株式会社アスクは、パートナー企業である株式会社ブレーンズ・システムのブース内において、放送・映像制作の現場を支える最新の映像制作・配信ソリューションを幅広く紹介した。本展示は、映像伝送からデータストレージ、そして最終的なデータ保護にいたるまで、制作ワークフロー全体を網羅する新製品群で構成されており、来場者の高い関心を集めていた。

ブースの前面で紹介されていたのは、国内初公開となる製品も含まれたKiloviewの製品群である。その中心に据えられていたのが、NAB 2025で発表されたモジュール型コンバーター「CradleシリーズRF02」だ。本製品は、あらゆるメディアワークフローをコンパクトな2RUのユニットに集約するもので、最大18個のモジュールカードを装着できる。これにより、同社のNDIエンコーダー/デコーダー「N60」や「N50」などを自由に組み合わせ、一元的な管理・運用を可能にするシャーシ製品となっている。

中央がフラッグシップラックマウントメディアプラットフォーム、Cradleシリーズの「RF02」

さらに、次世代5Gワイヤレスボンディングエンコーダー「P3」も展示された。この製品は、日本の技術基準適合証明(技適)を取得したことが大きな注目点である。モジュール設計を採用し、5G/4Gの通信SIMを最大4枚装着することで、単体での安定したライブストリーミングを実現する。

特に、このP3と前述のCradleシリーズを組み合わせ、P3を送信機、Cradleシリーズをオンプレミスサーバーとして運用すれば、極めて安定性の高い映像伝送システムを構築することが可能だ。このソリューションは、有線ネットワークの確保が難しい屋外イベントやマラソン中継などでの活用が見込まれ、オプションの専用バックパックを使用すれば移動しながらの中継にも対応する。

5Gワイヤレスボンディングエンコーダ「P3」
ユーザーは実際のシナリオや地域のネットワーク環境に合わせて、異なるモジュールを自由に組み合わせることが可能
コンパクトで持ち運びに便利なバックパック設計を実現している

データストレージの分野では、OWCのソリューションが紹介された。第2世代モデルとなる「OWC Express 4M2」は、M.2 NVMe SSDを4基搭載可能なストレージケースである。USB4接続に対応しており、4枚のSSDでRAIDを構成することで、高速なデータ転送とデータの冗長性を両立させる。また、筐体自体がヒートシンクとして機能するアルミニウム製のデザインも特徴であり、高負荷なデータ転送時においても安定した性能を維持する設計だ。

NVMe M.2 SSD用4スロットUSB4(40Gb/s)外付けストレージエンクロージャー「OWC Express 4M2」
USB4、Thunderbolt、USB-CのMacおよびPCで使用可能

データの最終的な保管と保護というテーマに対しては、Synologyのバックアップ専用アプライアンス「DP340」が提案された。本製品は外見こそ一般的なNASと類似するが、その機能はデータ保護に特化している。PCからデータをバックアップする際に暗号化を施し、さらにデータを「イミュータブル(不変)」な状態で保存する仕組みを持つのが最大の特徴だ。これにより、ランサムウェアなどのサイバー攻撃によるデータの改ざんリスクを大幅に低減させ、従来のNASによるバックアップと比較して、格段に高いレベルのデータセキュリティを実現するソリューションとなっている。

複雑なデータ保護を簡素化するActiveProtectアプライアンス「DP340」

アスクのブースは、これらの製品を個別に紹介するだけでなく、高速なOWC製品でのデータ取り込み、NASでの編集、そしてSynologyの専用アプライアンスによるデータ保護という、撮影から保管にいたる一連のワークフローを想定した総合的なストレージソリューションとして展示していた点が特筆される。