DJI RS 4 Miniはラグジュアリーコンパクトカー

DJI RS 4 Miniが登場した。

RS 3 Miniのレビューをちょうど2年前に書かせていただいた。読み返してみたが、自分にとってはどういったシーンが一番良いのか?どういったニーズに受け入れられるのか中途半端な印象を受けた歯切れの悪い記事になってしまっていた。

そしてRS 4 Miniの登場である。最初、写真を見ただけの印象はボディカラーの変更の所為か、もっとライトウェイト系カメラのためのジンバルを連想させたが、積載重量は2kgとα7+24-70mm GM2でも対応とのことである。

2kgの負荷容量に対応し、ソニーα7シリーズのカメラとFE 24-70mm F2.8 GM IIに加えて、DJI Mic 2(ホットシューなし)または DJI Mic Miniをサポートできる

ちょっと使ってみた印象ではRS 3 Miniとは明らかに違う推しポイントがあるジンバルに成長していた。

ちなみにRS 3 Miniの時の記事が以下である。

RS 4 Miniは、例えるならラグジュアリーコンパクトカー。

コンパクトでありながら高級車の設備と乗り心地を備えているという、至れり尽くせり感が細部にまで行き渡っている。

まず最初の印象はカラーの変更だろう。写真で見ると白に見えるが、ちょっと落ち着いたホワイトグレーとマットシルバーの組み合わせでライトユースはもちろん、私みたいなオヤジが持っても恥ずかしくない落ち着きがある。何より黒よりも心理的に軽く感じるというのは大きい!

ジンバルの重量は890g。軸アーム材料はRS 4と同じ、アルミニウム合金にテフロン加工

RS 3 Miniに比べ機能が充実した分890gと40gほど重くはなっているが、色の印象で軽く感じる(RS 4 Proの1.6kgと比べると700g以上軽くなっているので1ハンドルで十分な軽さだ)。

そのシルバーのアームはRS 3 Mini同様アルミ製だが、新しくテフロン加工されたことで、アームのバランス調整もスムーズになった。しかも、前後のバランスの調整ダイヤルが付いた。上位機種ではRS 2の頃から当たり前になっている機能だけに「やっと」という印象はあるが、特に非力なMiniにとっては有効な機能だ。

カメラの前後バランスは調整ダイヤルが付き、アームもテフロン加工されたことで上位機種と同等のバランス調整を実現

タッチパネルから見て、左側スライドスイッチはジョイスティックモード切り替えボタン。拡張ポートはNATO Port×1とUSB-C Port×1
パラメータ設定画面は1.4インチカラー液晶タッチスクリーン。RS 4 ProやRS 4の1.8インチカラーOLEDタッチスクリーンより若干小さい
タッチ画面の右側面にジンバルモードスイッチを搭載。上から順に「PTF(パン・チルト・フォロー)」「PF(パン・フォロー)」「FPV(パン・チルト・ロール・フォロー)」を切り替え可能

第2世代自動軸ロック

おっと、まず最初に言わなければいけないことがあった!「オート軸ロック」の採用である!ここ太文字にしたいくらいだ。

「オート軸ロック」始めました!

RS 4 ProやRS 4にはすでに備わっているとはいえ、ワンマンオペレートになるであろう、こういった小型機にこそあって欲しい機能なのだ。このチルト、パン、ロールの3軸が一気にホームポジションになってカチャカチャっと閉まるアクションは感動ものである。ちなみに収納スタイルで止まるか、調整スタイルで止まるかは、電源OFF時、スリープ時で、それぞれ設定で選べる。

こちらは撮影状態からのOFFで収納時のスタイルに、そこからONで通常バランスに。カメラが正面を向いたままの固定も選択できる

そして、通常撮影、縦撮影のスイッチの方法もガラッと変わった。

RS 3 Miniの時にはパーツを一つ外すことで縦撮影の位置に変更したが、パーツを抜くことで重量も変わる。再度、バランス調整するのに時間を費やした。

こちらは実際に付け替える動作を動画で見てもらった方が良いだろう、カメラが付いたままの状態でも簡単だ

RS 4 Miniは第3世代の縦撮影スイッチシステムと銘打っているだけあって、非常に考えられたシステムになっている。この取り外しつまみだけが特殊なネジになっていて、ひねって緩めた後にそのつまみをプッシュすることで、固定してある爪が閉じて外すことができる。取り付ける時も同様だ。横撮影時には底面になる部分にある穴に爪をはめ込み締めるというシンプルな動作だ。

これは実際に店頭などで手にする機会があったら試してほしい。素晴らしいアイデアだ。

AIインテリジェントトラッキングモジュールがカメラ動作を補助

さて、皆さんが気になっているであろう、チルト軸に付いたこの第2の目である。

思いのほか強力な磁石で引っ付き、前後の爪でロックされる小型カメラはRSスマートトラッキングモジュールと呼ばれRS 4 Miniで初めて採用された。

横には小さくIntelligent Trackingと書いてある通りAIによる追尾を可能にさせている。

トリガーボタンやMボタンでもトラッキングスタートできるが、自撮りの時に便利なジェスチャーでもトラックできる。今回はVサインを選んだが、パーでも、OKサインでも対応可能

今までもRaven Eyeというカメラの映像をトランスミッターで飛ばしその映像をアプリで処理することでトラッキングの機能を使用していた。ただ、カメラのHDMI、USBを占有し、Raven EyeとジンバルをUSBで繋ぐといった3本のケーブルが必要なことなどから、自分も早い時期から使わなくなってしまっていた。

それが、トラッキングカメラがスタンドアローンになることでケーブルレスになり、メインカメラの機能を損なうことなくトラッキングの利点が享受できるのは何ものにも代えがたい。しかも操作方法もかなりシンプルだ。レンズが付いていると映像が出ることを想定してしまうのは撮影者の性だが、あくまでもトラッキングのためのカメラで映像を出力するものではない。

まず、操作タッチパネルのメインメニューから右にスライドすることでアクティブトラックの設定のメニューになる。設定を日本語にした場合、一番上に「構図」という項目がある。そこをタッチすると「現在のフレームを保持」と「追跡中の被写体を中央に配置」の二項目から選べる。

センタートラックはわかりやすいが、この「現在のフレームを保持」が非常に使いやすい。いわゆる人物の顔をセンターに撮影する日の丸構図なんて、使う機会は少ない。それよりも構図を決めて、人物との関係性を維持してもらえる方が助かる。それが「現在のフレームを保持」である。

その下がアクティブトラック速度の設定で「低速」「中速」「高速」の3段階に調整できる。

3番目がリングライトのON/OFFである。被写体が眼鏡をかけていたり、反射するアクセサリーを身に着けていたりする場合は消しておいた方が良い場合も多いだろう。

そして最後に「ジェスチャーの設定」という項目がある。こちらを選択すると「トラッキングの開始/停止」と「撮影の開始/停止」という二つの項目になる。それぞれパー、OK、Vサインの3つのハンドマークの中から選ぶ仕組みだ。トラッキングはOKサイン、撮影開始はVサインといった具合に選択ができる。

ワンマンオペレートの自撮りの場合はジェスチャーによって操作できるのは助かるが、被写体がうっかりVサインなど出してAIが混乱してしまわないようにか、2-3秒のキープ時間が必要でしっかり正対していないと反応しないといった対策も施されている。人物の顔認識はもちろんだが、テストした感じだと後ろ姿でも認識するようでバックフォローにも対応できそうだ。ただ、物には反応しないので物撮りの回り込みなどには使えそうにない。

顔正面で認識していたとしても、横を向いたり後ろを向いたりしても追い続けてくれる。遮蔽物があったとしても、それでリセットにはならず、クリアになったところから、またフォローしてくれるのは柔軟性を感じる。これなら、走っている人を正面からフォローするシーンのような難易度の高いショットでも、画面を確認しなくてもフォローしてくれているので安全に配慮しながらの撮影が可能だ。

これらの操作が全て本体のみで操作できる。スマホを介さなくても良いのは、スマホをカメラに使っている場合を想定してのことだろう。

軽さ、小ささ、最新技術の融合

ともかく小さいながらも最新技術が詰まったRS 4 Mini。最新技術と言っても堅苦しくなく、使用者に寄り添ったスタイルを貫いている。上位機種の良いところすべて譲り受けた軽量ジンバルの決定版ともいえる機種の登場である。

WRITER PROFILE

小林基己

小林基己

CM、MV、映画、ドラマと多岐に活躍する撮影監督。最新撮影技術の造詣が深く、建築と撮影の会社Chapter9のCTOとしても活動。