Inter BEE 2025において、株式会社イノベーターワンが最新のバーチャルプロダクション技術と、3次元撮影デバイス「zLense」を駆使したソリューションを展示した。ブースでは、LEDパネルに投影された富士山や街並みの映像を背景に、実物のバイクとモデルを配置した実演デモンストレーションが行われ、スタジオ撮影における新たな可能性が示された。
このシステムにおける最大の特徴は、LEDパネルが設置されている物理的な範囲を超えて、カメラワークを自由に展開できる点にある。カメラをLEDパネルがない方向に振った場合でも、システム内で空間がモデリングされているため、背景映像が途切れることなく360°全方位に拡張される。これにより、限られたスタジオスペースであっても、広大なロケーションの中にいるかのような映像表現が可能となる。演者は自身がどのような空間に存在しているかをモニターで確認しながら演技ができるため、没入感が高まるほか、ロケ地への移動コスト削減や、天候に左右されない安定した撮影スケジュール確保といったメリットも享受できる。同社は、映像を表示・処理するサーバー機器からコンテンツ制作にいたるまで、すべてを自社開発で手掛けている。
また、技術の中核を担う要素として、新たな撮影手法を実現するデバイス「zLense」が紹介された。このデバイスは、撮影するシーンを平面ではなく3次元情報として捉えることが可能であり、これによって「zRec」と呼ばれる新しいビデオフォーマットが生成される。このフォーマットでは、撮影された人物などの被写体が「3Dオブジェクト」として扱われる点が画期的である。例えば、バーチャルシーン内に光源を設定した場合、他のCGオブジェクトと同様に、実写の人物に対してもその光の影響が極めて自然に反映される。
この「zRec」フォーマットは、リアルタイム環境での運用に加え、ポストプロダクション(編集工程)においてもその真価を発揮する。ポストプロダクションの段階で使用する場合、リアルタイムレンダリング特有の処理負荷や制約から解放されるため、より複雑で高精細なシーンへの統合が可能となり、ダイナミックな映像表現が実現する。従来の映像制作において手間と時間を要していた合成作業(コンポジット)のプロセスが、この技術によって劇的に高速化かつ簡易化され、映像制作全体の効率向上が期待されている。
