
「NAB 2025」で公開された「GFX ETERNA」5つのアップデート

富士フイルムは「NAB 2025」の同社ブースにおいて、映像制作用カメラ「GFX ETERNA」を展示した。GFX ETERNAの展示履歴を振り返ると、初披露は2024年11月のInter BEEで、同時にモックアップの展示が行われた。続く2025年2月の「CP+2025」では、Gマウントのパワーズームレンズを通じてモニターに映像が表示される。実際に電源が投入された動作可能な状態での展示が行われている。
今回の「NAB 2025」では、CP+2025と同様に電源が入った動作可能な状態に加え、GFX ETERNA専用のリグを装着した状態で展示された。このリグはWooden Camera社製で、NAB展示のために特別に用意されたものである。
さらに、今回のNAB 2025にあわせて、これまで詳細が明らかにされていなかった重要なスペックが複数公開され、大きな話題を呼んでいる。以下、その主な内容を紹介する。
- バリアブル電子NDフィルターの仕様を公開
- NP-W235バッテリーを内蔵
- CFexpress Type BとSDカードに対応
- XLRマイクの互換性アダプター発表
- Frame.ioに対応
バリアブル電子NDフィルターの仕様を公開

撮影中にNDフィルターの調整が可能になるバリアブル電子NDフィルターの仕様が発表された。フィルター濃度は0.6から2.1の範囲で調整可能であり、2段から最大7段まで、0.1段刻みでの制御が可能となる。この仕様はソニーBURANOと類似しているが、GFX ETERNAはより大型のイメージセンサーに対応するため、大型の電子NDユニットを搭載している。大型の電子NDユニットを搭載しながらも、このサイズを実現した点は特筆に値する。

NP-W235バッテリーを内蔵
本体左側面には2つのカバーが存在し、これまでその機能は不明であった。今回、上側のカバー内部に充電式バッテリー「NP-W235」を1つ装着可能であることが公開された。NP-W235を使用することで、VマウントバッテリーやDC INとのホットスワップが可能となる。また、Vマウントバッテリーを使用しない場合でも、NP-W235単体での記録機能が提供される。
さらに、このバッテリーはVマウントバッテリーまたはDC INが接続されている場合、自動的に充電される仕様であり、ほぼ常時満充電状態で使用可能である。

CFexpress Type BとSDカードに対応
記録メディアへの対応については、これまでの展示では記録メディアに関する情報は明確ではなかったが、左側側面カバーの下側はメディアスロットであることが明らかになった。展示ではカードスロットが確認でき、GFX 100 IIと同様にCFexpress Type BとSDカード1枚での記録が可能である。その点から、記録フォーマットもGFX 100 IIのシステムと類似していると考えられる。
XLRマイクの互換性アダプター発表

XLRマイク互換性アダプターについては、Inter BEEやCP+の展示時点で3.5mmステレオミニジャックは確認されたものの、XLR端子やMini-XLR端子は確認できなかった。今回、カメラ本体へXLRアダプターのポートが搭載されていないことが正式に発表された。代替手段として、ハンドグリップ上のホットシューとTASCAMのXLRマイクアダプターに対応する仕様となっている。GFX 100 IIでは、ファインダーを取り外すことでXLRマイクアダプターの使用が可能であったことから、これらの機能がGFX ETERNAへも継承されたと推測される。

Frame.ioに対応
あわせて、Adobeの「Frame.io Camera to Cloud(C2C)」への対応も発表された。Frame.io C2Cは、撮影した映像データをカメラから直接クラウドへアップロードし、リモート編集のワークフローを効率化する機能である。この機能により、遠隔地からのデータアクセスが可能となり、撮影直後にオフライン編集を開始できる環境が整う。これにより、制作現場とポストプロダクションの間でのデータ共有に要する時間的コストの大幅な削減が期待されている。
これまでの発表のおさらい
最後に、これまでに発表されたGFX ETERNAの主要仕様をピックアップして紹介しよう。イメージセンサーはGFX 100 IIに搭載されている「GFX 102MP CMOS II HS」が採用され、高速画像処理エンジンとして「X-Processor 5」が搭載されている。センサーサイズは44mm×33mm、対角55mmの大型センサーであり、4:3の画角を使用したオープンゲート動画のキャプチャーが可能である。
GFX ETERNAの大きな特徴の一つとして、左右両面に液晶モニターが搭載されている点が挙げられる。現時点では両方のモニターに同一の情報が表示される仕様であり、助手とカメラマンの双方からカメラの設定操作が可能である。左側からの操作も可能であるため、ワンマンオペレーションにも配慮された構成だ。


他社のシネマカメラとの比較として、ソニーVENICEは左側面にコントロールディスプレイ、インサイド側に小型の有機ELミニディスプレイを搭載し、ALEXA 35はカメラ左側のみにサイドディスプレイを搭載している。GFX ETERNAのように両面に大型液晶モニターを備えるシネマカメラは比較的少ない。両面モニター搭載に伴う誤動作防止策として、両方からのロック機能が備わっている。
記録ボタン(Recボタン)は、助手側(右側)には配置されておらず、カメラマン側(左側)とレンズマウント側に配置されている。
展示において、GFX ETERNAと組み合わされていたレンズは、同カメラに最適化されたGFマウント初のパワーズームレンズ「Fujinon GF 32-90mm」だ。レンズ先端天面には「FUJINON CINE ZOOM GF LENS」の表記があり、シネマ用途を重視した新しいレンズシリーズであることが示唆されている。このレンズは、GFマウントにおいて初のパワーズーム対応レンズとなる。

残された現時点で未公開の重要な情報として、価格が挙げられる。価格に関する今後の発表が注目される。