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オリンパスはカメラの小型軽量化に長けたメーカーだった。ハーフサイズのオリンパスペンシリーズやフィルム一眼レフのOMシリーズ、そしてカプセルカメラの始祖とも言えるXAシリーズはその代表モデルだ。デジタルになってもそのことに変化はなく、レンズ交換式カメラに限って言えばフルサイズの1/4の面積とする4/3インチ(17.3×13mm)のイメージセンサーを採用し、小型で軽量なボディのデジタル一眼レフを提案していた。

ちなみに4/3インチセンサーを用いたデジタル一眼レフ用の規格をフォーサーズ、同じく4/3インチセンサーを搭載するミラーレスの規格をマイクロフォーサーズと呼ぶことは述べるまでもないだろう。

「オリンパスE-410」(以下:E-410)は2007年に発売されたオリンパスのデジタル一眼レフである。フォーサーズのなかでも極めて小型軽量に仕上がっており、そういった意味では往年のオリンパスらしいカメラであった。参考までにボディサイズは129.5×91×53mm(W×H×D)。一般的な男性の手のひらにすっぽりと収まるサイズ感としている。質量についてもボディ単体375gを実現。当時のデジタル一眼レフとしては最軽量であった。しかもグリップ部はボディから大きく突き出したような形状とはしておらず控えめなもの。

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コンパクトで軽量に仕上がるE-410。グリップの張り出しは小さく、シャッターボタンもトップカバーに備わる。発売開始は2007年4月。価格はボディ単体で9万円前後であった。本来このカメラの標準ズームはZuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6であるが、今回用意できず、掲載した写真ではZuiko Digital 14-45mm F3.5-5.6を装着している

シャッターボタン自体もトップカバーの中に上手く収まり、極めてスマートなボディシェイプとしていた。私自身もこのカメラが登場したとき、やはりデジイチはこの大きさだと思うとともに、そのスタイルにオリンパスらしさと勢いを強く感じたものであった。そのようなこともあり当時お仕事を頂いていたWeb媒体から撮影の機会を頂いたときはとても嬉しかったことを記憶している。

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特徴的なシャッターボタン周り。グリップの上ではなく、トップカバー内に収まる位置にシャッターボタンは置かれる。グリップの張り出しは小さいが、右手でカメラを構えた感じは上々だ

小さなE-410であったが、スペックは当時の基準からいえばクラスとして不足ないものであった。イメージセンサーは前述のとおり4/3インチで、アスペクト比は4:3。センサータイプは当時同社の売りであったLiveMOSセンサー(CMOSセンサー)とし、有効画素数は1000万画素。最高シャッター速度は1/4000秒を実現していた。AF測距点こそ左・中央・右の3点しかなかったが、当時として、またクラスを考えれば不足ないものであった。ちなみにE-410発売1年前の2006年「オリンパスE-400」が登場しているが、こちらは欧米のみの発売で、E-410との違いはイメージセンサーが有効1000万画素のCCDとしている。

驚かされるのがカードスロットで、マイクロドライブにも対応するCFカード用と、xD-ピクチャーカード用のダブルスロットとしていた。今でこそダブルスロットは上位モデルの証のようなものだが、本モデルに採用された経緯としては、xD-ピクチャーカードを広く普及させたかった当時のメーカーの思惑からである。ちなみに同カードは、オリンパスと富士フイルムが共同で開発した規格であったが、今現在の状況からも分かるとおり結局広く普及することがなかった。CFカードにしても今になってみればだが、SDカードやminiSDカードであれば(microSDカードは当時まだ普及していなかった)、カメラ自体もっと小型化できたのではないかと思えてしまう。

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カードスロットは生意気にもデュアル。xD-ピクチャーカードを普及させたかったオリンパスの目論見によるものである。CFカードのスロットも時代を感じさせるところだ。現代なら迷わずmicroSDを採用していたことだろう

Web媒体の企画では、E-410を携え自分の生まれ故郷である南九州を巡った。用いたレンズは「Zuiko Digital ED 14-42mm F3.5-5.6」および「Zuiko Digital ED 40-150mm F4-5.6」の2本。これらも軽量コンパクトなレンズで、撮影は"それなりに"快適に楽しめた。いつでもどこへでも持ち歩け、大きさ重さが負担になるようなこともない。やはりカメラは軽くて小さいのが正義だと重ね重ね思ったものである。

だが、どうしても残念に思えてならないものがあった。それはファインダー画面の大きさであった。この時代、4/3インチセンサーやAPS-Cサイズのイメージセンサーを積むデジタル一眼レフはおしなべてファインダー画面は小さく、本モデルも例外ではなかったのである。

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ファインダーはペンタプリズムではなく、コストを抑えるためにミラーの組み合わせによるペンタミラーとしている。ペンタプリズムを採用し、倍率が高く視認性のよいファインダーであれば、そのサイズ感からベテランの写真愛好家やプロも注目したことだろう
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4/3インチセンサーに合わせた小さなクイックリターンミラー。アスペクト比も4:3であるため、掲載した写真ではパッと見、正方形のように見えてしまう。フランジバックは38.67mm

ちなみに、あらためてE-410のスペックを見るとファインダー倍率は0.92倍と記され、一見大きなファインダー画像に思えてしまう。しかし、これにはカラクリがある。実はこのファインダー倍率は、フルサイズもフォーサーズもAPS-Cサイズも焦点距離50mmのレンズを用いたときのもので算出しているからだ。したがって、フォーサーズの場合ならファインダー倍率を焦点距離倍数である2で割ったものが、APS-Cサイズの場合なら1.5ないし1.6で割ったものが、ある意味正しいファインダー倍率なのである。そう考えたとき、E-410の実ファインダー倍率はわずか0.46倍。当然ピントの状態など正確に把握するのは難しく、AFを信頼して撮影を行うしかないのである。

もっともこのカメラが本来ターゲットとするユーザーは、カメラ初心者やライトユーザーだったので、これはこれでアリだったわけで、そう強く責めるようなものではないのだが。

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デジタル一眼レフとしてはコンパクトで軽量に仕上がったE-410。エントリー機ゆえ物足りないところもあるのだが、写真撮影を手軽に楽しむにはこれほど適したデジタル一眼レフはないように思える。パンケーキレンズであるZUIKO DIGITAL 25mm F2.8との組み合わせであれば最強だ
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三脚ネジ穴が光軸上にあるのは嬉しい部分。ただし、カメラ背面側に極端に寄った位置としている。このカメラ以前からオリンパスのデジタル一眼レフのほとんどは海外で製造を行っていた

そのようなE-410だったが、モデル寿命は1年ほどと短かった。後継モデルとしてライブビュー時にコントラストAFでの測距を可能にした「E-420」が2008年に登場したのである。ボディのサイズおよびシェイプは同じ。質量がわずかに増えたに留まったのは、E-410のサイズ感がフォーサーズのデジタル一眼レフとして好ましいものだった証といえるだろう。そしてファインダー倍率も当然、変化はなかった。

E-410の発売から13年後の2020年、オリンパスは祖業であるカメラ事業をあっけなく放棄してしまう。このニュースはコニカミノルタがやはり祖業のカメラ事業を止めたときと同様、一写真愛好家として極めて残念に思えてならなかった。オリンパスのカメラ事業はファンドを通して新しい会社へ引き継がれ、その後の経緯や詳細はここでは控えるが、内部の人々に加え会社としての風土までも変わってしまったのは残念に思えてならないところである。

■機材協力

本記事の執筆にあたり、東京・品川のJR大森駅から徒歩5分に店舗を構えるクロスポイント様に機材のご協力をいただきました。

住所:〒140-0013 東京都品川区南大井6-13-8第三浜野ビル103
連絡先:TEL.03-3766-7122
営業時間:10:30-18:30
定休日:毎週日曜日と月曜日、および年末年始

大浦タケシ|プロフィール
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌をはじめとする紙媒体やWeb媒体、商業印刷物、セミナーなど多方面で活動を行う。
公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。