ソニー初のカメラトラッキングシステム「OCELLUS」も、注目すべき展示の一つだ。ソニーブースでは、NABで発表されたVENICEエクステンションシステムMiniにOCELLUSのセンサーユニットが装着された状態で展示された。

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ソニー「OCELLUS」

OCELLUSは、カメラの位置情報、レンズのフォーカス、ズーム、アイリスの情報をUnreal Engineなどの後段システムへ伝送する機能を備える。伝送はリアルタイムに行うことも、OCELLUS内部にファイルとして保存することも可能。

OCELLUSの特筆すべき点は、マーカーレスで動作することだ。既存のシステムにはIRマーカーや複数の外部カメラを必要とするモデルが存在するが、OCELLUSは、事前にセンサーユニットを動作させ、環境の特徴点を学習し、3Dマップとして構築する。このマップ内の特徴点を認識することで、自己の位置を算出する。このため、場所を選ばずに使用できるという大きな利点がある。例えば、スタジオ撮影や屋外スポーツイベントなど、多様な環境での利用が容易になる。

もう一つの強みは、センサーユニットに内蔵された5つのセンサーである。これにより、周囲の特徴点を広範囲かつ網羅的に認識することが可能となる。極端な例として、カメラを真横にしても、いずれかのセンサーが特徴点を捉えることで、安定したトラッキングデータを継続的に生成できる。

また、5つのセンサーを搭載しながらも小型サイズを実現しており、カメラオペレーターの作業を妨げない。視野が遮られない点も利点の一つである。

5つのセンサーの存在は、取り付けの容易性にも貢献する。特徴点の位置を過度に意識することなく、多くの場合、上部への取り付けで主要な特徴点を捉えることができる。簡便な取り付けに加え、状況に応じて側面への取り付けも可能である。

付属品も考慮されており、NATOレールが付属する。レールにはスケールが付いているため、再取り付けの際に同じ位置へ容易に固定できる。堅牢な設計により、レンズ交換後にセンサーユニットを再装着した場合でも、同じ位置を維持することでキャリブレーションの頻度を低減できる。

5つのセンサーユニットは、マップ生成の速度向上にも寄与する。周囲の特徴点を広範囲に捉える必要があるマップ生成において、単一のセンサーでは全方向を捉える必要があるのに対し、5つのセンサーにより、このプロセスを大幅に短縮できる。

さらに、レンズデータの取得も可能であり、多様なレンズに対応する。

デモでは、OCELLUSの本体側がVENICEの本体に接続され、SDIケーブル1本で情報を取り込んで映像表示を行うだけでなく、メタデータも同時に取得していた。レンズ情報を取り込むことで、エンコーダーなしにズーム、アイリス、フォーカスのデータをトラッキングシステムへ送信し、XYZ、パン、チルト、ロールの情報に加えて、これらのレンズ情報も記録・出力できることが示された。

これにより、シンプルなセットアップが可能となり、現場での利便性が向上する。メタデータにはタイムコードやGenlockなども含まれるため、よりすっきりとした取り付けが実現できる。対応レンズについては、Cooke/iインターフェースを備えたPLレンズやEマウントレンズの情報取得が可能である。オールドレンズやマニュアルレンズを使用する場合は、専用のレンズエンコーダーを用いることで、同様に情報の取得が可能としている。