Inter BEE 2025の株式会社アスクのブースにて、中国Kiloview社の最新ソリューションを取材した。注目を集めていたのは、同年9月のIBCで発表されたばかりの2つの新製品を中心とした展示である。

まず目を引いたのは、多機能ラックマウントシャーシ「RF02」だ。一見すると複数のカードを収納するだけのユニットに見えるが、このシャーシ自体にLinuxコンピューターが内蔵されている点が大きな特徴である。これにより、単なる電源供給や収納にとどまらず、Kiloview製コンバーターの一元管理や、同一LAN内に存在する他社製機材の制御までもが、このシャーシ側で司ることが可能となっている。シャーシには最大16枚のモジュールカードを搭載できる。これらのカードはWindowsやLinuxベースで動作し、ユーザーの用途に応じて柔軟な機能拡張が行える。展示機には、HDMI入出力に対応しエンコードとデコードの双方向処理が可能な「FN-60」や、SDI入出力対応のエンコーダー・レコーダーカード「FN-50」などが実装されており、高密度なシステム構築が可能であることが示されていた。

もう一つの主役として展示されていたのが、ボンディングエンコーダー「P3」である。これはイーサネット、Wi-Fi、そしてセルラー(携帯電話)回線を束ねて(ボンディングして)、映像と音声を安定的にストリーミング伝送するデバイスだ。筐体内部には4つのモデムスロットが設けられており、ユーザーはドコモやソフトバンクといった任意の通信キャリアのSIMカードを4枚まで装着できる。会場では実際に複数の回線を併用したボンディング伝送の実演が行われ、モバイル環境下での堅牢な映像送信能力がアピールされていた。

特筆すべきは、同社のソフトウェア戦略とこれらハードウェアの連携によるエコシステムの柔軟性である。通常、この種のボンディングエンコーダーを使用する場合、受信側には専用のサーバーや高額なクラウドサービスが必要となるケースが多いが、Kiloviewではサーバーソフトウェアを無償で提供している。ユーザーは自前で用意したハードウェアや、AWSなどのクラウド環境上に自由に受信サーバーを構築できるため、運用コストを大幅に抑えることが可能だ。さらに、前述のラックマウントシャーシ「RF02」に内蔵されたコンピューターを、このボンディングサーバーとして機能させる運用も提案されていた。

この構成であれば、1台のRF02で最大8台分のP3からの映像を受信し、オンプレミス環境での配信管理が完結する。加えて、配信用の拡張カードを併用することで、1枚のカードからHD画質で最大25カ所への同時再配信も実現するなど、拡張性とコストパフォーマンスを両立させた次世代のIP伝送ワークフローが提示されていた。