
2025年6月6日から2日間、ハリウッドで最も歴史ある映画スタジオの一つであるユニバーサル・スタジオでCine Gear Expo LAが開催されたのはここまで本特集で紹介してきた通りだ。このイベントには約190社が出展し、多くの新製品が初公開された。Cine Gear Expo LA 2025レポートの最終記事として、特に注目したブースをまとめて紹介する。
Metal Toys:常識を覆す衝撃吸収と旋回性能をもった移動車を披露

Metal Toysは、今回初めて自社名義でCine Gear Expo LAに出展した。これまでは他の代理店名義で出展経験があったという。今回の展示では、移動車のジョイント部分の衝撃吸収機能と小半径での旋回性能がデモンストレーションされた。
トラックジョイントの衝撃吸収機能は、実際に移動車に搭乗して体験した結果、ジョイント部分からほぼ衝撃が伝わってこない点が顕著であった。これは同社の技術力の高さを示すものと考えられる。
また、小半径対応機能は、商品を回り込んで撮影するような場面で、移動車の柔軟な運用を可能にするだろう。従来、特定の角度での旋回は脱線の原因となることがあったが、Metal Toysの技術により、通常の移動車では困難であった急カーブでの旋回も実現している。

SmallRig:トランスフォーマーコラボと小型化を実現したTribex三脚で新境地を開拓

SmallRigブースは、一般的な映像機器メーカーの展示とは異なる様相を呈していた。ここではSmallRigとトランスフォーマーのコラボレーション製品が主軸として展開された。SmallRigは通常、インフルエンサー、YouTuber、映画制作者との協業が通例であるが、今回の展示ではその枠を超えた提携が実現した。
このコラボレーション製品では、クランプ、マジックアーム、バッテリー、三脚、ケージなどにトランスフォーマーの配色が採用されている。これらの配色は、ソニー、キヤノン、ニコンといった主要4大メーカーのカメラケージで利用可能になる見込みである。





また、SmallRigはCine Gear Expo LAにおいて複数の新製品を初公開したが、その中でも特に注目されたのはTribex三脚の小型版である。Tribex三脚は、そのグリップ部分に独自の特徴があり、他の三脚ブランド製品との差別化が図られている。どのような地形においても迅速なセットアップが可能である点が特筆される。
この三脚は2024年のNABで初めて発表され、大きな反響を呼び、SmallRigの中でも人気の高い製品となっていた。しかし、その価格が高価であるという意見も存在したため、今回のCine Gear Expo LAでは、アルミニウム素材を使用することで価格を抑えた小型モデルが発表された。このモデルは、片手で操作可能なクイック油圧システムを踏襲しており、慣れることで迅速な展開と瞬時の水平出しが可能である。

DZOFILM:黄金に輝く新レンズ「Arles Lustre」発表

DZOFILMはCine Gear Expo LAにおいて、「Arles Lustre」シリーズを展示した。同社は4月のNABでCooke /i-Technology対応の「VESPID Prime II」を発表したばかりであり、その2ヶ月後に新製品を投入する積極的な開発姿勢が注目された。特に、ガンダムの百式を想起させるような完全なゴールド鏡胴を持つ新レンズの発表は、来場者の関心を集めた。


既存の「Arles Prime」がT1.4のF値を持ち、46.5mmのイメージサークルでVista Visionセンサーをカバーするプライムレンズであるのに対し、「Arles Lustre」は「Arles Prime」に新たなアレンジを加えたモデルと位置付けられる。
「Arles Lustre」もまた、46.5mmのイメージサークルでVista Visionセンサーをカバーするプライムレンズである点は共通している。しかし、そのF値はT1.6となり、最大の違いは独自のコーティングが施されている点にある。これにより、ビンテージルックを特徴とし、温かみのある表現やレトロな雰囲気を演出することに適している。インディーズ映画、時代劇、実験映画、ファッションコマーシャルなど、特定の映像表現を求める制作に適しているとされる。

TLS:リハウジングしたビンテージレンズを展示
Cine Gear Expoにおいて、True Lens Services(TLS)は実際にリハウスされたビンテージレンズを展示しており、これは貴重な確認機会となる。TLSのリハウスレンズは、特徴的なアクセントカラーといったデザイン要素やオリジナルメーカー名、ブランドのデザインを継承している点が特徴である。これにより、レンズの外見からその素性が容易に判別できる。


先に述べたDZOFILMの「Arles Lustre」が新製品でビンテージルックを追求する一方で、TLSは既存のオールドレンズそのものを活用し、ビンテージの描写を実現している。どちらの手法が優れているかという結論を出すことは困難である。しかし、オールドレンズが持つ独自の描写は、撮影監督が過去の動画撮影やスチル撮影で経験した具体的なイメージと結びつきやすいためか、高い人気を得ているようである。
実際に話を聞くと、多くの撮影監督はスチルカメラ等での撮影を通じてこれらのレンズの描写に親しみや好意を抱いており、それがシネマ用にモディファイされているならば積極的に使用したいという流れがあるため、反響が大きいという。
ブースのバナーにはマミヤのレンズがフィーチャーされており、展示ではマミヤレンズが「107mm T2.3」や「19mm T3.3」のLPLマウントにリハウスされた状態で展示されていた。さらに、マミヤのレンズは、ARRIやBlackmagic Designのカメラで話題となっている最大65mmのセンサーサイズとの互換性も有するとのことである。


SIRUI:フルフレーム対応アナモルフィックレンズ「IronStar」シリーズを初公開

SIRUIブースでは、レンズ新製品が初公開された。EFマウントおよびPLマウントに対応したフルフレーム向け1.5倍アナモルフィックレンズ、SIRUI「IronStar」シリーズが初公開された。このシリーズの特筆すべき点は、フルフレームをカバーするアナモルフィックレンズでありながら、すべての焦点距離でT値が1.9に統一されていることである。
展示では「35mm T1.9」、「45mm T1.9」、「60mm T1.9」が確認でき、今後は「75mm T1.9」、「100mm T1.9」、「135mm T1.9」の発売が予定されている。EFマウントとPLマウントのレンズマウントはユーザーが交換可能であり、EFマウントへの対応はミラーレスカメラでの使用の利便性を高めるものと考えられる。

また、SIRUIブースでは、ゲーム、ライブストリーミング、放送用途のプロフェッショナル向けビデオスイッチャー、キャプチャーカード、コンバーター、およびツールを提供するブランド、「Cinetreak」の展示もあった。具体的には、4つのHDMI入力または4つのSDI入力を備える「Stream Master SDI」、10インチのフルタッチスクリーンを搭載した「Touch-S」、そして4つのHDMI入力に加えてPGMおよびAUX出力を備える「Mixer Plus」が展示された。このブランドは、配信ソリューションを求めるユーザーにとって新たな選択肢となる可能性を秘めている。

Profoto:大光量LED「L600C」「L600D」などを初披露

今年のCine GEAR展示会において、Profotoの広大なブースは来場者の注目を集めた。展示会開催前日、Profotoは動画撮影市場への本格参入を示す新製品群、すなわち2000WのLEDパネル「LP2000C」、600WのフルカラーLED「Profoto L600C」、そしてモノLED「Profoto L600D」を発表した。これまでProfotoは静止画撮影におけるストロボの分野で市場を牽引してきたが、これらの新製品は動画撮影を行うフォトグラファーからの需要に応えるものと推測される。


Laowa:新型ズームレンズ2種を展示

Laowaブースでは、主に2つの注目製品が展示された。一つは、「Laowa 8-15mm T2.9 FF Fisheye Zoom Cineレンズ」である。このレンズはフルフレームに対応しており、RED V-RAPTORと組み合わせて展示されていた。180°の対角画角、一定のT2.9絞り、そして16cmの近接撮影距離を実現する。
また、そのスチル版である「8-15mm F2.8 FISHEYE ZOOM」も展示されていた。CineレンズのマウントオプションはPLが標準で、交換可能なE、Z、RF、L、Xバヨネットが利用可能である。スチル版のマウントオプションはソニーE、ニコンZ、キヤノンRF、Lマウントが用意されている。


もう一つは、「Laowa Probe Zoom Macro Lens」である。このレンズは、狭い空間や水中でのクリエイティブなマクロ撮影を可能にするとされており、ラインナップとして「15-24mm T8」と「15-35mm T12」が展開されている。ワイド端15mmの超広角視点、2.3倍のズーム範囲、そして同焦点設計が特徴である。マウントオプションはARRI PLが標準で、オプションとしてソニーE、キヤノンRF、キヤノンEF、ニコンZ、Lマウントのバヨネットが提供されている。



