一般向けとしては世界初公開の65mmシステムと進化を続けるソニーブース

Cine Gear Expo Los Angelesのソニーブースでは、開発中の65mmフォーマット対応イメージセンサーブロック「RIALTO 65」をはじめ、VENICE 2 Version 5や最新の3D撮影システムなど、多彩な展示が行われていた。

なかでも注目を集めていたのが、一般向けとしては世界初公開となる65mmフォーマットカメラシステム対応イメージセンサーブロック「RIALTO 65」である。開発発表段階の機材でありながら、ガラスケースに収められることなく展示されており、来場者は細部まで間近に観察できる状態となっていた。

既存資産の継承を前提に開発された65mmシステム

開発の背景には、映画や大型映像作品を中心に高まり続けるラージフォーマット需要がある。ソニーは65mmフォーマット対応システムを新たにゼロから構築するのではなく、既存のVENICE 2資産を最大限活用する方向で開発を進めている。

プロジェクト当初から掲げられていた目標は、既存のVENICE 2本体で65mmフォーマットを運用できるようにすることだった。その実現を支えるのが、イメージセンサーブロックとカメラ本体の間に配置された「カメラアダプターブロック」である。65mmセンサーと本体との橋渡しを担い、既存ボディでの運用を可能にしている。

電源設計も既存システムとの互換性を重視している。外部ポートからの給電も活用しながら、VENICE 2用バッテリーを継続して使用できる構成を採用している。レンタルハウスや撮影現場で広く運用されているアクセサリーや周辺機器も活用できる点は大きな特徴だ。

会場には、新開発された65mmセンサーのウェハーも展示されていた。隣接するフルフレームセンサーと比較すると、そのサイズ差は一目瞭然である。実際にマウント側からのぞき込むと、LPLマウントの口径いっぱいまでセンサーが広がっていることが確認できた。

エクステンションシステムのプロトタイプ展示では、Gecko-Camとの協業によるLPLマウントアダプターを介し、3:2センサーをフルカバーする「AYANA 65」レンズが装着されていた。

さらに会場で目を引いたのが、パナビジョンが6月3日に発表したばかりの「Primo 65」シリーズが、早くもRIALTO 65と組み合わされて展示されていた点だ。Primo 65はパナビジョン独自のSP70マウントを採用しているが、RIALTO 65においても既にSP70マウントへの対応が進められている。RIALTO 65と「Primo 65」シリーズの併用により、65mmフォーマット向けレンズの選択肢拡大も期待される。

ヘッド部の小型化も大きな特徴である。正面から捉えると、従来のVENICE 2エクステンションシステムよりもさらに薄く設計されていることが分かる。LPLマウント径の限界までセンサーを配置することで、筐体の無駄を極力削ぎ落としている。

冷却機構の設計も巧妙だ。内部に超小型ファンを備え、サイドのスリットから吸気して天面から排気する構造を採用している。一体型リグとして組み込まれた状態でも空気の流れが妨げられないよう配慮されており、小型化と冷却性能の両立を意識した設計となっている。

ブースでは「Dragonfly Mode」と呼ばれる運用スタイルも展示されていた。ベースプレート上に本体とエクステンションヘッドを同時に搭載する方式で、必要に応じて即座にハンドヘルド運用へ移行できる。柔軟なケーブル設計も相まって、現場での機動力向上を意識した構成となっている。

NDフィルターは従来の上部挿入式ではなく、横方向から挿入するドロップイン方式を採用している。電子接点を備えており、装着されたフィルター情報が自動的にメタデータへ記録される仕組みだ。撮影時の運用効率向上を意識した設計となっている。

対応レンズのエコシステムも拡大を続けている。AYANA 65に加え、アナモフィックレンズのKAIZEN 65も対応予定だ。さらにZEISSやCookeなど各社の65mm対応レンズ群も展示されており、表現の選択肢は着実に広がっている。

記録コーデックについては、VENICEシリーズで培われたX-OCN XT、LT、STを継承する。

商品化の目標時期は2027年前半とされている。現時点では価格や生産台数は未定だが、新たなカメラシステムを一から購入するのではなく、既存のVENICE 2資産を活用できるというコンセプトは現実的なアプローチといえる。既存資産の継続利用を重視した開発思想がうかがえる。

VENICE 2 V5でハリウッドの知見を凝縮した次世代のルックを実現

ブース内ではVENICE 2 ファームウェアアップデート V5の新機能も紹介されていた。特に注目を集めていたのが、新たに搭載される「Signature LUT」である。ハリウッドのポストプロダクション「The Picture Shop」のカラーリスト、ミッチ・ポールソン氏との共同開発によるものだ。

従来のS709と比較すると、ハイライトのロールオフがより自然になり、シャドウの階調も豊かになっている。VENICE 2が持つ広いダイナミックレンジを最大限に活用し、肌の質感をより自然に表現できるルックへと進化している。

Version 5ではこのほか、CNA-2対応、水平器表示機能、インカメラVFXモードのユーザーインターフェース改善など、多数の機能追加が行われる。2022年の発売以来、ほぼ年1回のペースでメジャーアップデートを続けてきた VENICE 2の成熟度の高さがうかがえる。

「アバター」の技術を継承する最先端3D撮影システム

さらにブースでは、3D映像制作向けの最新システムも展示されていた。ライトストーム社のステレオリグを使用し、映画「アバター」でも採用された本格的な構成である。ハーフミラーを介して2台のVENICEエクステンションシステムを直交配置する方式を採用している。

この構成の利点は、瞳孔間距離やカメラ角度を自由に調整できる点にある。被写体との距離が極端に近い撮影においても柔軟に対応できる。

装着されたZEISS Ultra Primeには3Dプリンター製の専用シェルが装着されていた。モーターギアの位置を後方へ移動させることで、マットボックスをより深く挿入できるよう工夫されている。実運用を見据えたカスタマイズが施されていた。

また、リアルタイムで3D映像を確認できる環境も整備されていた。従来は熟練技術者の経験に頼る部分が大きかった視差調整を、多くのスタッフが直感的に共有できるようになっている。メカニカルな視差調整機構も備えられ、映像表現の自由度をさらに高めている。

シネマカメラを放送・配信へ最適化する実践的ソリューション

その一方で、ソニーブースには現在の映像制作を支える実践的なソリューションも数多く展示されている。ブロードキャスト仕様に最適化された「VENICE 2」は、その象徴的な存在といえる。本体背面にはMultiDyne SilverBackシリーズのアダプターが装着され、光ケーブル1本で運用を完結させる構成だ。

富士フイルム製の放送用レンズとの組み合わせにより、リモートコントロールパネル(RCP)やリモートコントローラーを介したズーム、フォーカス、さらにはアイリスの遠隔操作までが可能となっている。これにより、シネマカメラでありながら従来のシステムカメラと同等の運用性を実現している。

もう一方では、ロボットアームの先端にVENICEエクステンションシステムMiniが取り付けられ、本体を離れた場所に設置しながらヘッド部分のみを自在に動かすデモも行われていた。高い機動性を活かした運用は、現代の映像制作現場で広がる運用スタイルの一例といえる。

Cinema Lineのコーナーでは、FX6による縦位置撮影のデモも実施されていた。ショート動画需要の高まりを意識した展示である。

RIALTO 65、VENICE 2 ファームウェアアップデート V5、そして次世代3D撮影環境。今回のCine Gear Expo Los Angelesでソニーが示したのは、単なる新製品ではなく、既存資産を活かしながら映像表現の可能性を拡張していく明確なロードマップだった。RIALTO 65の商品化は2027年前半を目標としており、今後の開発動向に注目が集まりそうだ。