フォトロンは2025年8月21日、米AJA Video Systems社の製品を国内で正規ディストリビューションすることを発表した。都内で行われた発表会には両社経営陣が登壇し、協業の背景と今後の戦略を語った。

CEOが語る「文化と信頼」

AJA CEO デイブ・サンプソン氏(左)、フォトロン 代表取締役社長 瀧水隆氏(右)

冒頭で登壇したAJA Video Systems CEOのデイブ・サンプソン氏は、日本市場への思いを語った。
「日本の製造業は私の人生を変えた。The good stuff comes from Japan(良いものは日本からやってくる)」と述べ、若い頃から日産のトラックやホンダのバイクなど日本製品を愛用してきた経験を紹介した。

また1990年代から2000年代にかけてGrass ValleyやDiscreet Logicを通じて日本市場に関わり、日本のエンジニアリングや働き方から強い影響を受けたと振り返った。その上で「フォトロンとイマジカグループは当時から際立った存在だった」と言及し、今回の協業を「長年の信頼に基づく自然な流れ」と位置付けた。

日本市場での展開戦略

発表では、10月1日から開始するAJA製品の国内ディストリビューション体制と今後の展開方針が説明された。フォトロンは直販を行わず、正規リセラー経由での販売を基本とする。初期段階ではアスク、システムファイブ、サウンドハウス、メディア・インテグレーションなど計9社が参画している。

放送業界を含め、教育・メディカル・スポーツといった新規市場にも展開していく方針が示され、フォトロングループの幅広い事業ネットワークを活かして拡販とサポートを強化していく。

AJA側からは、世界で20のマスターディストリビューターと数百社規模のリセラー、SI、OEMパートナーと連携してきた実績が紹介され、「Photron + AJA = ONE TEAM」を合言葉に、日本市場でも安定供給とサポート体制を確立していく姿勢が示された。

新製品群:KUMO 6464-12G、DANTE-12GAM、BRIDGE LIVE 3G-8

説明会では、NAB2025で発表された3つの新製品が改めて紹介された。

KUMO 6464-12G
64×64の12G-SDIルーター。従来機の2倍のチャンネル密度を実現しながら、奥行きわずか4cm、ファンレス設計というコンパクトさと静音性を備える。8Kまでのルーティングにも対応し、保証は標準で5年間付属する。

DANTE-12GAM
12G-SDIとDanteオーディオを相互に変換するコンバーター。1台で最大64chのオーディオに対応し、1Uラックに3台搭載すれば最大192chを処理できる。AES67やSMPTE 2110-30との互換性も確保しており、IP化の進む音声系システムに柔軟に組み込める。こちらも5年保証。

BRIDGE LIVE 3G-8
3G-SDI 8系統入出力を持つ新モデル。従来の12G対応版と異なり、フルHDを多数処理するワークフローに最適化されている。コーデックはH.265/H.264/MPEG-2/JPEG 2000/JPEG XS/NDIをサポートし、伝送プロトコルもSRT、HLS、RTP/UDP、RTMPS、MPEG-TSと幅広い。ラック1Uに収まる設計で、Web UIからのリモート制御にも対応する。保証は3年間。

日本市場とIP化の課題

今回の新製品群のうち2機種はIPベースのワークフローに直結しており、AJAがこの分野を強化していることを示した。一方で同社は「SDI需要も依然として根強い」と強調し、ハイブリッド運用を前提とした戦略を取っている。

海外では新規案件の多くがITベースで設計される一方、日本では既存のベースバンド設備を活かした改修・増設が中心となっている。そのため「IPとSDIを橋渡しする製品」の重要性が指摘され、BRIDGE LIVE 3G-8などがその解となる。

また、同社はIP教育への取り組みにも触れた。APAC地域ではリセラーやエンドユーザー向けのウェビナーやワークショップを定期開催し、SMPTEとも連携して技術者育成を進めている。日本での展開はまだ限定的だが、今後は技術教育も重要なテーマになるとした。

今後の展開

ユーザー会や定期ウェビナーといった情報共有の場を積極的に提供していく方針が示された。これらを通じて、国内ユーザーとの接点を強化し、日本市場における存在感を高めていく考えだ。