2025コンセプト:銀幕の「国宝」に捧ぐ、技術の「花道」——PRONEWS AWARD 2025 開幕に寄せて
数字では測れない価値。成熟した市場で「代えのきかない存在」を見極める
PRONEWS AWARD 2025の各部門の発表を終え、いよいよ大賞の選出結果を報告する。
発表に先立ち、今回のAWARDを通じて編集部が感じた、現在の映像業界の状況を振り返っておきたい。
2025年の機材を全体的に見渡すと、一つの事実が浮かび上がる。それは、スペックの数字だけでは、もはや機材の良し悪しを判断できなくなったということだ。
高解像度や広いダイナミックレンジ、RAW記録、オートフォーカス性能などは、今やどの機材も高い次元にある。機材全体の完成度が上がった結果、かつてないほど評価を下すのが難しい状況となった。
そこで編集部が重視したのは、その機材が現場でどれだけ「なくてはならない存在か」という点だ。単に便利なだけのツールではなく、実務の核となる機材であることを基準としたのである。
役割が細分化された現在の制作環境では、こうした実用性を抜きに機材を正しく評価することはできない。「実際の現場で本当に役立つものはどれか」という視点を徹底したが、どの製品も非常に高性能なため、選考作業は困難を極めた。
今回のAWARDを通して見えてきたのは、映像機材が「何ができるか」という段階を超え、「いかに仕事の工程(ワークフロー)をスムーズに成立させるか」を問われる段階に入ったという事実だ。
選出に困難を極めたのは、基準が曖昧だからではない。どの機材も十分に成熟しており、簡単に優劣をつけられなくなったからである。
こうした状況の中で、編集部は一つの結論を出した。
PRONEWS AWARD 2025 大賞
ニコン「ZR」

2025年のPRONEWS AWARDにおいて、評価に迷いがなかったわけではない。しかし最終的に、グランプリとして選ぶべき一台はニコン「ZR」だという結論にいたった。
編集部がニコン「ZR」を「PRONEWS AWARD 2025」大賞に選出した理由は、多くの機材が似通ってきた現在の市場において、本機だけが「映像機材が次にどこへ向かうべきか」という明確な方向性を提示していたからである。
2025年現在、映像機材の性能向上はすでに成熟期を迎えている。高解像度、強力な手ブレ補正、RAW記録といった要素は、もはや特別なアドバンテージではなく、備わっていて当然の前提条件となった。数値上のスペックだけで差別化を図ることは、極めて難しい状況にある。
その中でZRが際立っていたのは、単に多機能であるからではない。従来、明確に分けられてきたシネマカメラと、静止画主体のミラーレス機との間に存在していた境界線に対し、真正面から問いを投げかける姿勢を示した点にある。
ニコンによるRED買収を経て登場したZRは、その最初の成果として、シネマ業界の標準フォーマットである「R3D」の思想を受け継ぐ、ニコン専用仕様の「R3D NE」を実装した。高品質な内部収録を、現実的かつ手の届きやすい価格帯で実現した点は特筆すべきだ。
これは単なるスペックや技術の移植ではない。かつては一部のプロフェッショナルにのみ許された特権的なフォーマットであった「R3D」を、より多くの制作者が実務レベルで検討できる選択肢へと引き寄せたことこそ、本機の本質的な価値である。
もちろんZRは、あらゆる面で完成された優等生というわけではない。現時点では操作性や運用面において、改善の余地が残されているのも事実だ。しかし編集部が高く評価したのは、完成度の高さそのものではなく、既存の業界構造や序列を塗り替えようとする、その大胆な姿勢である。
既存の延長線上で性能を競うのではなく、新たな基準を打ち立てようとする挑戦的なアプローチは、2025年の映像業界に確かなインパクトを与えた。
多くの候補機が「より良い選択肢」であることを目指す中、ZRは「選び方そのもの」を変革した存在と言える。横並びのスペック比較を無効化し、手の届く価格帯でプロフェッショナル仕様の映像制作を可能にした点は、映像制作の未来を大きく押し広げる一歩となった。
機材全体の高性能化により評価が難しかった2025年において、ZRは大賞にふさわしい圧倒的な存在感を示した。それは製品としての完成度の高さだけによるものではなく、これからの映像制作のあり方を最も強く想像させてくれた一台だったからだ。
以上の理由から、編集部はニコン「ZR」をPRONEWS AWARD 2025の大賞に選出した。