VOL.01 GFX 100 II説明写真

中判カメラとシネマ撮影に必要な動画撮影機能を一体化した「GFX 100 II」登場

富士フイルムは、GFXシリーズ6代目となるミラーレスデジタルカメラ「GFX100 II」を発売した。放送局やシネマ業界向けレンズを手掛ける富士フイルムが「もしシネマカメラを作ったらどんなものができるのだろうか?」なんて考えたことがあったが、まさにその夢を実現してきた感じだ。

GFX100 IIは、35mmフルフレームセンサーの1.7倍サイズを誇るイメージセンサー「GFX 102MP CMOS II HS」や画像処理エンジン「X-Processor 5」の採用による高速連続撮影やオートフォーカスの進化が話題だが、PRONEWSとしてはやはり4K/60P、8K30P、FHD/120P、4:2:2 10bitの内部記録やラージフォーマットレンズ、Frame.ioなどシネマ撮影現場に対応できる動画機能搭載に注目したい。

※映像業界では44×33センサーを「ラージフォーマット」と呼ぶが、本特集では写真撮影でお馴染みの「中判」と呼んで紹介することをご了承いただきたい。

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中判カメラの基本的な魅力の話になるが、イメージセンサーは大型化によりノイズの減少や被写界深度の浅さの面で優位になる。もちろん動画撮影でもその効果は同じで、中判独特の特別なルックや描写をそのまま動画撮影として記録可能だ。例えば、REDのシネマカメラV-RAPTOR 8K VVは、41mm×22mmセンサーとラージフォーマットレンズとの組み合わせで35mmフルフレームとは違った映像表現を可能としている。しかしボディの価格は約450万円、レンタルは1日8万円(小輝日文の場合)のコストを考えると、予算の潤沢なプロジェクトでない限り手の届きにくい存在だった。

そこに個人所有が可能なGFX100 IIの発売で、より多くの人が中判動画を活用できる環境が広がりつつある。今後「2/3インチ」「スーパー35」「フルフレーム」のグループ分けに「中判」が追加され、中判動画は少しずつ業務用途でも使用が増えていくのではないかと予想している。

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GFX 100 IIは新開発の43.8mm×32.9mm CMOSセンサーを搭載。センサーの読み出し速度を現行の最大2倍に向上させている
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REDのV-RAPTOR 8K VVは40.96mm×21.60mmのCMOSセンサーを搭載

ラージフォーマットやアナモフィックに対応した撮影機能を搭載

GFX100 IIの動画機能は、FHD/120P、4K/60P、8K/30Pに対応する。その中でも特徴はGFXシリーズ初の8K/30P撮影対応だ。8K対応自体に新鮮さはないが、GFXの光学系を使った映像の世界には興味津々だ。8Kはセンサー全幅を使った撮影には対応しないが、スーパー35mmよりも大きなクロップサイズ(1.42倍)で撮影可能だ。

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記録方式では、X-H2シリーズで対応したProRes 422 HQ、422、422 LTの内部記録にGFXシリーズでは初めて対応する。CFexpressのみの対応となるが、ポスプロ的には嬉しい対応だ。富士フイルムのカメラとしては初めてUSB-C経由での外付けSSDにも対応し、ProResの外部記録も可能。撮影したSSDをコンピューターに繋げて、データを転送することでワークフローの簡略化が可能だ。H.264やH.265にも対応する。

HDMI経由では、最大8K/30P 12bitの動画RAWデータ出力に対応する。ATOMOS社製モニター「NINJA V+」ではApple ProRes RAW、Blackmagic Design社製モニター「Video Assist 12G HDR」ではBlackmagic RAWの記録に対応する。これらの記録はもちろん44mmセンサー幅を使って記録可能だ。

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新開発センサーは、従来よりも30%以上もの多くの光量を捉えることが可能で、S/N比と低感度設定時でのダイナミックレンジを改善している。F-Log2のISO 800で撮影した際に、最大14+のダイナミックレンジを発揮可能としている。

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GFX100 IIを手にとったときに「試してみたい」と思わせるのは、各種イメージサークルをカバーする4つの動画モードの搭載だ。GXF100 IIのセンサー幅をフルに使用する「GFモード」、富士フイルムのPremistaシリーズに対応する「Premistaモード」、アナモフィックの35mmフルフレームに相当する「アナモフィック(35mm)モード」、通常のフルフレームに対応する「35mmモード」など様々なサイズのレンズに対応する。アナモフィックレンズやビンテージレンズなど、自分の好きなレンズを選ぶことができるのはメリットだ。アナモフィックモードは「2×」「1.8×」「1.5×」「1.33×」「1.3×」のデスクイーズ処理が選べる。

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Premistaモードは、Premistaシリーズのレンズに最適なフォーマットで撮影が可能。この場合は、サードパーティー製GFXレンズ→PLマウントアダプターを用意する必要がある。写真は焦点工房の「SHOTEN PL-FG」(PLマウントレンズ→富士フイルムGFX Gマウント変換)マウントアダプター
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アナモフィック(35mm)モードは、アナモフィックレンズに最適なフォーマットで撮影が可能。レンズの倍率や、撮影時にデスクイーズ表示の設定可能
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GFモードは、GFシリーズのレンズに最適なフォーマットで撮影が可能

カメラで撮った映像をクラウドに直接転送できる「Frame.io」ダイレクトアップロードに対応

GFX100 IIのフォルムは、GFXやXシリーズらしい平面基調のデザインをベースにエルゴノミック要素の融合で、最上位機の機能美を実現している。グリップ上部をラウンドさせることで、ホールドした際に自然と指がレリーズボタンにかかるようにアクセス性を向上している。アクセスしやすい位置にカスタム可能な三連ファンクションボタンを配置し、割り当てた機能を素早く呼び出すことを可能としている。

撮影をサポートする「サブ液晶モニター」は大型化されており、GUIも一新している。静止画・動画問わず、一目で撮影条件を確認可能にしている。天面部分は、手前に11°傾いており、EVFを覗きながら最小限の視線移動で、サブ液晶を確認することができるようになっている。

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外付けファンにも対応しており、長時間の動画撮影でも安心できる機能を実現している。メディアはSDとCFexpressのデュアルスロットを搭載する。

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ハイバジェットの映像制作ではクラウドの使用が当たり前になりつつあるが、GFX100 IIではクラウド編集サービス「Frame.io」へのダイレクトアップロードに対応する。Ethernet端子を標準で装備しており、無線と有線のどちらか選んで、データのアップロードが可能。フルサイズのHDMI端子(Type A)や3.5mmのマイク・ヘッドホン端子にも対応する。

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本特集Vol.02以降では、撮影監督やカメラマンによるGFX100 IIの実機検証を紹介していく予定だ。