デジタルシネマカメラとして新たな扉を開く「GFX100 II」
富士フイルムから発売になった「GFX100 II」。デジタルシネマカメラとして、今大きな注目を集めている。なんといっても、フルサイズを超える中判サイズ(約44mmx33mm)の102MP高画質センサーが捉える美しい画質が大きな特徴だ。フルサイズ機では表現ができないような映像の立体感や質感は、「デジタルシネマ」として間違いなく新しい世界を切り拓くことになるはずだ。
様々なクロップファクターを持ち、PLマウントやアナモフィックレンズにも対応。オートフォーカスの精度やセンサーの読み出し速度も技術的に大きく躍進した。これからこのカメラが、次々とプロダクションの現場で使われるようになるのは、まさに時間の問題といっていいだろう。
ミラーレスで世界初搭載「Frame.io接続対応」
そんなGFX100 IIに、実はさらなる可能性を与えてくれる機能がカメラ内に搭載されている。それが「Frame.io(フレームアイオー)」に接続することができるというもの。ボディにはLANポートも実装されているので、有線でも無線でも繋ぐことができる。
今回、ミラーレスのカメラとして世界初の搭載となったのだが、このFrame.ioに接続できるという機能が、撮影・編集のワークフローを一気に変えてしまうことになるのだ。いよいよ始まるクラウド連携のワークフローがGFX100 IIでスタートすることになる。
Frame.ioはAdobeが提供する動画や静止画などのメディアに最適化されたクラウドサービス。まだあまり知られていないかもしれないが、実は通常のCreative CloudのコンプリートプランでAdobeと契約している人であれば、Creative Cloudの容量とは別に100GBのスペースを別に持つことができる。そしてこのFrame.ioは大きく分けて3つの特徴がある。
- 様々なファイルの管理、共有ができる
- 動画の共有レビューがチームで効率的に行える
- Camera to Cloud(C2C)でカメラが直接撮影データをアップロードできる
実際に使える資格があるにも関わらず、この100GBのFrame.ioを活用していない人がまだまだ多いというのが現状だ。これは非常にもったいない。いろいろなクラウドサービスがある中で、Frame.ioが作る未来のワークフローについて実例を交えて紹介したい。
Camera to Cloud(C2C)が作る新しいワークフロー
今回、GFX100 IIを使って実際にFrame.ioと直接つなげるCamera to Cloud(C2C)の機能を使ってプロジェクトを行った。少しスケールの大きい話になるかもしれないが、撮影の現場はスウェーデン・ストックホルム。約1時間にわたる番組を4日間、最大4台のGFX100 IIを使って撮影をした。1000行を超える英語の台本を次々とマルチカメラで撮影していくスタイルで、出演者もかなりの数に上った。
試みたのは、GFX100 IIの撮影で4KとProxy(HD/mp4)の2種をカメラ内で同時に記録し、ProxyのみをFrame.ioにupしていくというものだ。GFX100 IIは撮影しながらでも、どんどんとバックグラウンドで撮影データをFrame.ioに上げられる。設定次第では、電源を切っても、4Kであれ、Proxyであれ上げ続けることができる。一切、アップロードのために撮影をストップする必要がないというのが素晴らしいところだ。クラウドとの接続もややこしい設定はなく、一瞬で繋がる。そして一度繋がれば、ネットワークが切れない限りずっと繋がっている。
ストックホルム→東京がリアルタイムで動き出す
今回は4台のカメラを全てFrame.ioに接続し、約12.5MbpsのHDサイズProxyを次々とUPしていった。そして撮影の様子を東京にいる編集チームとZoomで共有し、東京のチームはFrame.ioにUPされたProxyを即座にダウンロードし、その場でどんどんと編集を進めていった。東京のチーム編成は、進行を管理する人、ファイルを管理する人、編集をする人、英語訳を入れる人の4人だ。
リアルタイムで進行する撮影と編集。カメラのメディアを抜くことなく、次々と撮影データがタイムラインに並んでいく。マルチカメラで撮影をしたことのある人であれば、いわゆる「段積み(複数のカメラや音声を並べる作業)」がどれだけ面倒か、その作業がいかにややこしいかわかっていただけるだろう。しかしリアルタイムで編集が進められるとなれば、どのカットがOKカットで、どれがNGで、使う部分はどこなのかというのがその場で把握できるので、全ての編集が超効率的に行われていく。
東京では、Adobe Premiere Proのチームプロジェクトでファイルを展開。データは社内のサーバーにダウンロードされ、OKテイクだけがプロジェクトに取り込まれ、それを編集し、そして英語訳が進む。ファイルの受け渡しは一切ない。全てがリアルタイムだ。
ストックホルムの現場でも、次々と編集が進んでいく様子がZoomで見えるため、かなり驚きの声が上がった。次のシーンの撮影の前に、今のシーンの荒編が完成している。尺も出る。英語もテキスト化されている。足りないカットがあればすぐに取り直しもできる。現場での安心感もそうだが、このスタイルであれば、撮影後、本編集に即取り掛かれるというのが何といっても大きな魅力だ。
夢のようなワークフローで、クリエイティブに没頭
全ての撮影が終わり、カメラからの4KProResデータのコピーが完了したのが午後8時。東京のチームから、最終のPremiere Proのファイルが届いたのが、なんとその2時間後。そして帰国を前に、私は思わず空港で歓喜の声を上げた。手元にあるちょうどコピーの終わった4Kのデータが、Proxyと一瞬にして入れ替わり、OKカットだけが細かく並んだ約1時間の仮編集のタイムラインが4Kで表示されている。
「こんなことができる時代なのか!」自らがシステムを組んだとはいえ、実際にその状況を目の当たりにして、感動で震えた。今回の撮影の総ファイル数は約700カット。総尺約10時間。もしFrame.ioがなければ、東京に帰国した後、たった一人でOKカットを見極めて、段積みを始めて、おそらく3日以上はその準備にかかる。そしてその頃には疲れ果てている。今までの経験からすると、そうなっていたに違いない。
それどころか帰りの飛行機で「オンライン編集」をどんどんと進めていって、内容がまだ頭の中で鮮明なうちに、クリエイティブを演出でぶつけられる。作品のクオリティはどんどんと上がっていく。なんということだ。
Frame.ioが作る様々な「未来の形」
この後、本編のチェックも全てFrame.ioのレビュー機能で行い、納品もFrame.ioで行った。一貫してFrame.ioが制作を効率的に支えてくれる。今回はオフラインのProxy編集を目的としてFrame.ioを利用したが、プロダクションの制作で、カラリストが撮影中のデータをどんどんと色補正することもできるし、CGチームが撮影と平行して合成のチェックをすることもできる。
様々なアイディアで、このFrame.ioを使ったワークフローは新しい時代を作っていくことになるだろう。C2Cの未来はもうすぐそこまで来ているのだ。
このワークフローのより詳しい内容を、幕張メッセで開かれるInter BEE 2023で発表いたします。11月17日(金)11時30分より「INTER BEE CREATIVE」オープンステージにて。下記より是非ご参加ください!