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概要

富士フイルムから「instax Evo」シリーズの最新モデル「instax mini Evo Cinema」が登場した。

同シリーズは、デジタルカメラと「チェキ」のプリンターが一体となったハイブリッドなインスタントカメラのラインナップであるが、新製品「instax mini Evo Cinema」は、静止画に加え、シリーズ初の動画撮影可能なモデルとなっている。フィルム時代の8ミリカメラ「フジカ シングル8」を彷彿とさせる筐体は、中高年世代にとって郷愁にかられるデザインとして仕上がっている。

1930年代から現代までの映像をイメージしたジダイヤルエフェクトで、各時代の雰囲気を反映させた撮影体験を楽しめたり、撮影した動画をQRコード付きのチェキプリントとしてシェアできる点などは、Z世代のユーザー層にも新鮮な感動をもたらすことだろう。

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8mmライクでレトロフューチャーな筐体に惹かれる

「instax Evo」シリーズは、これまでミニフォーマット対応の「instax mini Evo」、ワイドフォーマット対応で広角モードを搭載した「instax wide Evo」がリリースされており、今回の「instax mini Evo Cinema」は3機種目ということになる。

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前2機種は、まるでクラシックカメラを思わせるデザインとアナログライクな操作感が魅力的であったが、「instax mini Evo Cinema」は富士写真フイルム(当時)が1965年に発売、1980年前半まで生産・販売し、約半世紀近くに渡って愛され続けた規格「フジカ シングル8」の8mmフィルムカメラを彷彿とさせる縦型デザインとなっている。

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本体のサイズは、39.4×132.5×100.1mm。重さは本体のみで、約270gとなっている。

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撮影する際は、筐体下部のグリップを保持して縦方向に構え、背面の液晶画面を見ながらおこなう。設定項目や撮影情報等も、ここに表示される。1.54型(インチ)TFTカラー液晶(約17万ドット)の液晶モニターは大きいとは言えないものの、視認性については比較的良好と感じられた。日中、入射光の影響などで画面が見えにくい場合は、同梱のファインダーアタッチメントを装着し、接眼して覗き込みながら利用することで、遮光とルーペの効果が得られる。

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レンズは35mm換算で28mm。絞りはF2.0。撮影可能範囲は最短10cmから無限遠となっている。デジタルズーム対応で、シングルAFは顔認識AFに対応する。イメージセンサーは、1/5型(インチ)CMOS原色センサーを搭載。有効画素数は約500万画素だ。

解像度は静止画が1,920×2,560ピクセル。動画の場合は600×800ピクセルであるが、高画質動画モードに指定して、ジダイヤルを2020に選択した場合のみ、1,080×1,440ピクセルの動画撮影も可能になる。動画のフレームレートはシネマライクな24fps。1ショットは最大15秒までとストイックな仕様である。

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正面のレンズ上部には左から、録画/セルフタイマー/充電等の状態を示すランプ、自撮り時の確認用のセルフィーミラー、フラッシュ(LEDライト)が並び、FUJI FILMのロゴの下部分にはシャッターボタンがある。動画撮影の場合、「押している間だけ録画、離すと停止」にするか、あるいは、「押す度に録画と停止を切り替える方式」のいずれかを、設定により指定できる。前者の場合、撮り足しながら、最大15秒の動画を作ることもできる。

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左側面には、電源ボタン、動画/静止画モードの切り替えスイッチ、フレーム適用スイッチ、ジダイヤル、デジタルズームのレバー等が配置されている。

プリントレバーは、反時計回りに半回転させるとプリントモードが立ち上がり、もう一度、同じ方向に半回転することでチェキのプリントが実行される。プリントの画質は、色彩豊かなinstax-Richモード(デフォルト)と従来の画質のinstax-Naturalモードの2択であり、プリントの明るさも設定できる。

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レンズの周囲には度合い調整ダイヤルが配されており、ジダイヤルによるエフェクトの強弱を10段階に調整できる。効果の度合いは、背面の液晶画面内に表示される。

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右側面には、チェキのフィルムカートリッジ用(ミニフォーマット)スロットのフィルムドアがあり、まさに8mmカメラにフィルムマガジンを装填するような要領でカートリッジをはめ込む。

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背面にはメニュー、戻る、OK、再生の各ボタンと、メニュー内の項目を選択するセレクトボタン/コマンドダイヤルなどの操作系がまとめられている。

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筐体上部には、フィルム排出口があり、ここからチェキがプリントアウトされる。

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グリップ部分の前面下部には、充電用のUSB-C端子、その下にmicroSDカードスロットがあり、256GBまでのmicroSD/microSDHC/microSDXCなどのメモリーカードに対応している。内部ストレージには、写真がおよそ50枚、動画はおよそ10本程度が記録できるので、万一、メディアを忘れた際などは保険として使用できる。

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同梱のアクセサリーとして、カメラ底部に取り付ける拡張用のグリップアタッチメントがあり、装着すると次の写真のように小指までかけて握れ、しっかりと保持できるから、手持ち使用が多い場合は利用すると良い。

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ジダイヤルのエフェクトでタイムトラベルを楽しむ

「instax mini Evo Cinema」の最大の特徴として、1930年から2020年までの10年毎の各時代の映像をイメージした「ジダイヤル」エフェクトの実装が挙げられる。この「ジダイヤル」は、写真にも動画にも適用できる機能だ。「ジダイヤル」で好きな年代を選択、レンズの周囲にある度合い調整ダイヤルを回転させることで効果を10段階に調整できるから、それらを掛け合わせれば、合計100通りのエフェクト+ニュアンスをつくり出せるという訳だ。動画や写真には、年代毎に用意されたフレームも追加することができる。

1930年代
1940年代
1950年代
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
2010年代
2020年代
ジダイヤル1960で、度合い調整を1にした写真
ジダイヤル1960で、度合い調整を5にした写真
ジダイヤル1960で、度合い調整を10にした写真
ジダイヤル2020で、度合い調整を1にした写真
ジダイヤル2020で、度合い調整を5にした写真
ジダイヤル2020で、度合い調整を10にした写真

およそ100年前の時代がイメージされた1930はクラシカルなモノクロ映画の世界観で、動画の場合、画面の揺れやコマ飛びまで表現されている。

1940はカラー化されているが、古い時代を表すためにノイズや色ズレがみられる。1950では再びモノクロの映像になっているが、テレビ放送の走査線をイメージしたような映像になっており、周辺部のフレームもブラウン管を思わせる円形だ。

1960は粒子が粗いカラーの映像に。1970はビデオ映像がイメージされているようだ。1980はフィルム時代のコンパクトカメラのようなカラー画質で、画面の端に日付の印字が認められる。

1990はビデオテープの画質を。2000はデジタルビデオカメラで撮影したような映像に。2010では左上部に「LIVE」表示が配置され、YouTubeをイメージしているかのような印象だ。

現代である2020になるとノーマルな色味となり、普通に見栄え良く撮りたい場合は、こちらを選択すると良いだろう。

エフェクトについては、当時のフィルムをシミュレーションするような正確な再現を目指している訳ではなく、あくまでもその時代の雰囲気を感じさせる映像のテイストをイメージしてつくられたものと思われる。

効果の度合いについては、10段階になっており、5が標準で、1は効果が最小、10は最大となっている模様だ。

近接で撮影したみた。最短撮影距離は10cm
ズームをマイナス側の最大にして撮影
ズームをプラス側の最大にして撮影
暗所で撮影した写真

アプリについて~動画の編集と共有

「instax mini Evo Cinema」は、専用スマートフォンアプリのinstax mini Evoを利用することで、リモート撮影やライブビューが可能となる。撮影済みの静止画や動画は、Bluetooth接続もしくはWi-Fi接続でアプリへ転送することになる。

アプリが「instax mini Evo Cinema」と接続すると、カメラ内の画像や動画のデータが自動的に転送されるが、設定で転送を停止することもできる。(Wi-Fiに切り替えない限りBluetooth転送となるが、自動転送をOFF(手動転送)に設定している場合は、カメラ内のファイルを見る時点でWi-Fi接続することになり、Wi-Fi転送となる。)

転送済みの動画や静止画は、閲覧・再生・編集が可能となり、写真の編集では、拡大や明るさの調整、テキスト入力などが可能に。動画編集では、トリミングはもとより、プロジェクトとして複数の動画を組み合わせたり、オープニングやエンディングを加えたり、ポスターテンプレートを追加することができる。また、アプリの「ダイレクトプリント」機能により、スマホプリンターとして、ギャラリー内の画像をカメラ本体に送信して印刷することもできる。

「QR付プリントダウンロード設定」を許可して、動画内の好きなフレームを選び、プリント時にQRコードを含めれば、プリントを譲渡した相手はチェキのQRコード先から動画を視聴したり、サーバーからダウンロードすることが可能になる(チェキ上のQRコードの位置は、選択が可能)。

サーバーアップロードについては、アプリ経由となるが、カメラ操作でプリントした場合(アプリを経由しない場合)は、アプリに動画を取り込んだ後、プリントした動画を選択して手動でアップロードする。アプリ操作でプリントした場合は、プリントした時点で自動的にアップロードされる。

ダウンロードの期限と回数はプリントした日から2年間で、計10回までだ。形に残るインスタント写真と、デジタルの動画を同時に贈ること。この二重の体験設計は、豊かなコミュニケーションツールとなり得るので、ビジネスやプライベートを問わずアイディア次第で多様な活用の可能性が広がることだろう。

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アプリで撮影済みの素材のジダイヤル設定が確認できる
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まとめ〜instax mini Evo Cinemaがもたらす贅沢な遊び心

「instax mini Evo Cinema」は、名ばかりのレトロ指向なガジェットではない。かつて「シングル8」に夢中になった8mm世代には、指先の記憶を思い起こさせ、デジタルネイティブ世代には、必ずしも快適とは言えぬ操作性や15秒という制約の中で世界を切り取るという「不自由さの愉しみ」に気づかせてくれるデバイスとなるだろう。

実際に手に取ると、縦型グリップ特有のホールド感やプリントレバーを回す際の手応えが、撮影行為をスペックでは測れない「偶然」までも取り込んだ特別な体験へと変容させてくれることがわかる。ジダイヤルが生み出す100通りの表現は、精密な再現性より、その場の空気感を描き出すことに長けていて、その質感はZ世代が求める「エモい」フィーリングともマッチするだろう。

スマホで何でも撮れる時代だからこそ、敢えてこのレトロフューチャーな筐体を介して世界を覗いてみる。そこから生まれるQRコード付きのチェキには、デジタルとアナログを繋ぐ贅沢な遊び心が潜んでいるようだ。

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WRITER PROFILE

染瀬直人

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。