
本格的復帰基調のCine Gear 2025
2025年6月6日〜7日の2日間(カンファレンスは5日〜8日)、米ロサンゼルス郊外のノースハリウッドにある、ユニバーサルスタジオのスタジオロットにおいて、映画撮影機材専門の展示会「シネギアエキスポ(Cine Gear Expo)2025」が開催された。
昨年2024年も大盛況だったとのPRONEWSレポートを見たが、今年は巨大なユニバーサルスタジオでの開催が実現した。筆者の記憶する限り、2005年、2006年は、ウエストウッド地区に近いWadsworth Theatre and Groundsという古いシアターのある公園で開催されている。それ以降の開催会場は、メルローズ通りに面したパラマウントスタジオ内のニューヨークのオールドタウンを模した「ニューヨークバックロット」を中心の開催が基本路線だった。
今年の開催は、特に日本人の参加者、視察者も多く見かけた。日本の関連メーカーの各社も多くの人員を派遣していたことも印象的だった。
2005年から2019年まで約15年間に渡り、これまでシネギアエキスポを見てきた視点で、今回の久しぶりの視察レポートをお伝えしたい。
過去最大規模での開催。ユニバーサルスタジオは巨大であった

ユニバーサルスタジオに入ってまず驚いたのは、以前開催されていたパラマウントスタジオのおよそ5倍以上の規模を誇る広大なスタジオ施設だ。ご存知の通り、本家本元のユニバーサルスタジオであり、遊園地施設であるテーマパークも隣接しているので、その広さたるやハリウッドのメジャースタジオの中でも最大だ。
シネギア関係者の駐車場も広大で(しかも無料!)、さらに初日は駐車場からレジストレーションの入り口まで長蛇の列で、チェックインまで約1時間半を要したが、さらにそこから展示会場まではシャトルバスで移動する距離で、おそらくシネギアエキスポとしても過去最大規模の展示会だったのではないか?

さて、展示内容を見てみると、出展社数や規模感は、ほぼ2019年頃の開催規模に戻り、4日間(展示会は2日間)で約13,000人が訪れたという。会場はスタジオセット内にテントを掲げて、表面的には大小のメーカーが軒を連ねるシネギアお決まりの様相が戻り、また2つのステージ(スタジオ)内にはソニーやARRI、Blackmagic Designなどのカメラメーカーや、NANLITE、Aputure、Kino Floなどの照明機材メーカー、多くの映画関係機材メーカーが軒を連ねている懐かしい風景に戻りつつあるように見える。
出展メーカーの顔ぶれは大きく変化していた。新興のベンチャー企業や、中国系を含む新たなレンズメーカーなど、これまでに見られなかった企業の参加が目立った。一方で、"ハリウッドの顔"ともいえるパナビジョンやモールリチャードソンといった有名レンタル会社の姿は見当たらなかった。さらに、ドイツのARRIもメーカー本体ではなく米国内の販売代理店が出展する形となっており、規模縮小が顕著であった。これらの変化は、ここ数年で進行している映画産業の変貌を如実に示す展示であった。
ハリウッド自体がいま、映画業界の衰退が著しく仕事が非常に少なくなっていることは、会場のいたる所で強く感じられたのも事実で、現地で会った映画産業で生業を立てているLA在住クリエイターからもその声は多く聞かれた。
リハウジングレンズと中華シネマレンズ
今年の傾向として大きく言えるのは、やはりオールドレンズにシネマ用の外装を施したリメイクレンズのメーカーが多く現れたことだろう。
ビンテージレンズのCine Mod(古いスチル用のビンテージレンズにM0.8のギアユニット等を装着して、映画撮影用に使えるように改造したもの)や、リハウジング(古いレンズのガラス部分のエレメントだけを再利用し、外側の鏡筒部分はシネマレンズとして使用できるように新たに再設計・製造したもの)の世界では、最古参メーカーであるTLSも当然ながら、ZEROレンズなど、多くのリハウジングメーカーも出展した。

また、近年「バットマン」や「デューン」などの映画作品に使用されて世界的な評判を呼んでいるウクライナのアイアングラス(IRON GLASS)も、ソビエト製のオールドレンズから、ZEISS Jena(ツァイス イエナ)の実機モデルを展示するなど、小さなブースながら盛況だった。
その他、中国系の新興レンズメーカーなど、新たなリハウジングメーカーや周辺機器メーカーが台頭してきた状況も如実に伺い知ることができた。昨今のリハウジングレンズの流行については、やはりカメラ側の進化が大きな要因になっていると思われる。

これはソニーVENICE 2や、今年発売が予定されている富士フイルムのGFX ETERNAなどフルセンサーよりもさらに大判のセンサーを用いた、さらなる高解像度・高画素数のカメラが出てくる状況の中、レンズ側には解像度よりも、むしろオールドレンズのようなコントラストの個性を重視する傾向が世界的にあることを実感した。

実際に会場内では各社の最新シネマカメラに取り付けられているレンズも、最新レンズよりもオールドレンズやリハウジングレンズが装着されているケースが多かったのも事実だ。
AI、ロボティクスなど映画業界にも押し寄せる新潮流

また会場の様子から強く伺うことができたのは、まず広大なスタジオ施設の中で様々なロボティクスとAIコントロールによる新たな撮影機材が随所に見られたこと。
例えばロボットアームの専門メーカーのブースでは、より簡単により専門技術も必要なく、しかもメンテナンスや変更も容易というようなソリューションが増えている。これは元々製造工場のオートメーション施設の中で使用されているようなロボティクス技術を、撮影現場に応用するようなメーカーが出てきたことで実現している。

またその他のAI技術を持ったメーカーが参入するなど、異業種からの転化組が増えたのも1つの傾向だろう。また若い層の斬新な発想で新しいガジェットを作り出そうとしているなど、シネギアならでは面白みも感じることができた。
気になる製品をフォトダイジェスト
フォトダイジェストとして気になる展示メーカーの製品やブースの写真を取り上げてみたい。









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