北陸地方の映像・音響クリエイター待望のイベント「北陸放送機器展」が、今年も開催される(会期:9月18日(木)、19日(金)、会場:富山県民会館)。昨年、大きな反響を呼んだこの展示会は、なぜ北陸の地で生まれ、どのような進化を遂げたのか。主催者である神成株式会社AVC事業部の泉悠斗氏に、開催に込めた思いと今年の見どころを伺った。

――まず、改めて「北陸放送機器展」とはどのようなイベントなのか、開催にいたった背景からお聞かせいただけますでしょうか。
泉氏:
北陸地方には、映像制作者やオーディオ制作者といったクリエイターが多くいらっしゃるのですが、その割に彼らが集うコミュニティや専門的な展示会がこれまでありませんでした。IT系のいしかわ情報システムフェア「e-messe kanazawa」やものづくり系の富山県ものづくり総合見本市「T-Messe」といった展示会は存在するのですが、クリエイティブに特化したイベントは皆無だったのです。
そこで、以前から「そうした場を作りたい」という思いがあり、コロナ禍が落ち着いたタイミングで、メーカー各社からも開催を望む声が上がったことから、2024年、第1回を開催するにいたりました。
――主催されている神成株式会社は、もともと放送機器とは全く別事業の消防用設備設計事業が中心だったかと思いますが、なぜ映像業界の展示会を主催することになったのでしょうか。
泉氏:
弊社はもともと電気や防災関連の事業からスタートし、そこから映像事業を立ち上げました。事業を進める中で、既存の映像制作会社様というよりは、個人のビデオグラファーやクリエイターの方々と繋がる機会が非常に多くなりました。そうした方々へのサポートをもっと手厚くしたい、何かできることはないかと考えた末に、私自身が発起人となり、会社としてこの展示会を始めることを決めた、という経緯があります。
――2024年が記念すべき北陸放送機器展第1回開催でした。実際に開催してみて、手応えはいかがでしたか?
泉氏:
はい、昨年は予想をはるかに上回る方々にご来場いただき、大きな反響がありました。イベント終了後にも「そんな展示会をやっていたんですね」というお声がけをいただくことも多く、手応えを感じています。
面白いことに、今年の来場予約者データを見ると、約半数が昨年は参加されていない新規の方々なんです。まだまだ認知が広がる余地があると感じています。
――昨年からさらにパワーアップした点についてもお聞かせください。
泉氏:
まず、単なる機材展示だけでなく、より実務に繋がる場を提供することに力を入れました。今年はPRONEWSと連携して「クリエイターステージ」を設け、Adobeさんによるカラーセミナーや、じおらま富山。さんによる撮影技法セミナーなど、専門的な内容のセッションを毎日・毎時間開催します。さらに、セミナーで学んだことを各社のブースで実際に体験できるような構成にしています。
出展社のラインナップも拡充しました。昨年は映像関連の企業が中心でしたが、今年は音響業者様からのご要望にお応えして、音響関連の出展社も大幅に増やしました。また、近年のトレンドである一眼カメラでの撮影需要を踏まえ、焦点工房さんにもご出展いただいています。結果として、出展社数は昨年の25社から10社増え、今年は35社となりました。
会場も、昨年は複数フロアに分かれていたため回遊しにくい点がありましたが、今年はワンフロアに集約しました。スペースも昨年のほぼ倍を確保したのですが、それでも会場は出展社でいっぱいの状態です。

――最後に、今年の「北陸放送機器展」の特に注目してほしい見どころを教えてください。
泉氏:
やはり、先ほど申し上げた「PRONEWS STATION」で連日開催される多彩なセミナーは大きな見どころです。そしてもう一つ、初日の最後にはクリエイター同士の交流会を企画しています。地方で活動する上で、クリエイター同士の横の繋がりは非常に重要です。このイベントが、新たなコラボレーションやビジネスが生まれるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

北陸のクリエイターを繋げたい、という主催者の熱い想いから生まれた「北陸放送機器展」。昨年を上回る規模と熱量で開催される今年は、単なる機材展示の場に留まらない。セミナーでの学び、ブースでの体験、そして交流会での出会いが、新たな創造の種を育む土壌となるだろう。地方のクリエイティブシーンの未来を切り拓くこの2日間から目が離せない。