反応が自然でスムーズだった。

さらに、BrightSignシリーズ5では視線や人数をAIが検知する機能も紹介されていた。「この広告、ちゃんと見られていたか?」を数値で可視化できるようになるのは、サイネージの効果検証として非常に有用だろう。

演出だけでなく、マーケティング視点でも一歩踏み込んだ製品群。体験型の店舗や展示施設など、想定ユースがぱっと浮かぶ展示だった。

ATEN Japan – IP KVMスイッチ「KE8980MR」

ATEN Japanの「KE8980MR」は、KVM over IPの最新モデルで、4画面出力やVNCによる管理機能を備えたレシーバーだ。展示では、ベゼルをまたいで表示された4画面構成のデモが行われており、UIの直感性や応答の速さに来場者が見入っていた。

従来の低遅延性能はそのままに、最大16台のPCを4台のモニターで操作できる柔軟性が加わったことで、編集室や制御室だけでなく、教育やリモートオペレーションの場でも活用できそうだと感じた。

“必要な機能がしっかり1台にまとまっている”という印象で、複雑になりがちなKVM環境をシンプルに整えたい現場にはちょうどよい選択肢になりそうだ。

伊藤忠ケーブルシステム – JPEG XS対応KVMエクステンダー「Draco Vario XS 490シリーズ」

伊藤忠ケーブルシステムが紹介していたのは、IHSE製「Draco Vario XS 490シリーズ」。JPEG XS圧縮を採用し、1Gbpsの帯域で非圧縮に迫る映像品質を実現するというモデルだ。

ブースでは、4K/60pや240Hzといった高フレームレート映像の伝送デモが行われており、目視でもその滑らかさと遅延の少なさを体感できた。IP Gatewayを併用すれば、非IPベースの安定性を保ちつつ、IPネットワーク越しの遠隔制御も可能になるという構成もユニークだ。

系列局間のセキュアなKVM運用や拠点間連携を考えている方にとっては、技術的にも運用的にも現実的なソリューションだと感じた。