CES Unveiledとは
CES開幕前にメディア向けに特別開催されるイベントであり、その年の注目トレンドやプロダクトをいち早く確認できる場である。筆者は約10年にわたりこのUnveiledに参加してきたが、今年も進化を感じさせる興味深いプロダクトをPRONEWSで紹介する予定だ。これまでのUnveiledレポートを読んでくださった方には、今年の内容を通じて時代の移り変わりを感じてもらえるかもしれない。
今年感じた主なトレンド
個別のプロダクトを紹介する前に、今年特に注目すべき3つの大きなトレンドを以下に挙げる。
1.AI Everywhere
昨年まではAIを活用したプロダクトを選りすぐって紹介していたが、今年はほぼすべてのプロダクトにAIが組み込まれている状況だ。そのため、「AI搭載○○」といった視点での特集が難しいほどである。たとえば、AI搭載オーブン、AI搭載グラス、AIを活用したファッションデザインツールなど、多岐にわたる分野でAIが活用されている。
2.コロナ前の活気を取り戻したメディア参加数
昨年までのCES Unveiledはやや閑散としていたが、今年は人気ブースに人だかりができ、到達するのも困難なほどの賑わいを見せている。特に注目を集めていたのは、キリンが提供するスマートスプーンで、これについては後日詳細を紹介する。
3.フレンチテックから中国プロダクトの台頭、日本の存在感も増加
かつてUnveiled会場を席巻していたフレンチテックに代わり、今年は中国系の企業やプロダクトが目立つようになった。米国に拠点を置く企業でも中華系のチームが多く、中国の存在感が際立っている。今年のCES出展企業4500社のうち、1300社が中国系であるとSouth China Morning Postが報じている。この積極的な姿勢から、中国の勢いを強く感じる。
一方で、日本のJETROによるUnveiled出展も増加しており、今年は31社が出展していた。Unveiledに先駆けて行われたJETROのセッションは満員御礼で、会場からクレームが出るほどの盛況ぶりだった。日本のスタートアップが注目される様子を目の当たりにし、大変嬉しく感じた。
少し前置きが長くなったが、ここからはUnveiledで注目したプロダクトを紹介していく。
スマートグラス
毎年CES Unveiledでスマートグラスを試してきた。過去には網膜投影の日本のスタートアップQDレーザーや、昨年はXREALのスマートグラスを試してメガネデバイスから情報を受け取る体験を楽しんだ。
個人的にもRay-Ban Metaを米国滞在中に楽しんでいる。そのような様々なスマートグラスを体験している私が注目したのは、大混雑になっていた「Halliday」プロダクトである。このプロダクトは、網膜投影でAIエージェントが稼働し、ナビやプレゼンのシナリオなどを投影してくれる(チート・シート機能と呼ぶらしい)ものなのだが、何がすごいかというと「軽さ」である。フレームに組み込まれた5mm程のプロジェクターがついているだけなので、ほぼ普通のメガネと重さが変わらない。35gだ。Ray-Ban Metaと比べても軽い。ただし、今後Kickstarterを行うということで、まだまだ市場に出ているものではないので、そこは留意すべきところだがそれでも軽い。
他にもAIエージェントのマーケットプレイスも有するスマートグラス「loomos」も展示していた。これは自分の好みのAIエージェントをスマホ側で追加していくことによりスマートグラスの機能をカスタマイズできるものらしい。
味覚系の進化
キリンと味の素が大きく存在を示していた。これは嬉しいニュースである。
まずキリンであるが、電気味覚技術で塩味を抑えることができるスマート減塩スプーン「エレキソルト」を開発者である明治大学の総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 宮下芳明教授が実際にブースに立って説明してくれたことには感動した。
このプロダクトは今年CES 2025イノベーションアワードを2つ受賞している。塩味を1.5倍に拡大することができるので成人病予防に効果がある。
今回初めて実際に触ってみたのだが、非常に軽い。普段使いでも使える。価格も2万円程。一緒にUnveiledを回っていた米国シリコンバレーのデザイン会社「btrax」のブランドン社長が「米国では成人病が深刻な社会問題である」とおっしゃっていたが、そのような病気に悩む人々に受け入れられるからだろう、ブースは常に満員御礼だった。
そして、味の素はゆかいなロボットを作るユカイ工学との共同開発プロダクトの骨伝導で薄味でも塩味を感じられる製品を紹介していた。正しくは、味の素のブースというよりもユカイ工学のブースでの出展ではあったが、毎年ユカイ工学のブースを楽しみにするメディアやインフルエンサーが多い中、味の素との共同開発プロダクトは良いプレゼンスを示していた。
癒し系プロダクト
コロナ禍にもメンタルヘルスのプロダクトは増えたが、そのメンタルヘルスをメディテーションなどで行うのではなく、単純に「かわいい」「好き」で癒されたいという人が増えているからだろうか。今まで癒し系のプロダクトといえば日本のユカイ工学のロボットがCESグローバルの中でも存在感を示していたが、今年はUnveiledの中でも癒し系のプロダクトが増えていたように感じる。
まずは本家ユカイ工学から紹介しよう。 今年のユカイ工学は新しいプロダクトを2つ紹介していた。熱いものを冷ますふーふーロボット「猫舌ふーふー」と、チラ見してくる抱き着きロボット「みるみ」である。
「猫舌ふーふー」はその名の通り猫舌の方向けのソリューションプロダクトだ。熱い食材がある時に、コップや器の横に「猫舌ふーふー」をつけてあげると約3分ほどで食べごろ・飲みごろの適温に様してくれるという。
「みるみ」は赤ちゃんが電車などに乗っている時に目が合うような癒しの瞬間をバッグにつけたぬいぐるみが実現してくれるという。私はバッグではなく腕につけてみたが、なんだかそれもいじらしくて可愛い。この記事を読んでいる人の中では「そのようなプロダクトがウケるの?」と疑いの目で読まれる方もいるかもしれないが、今回もAFPや人気ストリーマーの方がユカイ工学のブースを目掛けて取材をしていた。
mixi2で話題のmixiも癒し系会話方ロボット「Romi」を出展していた。画像も認識するので家庭内で起きていることを判断してコミュニケーションもできるという。
そして、以前DRONE.jpでも記事化されたフランスのEnchanted Tool社のロボット「Miroki」も欧米系が作るロボットとしてはかなり癒しや可愛さが強化されている。イーロンマスクのTesla OptimusやOpenAIのFigure 01などの「機能的な」ロボットエージェントとは一線を画している。
AIが日常に入るようになった現在、ロボットがどのように日常に入り込むか。それはtoCはもちろんtoBでも気になるトピックではあるが、間違いなく「癒されるロボット」はtoC/toB問わずに導入されていくことだろう。機能的なロボットよりも愛くるしいロボットに配膳された方が嬉しいのは私だけではないだろう。
「Tombot」は犬の癒し系ロボットだ。エモーショナルサポートをしてくれるという。切なそうな顔をしているので少しだけ癒されるというよりも、こちらが構ってあげなきゃいけないという気持ちにさせてくれるのも面白いところだ。
上記で紹介したのはCES 2025のプロダクトのうちの一握りではあるが、少しでも今年のトレンド、注目プロダクトから興味を持ってもらえるプロダクトを発見してもらえれば幸いである。