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2025コンセプト:銀幕の「国宝」に捧ぐ、技術の「花道」——PRONEWS AWARD 2025 開幕に寄せて

2025年の照明業界は、色再現技術の刷新と超高出力LEDの台頭を軸に、大きな転換点を迎えた一年であった。本特集では、単なるスペックの進化ではなく、「色をどう制御し、どこまで現場で成立させられるか」という実装力の観点から、2025年を象徴する照明機材を整理・評価していく。

多色LEDエンジンによる表現精度の向上

2025年の照明業界において、大きな転換点となったのが「色の再現性」に対する考え方の変化だ。これまでのLEDは「赤・緑・青(RGB)をどう混ぜるか」という段階だったが、現在は「光の成分(スペクトル)そのものをどう設計するか」が問われる時代になった。この競争を象徴するのが、Aputureの「STORM」シリーズである。独自開発の「BLAIRエンジン」は、LED照明の評価基準を根本から塗り替えた。

同シリーズのラインナップにおいて、2025年11月に国内出荷を開始した「STORM 700x」は、技術的な到達点として圧倒的な存在感を放っている。その一方で、実際の制作現場で主力機としての地位を確立するのは、同年7月に先行して登場した「STORM 400x」であろう。優れた可搬性を備え、少人数のチームから中規模の現場まで柔軟に対応できる同機は、極めて実用性の高い一台である。

Aputure「STORM 400x」
Aputure「STORM 400x」
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Aputure「STORM 700x」
Aputure「STORM 700x」
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さらに、BLAIR技術をパネルライトに展開した「NOVA II」は、その思想を別フォームで実装した好例として、Aputureの色再現アプローチを明確に示した。

    Aputure「NOVA II」
Aputure「NOVA II」
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これに対する有力な対抗軸として位置づけられたのが、NANLUXの「Evoke 600Cおよび150C」だ。本シリーズの中核は「Evoke 600C」であり、「150C」は同じ色再現アプローチを小規模現場へ展開する派生モデルと位置づけられる。

このシリーズを特徴づけているのが、発光エンジンの設計思想そのものを起点とした色再現アプローチである。8色混合の「Nebula C8」は、従来のRGB系LEDでは不足しがちだったスペクトルの中間域を補完する設計が採られている。Deep RedやIndigoといった発光成分を追加することで、色遷移時のスペクトル欠落を抑え、色温度変化に伴う色ズレや濁りを低減している点が技術的な特徴だ。こうしたスペクトル設計により、演色性を数値だけでなく実用上の安定性として成立させている。

Nanlux「Evoke 600C」
NANLUX「Evoke 600C」
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Nanlux「Evoke 150C」
NANLUX「Evoke 150C」
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高出力LEDによるHMI代替の実用化

色再現の進化と並行して、もう一つ大きな転換点となったのが、高出力領域におけるLEDの位置づけである。2025年は、高出力機材において「LEDによるHMIの代替」が検討段階を越え、実運用の選択肢として成立した年といってもいいだろう。Aputureの「STORM XT52」は、6kw級HMIに匹敵する出力を実現しながら、ランプヘッドと制御ユニットを分離することで現場での運用性を確保した点が評価ポイントだ。重量や構造を巡る議論の中で、リギング負担を分散させる分離型設計は、超高出力LEDを現実の制作現場で成立させるための実用的な解として、多くのプロフェッショナルに受け止められた。

一方、NANLUXの「Evoke 5000B」は、世界初となる5000W出力でのバイカラー対応に加え、グリーン/マゼンタ調整機能を搭載することで、高出力帯における色制御の実用段階を明確に示した。単なる明るさだけでなく、色の調整力とIP66の耐候性を兼ね備えたこの存在は、過酷なロケーション環境における照明設計の負担を大きく軽減するだろう。「Evoke 5000B」は、高出力照明における選択肢として、ロケーション照明の設計前提を更新する役割を果たした。

Aputure「STORM XT52」
Aputure「STORM XT52」
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Nanlux「Evoke 5000B」
NANLUX「Evoke 5000B」
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また、GODOXの「KNOWLED MG6K」も忘れてはならない。消費電力4300Wで6kW HMIを凌駕する光量を実現しつつ、ヘッド重量をヨーク込みで約28kgに抑えた軽量設計は、セットアップの常識を変えるポテンシャルを秘めている。KNOWLED MG6Kは、大型照明における機動性と現実性を再定義する存在として位置づけられる。

このハイエンド領域には、ストロボ界の巨人Profotoも「L600C」で本格参入を果たした。バラストレス設計による高い運用性に加え、定常光でありながらハイスピードシンクロのフラッシュとしても機能するハイブリッド性は、スチールとムービーの境界が曖昧になりつつある現代の制作環境において強力な武器となる。L600Cは、表現領域の統合という課題に対し、一つの明確な回答を示した。

Godox「KNOWLED MG6K」
GODOX「KNOWLED MG6K」
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Profoto「L600C」
Profoto「L600C」
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小型照明における実装技術の成熟

この分野ではNanliteを筆頭に、複数のメーカーがそれぞれ異なるアプローチで小型照明の完成度を引き上げた点が特徴的であった。ここまで述べてきたのは、色再現や出力といった「照明性能」の進化である。一方で2025年は、もう一つの重要な軸として、現場での使われ方そのものを洗練させた小型・モバイル照明の成熟が際立った年でもあった。

Nanliteの「PavoTube II 6CP」ではNFCによるペアリングやNebula C4エンジンの搭載によって、小型チューブライトを本格的なプロツールへと昇華させた。円形デザインのNanlite「miro 30cおよび60c」や、ポケットサイズのNanlite「Pico」も、その形状やサイズからは想像できない光量と機能性を備え、小型照明の可能性を確実に更新した。

Nanlite「PavoTube II 6CP」
Nanlite「PavoTube II 6CP」
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Nanlite「30cおよび60」
Nanlite「miro 30cおよび60」
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Nanlite「Pico」

モバイルライティングの分野では、amaran「Ray 60cおよび120c」が新たなスタンダードを提示した。薄型軽量な筐体に高い出力効率を確保している点は、モバイル運用における実用性を大きく高めている。独自のバッテリーシステムによるケーブルレス運用も含め、機動力が求められる現代の撮影スタイルに的確に応える製品であった。

最後に触れておきたいのが、ZHIYUNの「Molus X100」シリーズである。かつてはジンバルメーカーの印象が強かった同社だが、わずか385gの筐体で最大100W出力を実現し、USB-PDアダプター、DCアダプター、グリップバッテリーを電源とする設計など、「動き」や「バランス」への知見がライティング機材に巧みに落とし込まれている。「Molus X100」シリーズは、機動型ライティングの新しい像を明確に示した存在であった。

amaran「Ray 60c」
amaran「Ray 120c」
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ZHIYUN「Molus X200」
ZHIYUN「Molus X100」
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これらの製品群が示したように、2025年は、色再現の深化、HMI代替の決定打、そしてモバイル機材のプロフェッショナル化という三つの軸において、照明機材が飛躍的な進化を遂げた一年であった。

ここまで見てきたように、2025年のライト部門におけるノミネート製品群は、それぞれ異なるアプローチから照明機材の進化を体現していた。

以下では、今年のライト部門を構成するノミネート製品を一覧として整理した上で、その中から特に編集部が高く評価したゴールド賞およびシルバー賞の選定理由を明らかにしていく。

  • Aputure「STORM 400xおよびSTORM 700x」
  • Aputure「NOVA II」
  • NANLUX「Evoke 600CおよびEvoke 150C」
  • Aputure「STORM XT52」
  • NANLUX「Evoke 5000B」
  • GODOX「KNOWLED MG6K」
  • Profoto「L600C」
  • Nanlite「PavoTube II 6CP」
  • Nanlite「miro 30cおよび60c」
  • Nanlite「Pico」
  • amaran「Ray 60cおよび120c」
  • ZHIYUN「Molus X100」

以上が照明部門のノミネート製品となる。

PRONEWS AWARD 2025:照明部門 ゴールド賞

NANLUX「Evoke 600C」

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編集部として本機を高く評価した最大の理由は、8色混合による高い色再現性能を、実験的な技術にとどめることなく、実際の制作現場で使い切れる形にまで落とし込んでいる点にある。Deep RedやIndigoを含むスペクトル設計は、色温度変化時の破綻を抑え、商業撮影やプロダクト撮影といった色再現が重視される現場において、安定した運用を可能にした。

さらに、本機はフルカラー仕様でありながら、上位クラスに迫る出力性能と堅牢な筐体設計を備え、価格を現実的な水準に抑えている。単なる高出力ライトや高演色ライトにとどまらず、性能・運用性・価格のバランスを含めて「現場で成立する」完成度を示した点は、プロフェッショナル向けLEDライトの価値基準そのものを再定義するものと評価した。

確かに、スペクトル設計の方向性については議論の余地を残す部分もある。しかしそれを差し引いてもなお、本機が2025年の照明業界における価値転換を最も明確に体現している一台であることは疑いなく、編集部では「今、現場で最も選ばれるべき一台」であると結論づけ、ゴールド賞に選定した。

PRONEWS AWARD 2025:照明部門 シルバー賞

Aputure「STORM 400x」

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STORM 400xは、300クラスの出力不足と600クラスの重量負担という、現場が直面しがちなジレンマに対して現実的な最適解を提示したモデルである。十分な光量を確保しつつ、ワンマン運用から中規模クルーまでをカバーする機動力を備えている点は、同機が日常的な制作フローにおいて中核を担う適性を備えていることを如実に示している。

色再現性や表現領域の拡張といった面でも優れているが、現場で長年切望されてきた出力帯と可搬性を、極めて高い完成度でまとめ上げた点にこそ本機の本質がある。編集部では、STORM 400xを「2025年の制作現場で最も高い使用頻度が想定される中核機」と位置づけ、その堅実な完成度と優れた現場適応力を高く評価し、シルバー賞に選定した。