PronewsAward_VOL04-top

2025コンセプト:銀幕の「国宝」に捧ぐ、技術の「花道」——PRONEWS AWARD 2025 開幕に寄せて

2025年の一脚・三脚・ジンバル新製品を見渡すと、従来の延長線上では捉えきれない変化が、いくつかの製品に共通して現れ始めている。セッティングに要する操作数を減らす工夫、用途をまたいだ機材構成を前提とする設計、さらには片手操作を想定したインターフェースの再構築など、従来は所作として受け入れられてきた工程そのものに手が加えられている。

まず、放送・中継現場の"基準"を作ってきた三脚メーカーVintenの新製品「Versine 240」を取り上げたい。業界標準として知られるVersine 240は、高耐荷重化が進むフルードヘッド市場において、「耐荷重0kgから25kg」という守備範囲の広さや機動力との両立を意識した仕様が見られ、現場での運用を想定した構成が確認できる。重装備化が進む現場において、扱いやすさを意識した選択肢の一つとして受け止められる。

    Versine 240
Versine 240
※画像をクリックして拡大

こうした潮流のなか、今年の三脚分野において、独自の設計思想に基づいた製品を展開したのが平和精機工業/Libecである。

国内メーカーから選出された「QL40C」は、三脚という成熟したカテゴリーにありながら、カーボン素材の採用により軽量化と高耐荷重を高い次元で両立させた。セッティングの迅速化と運用効率の向上を主眼に置いたその設計は、まさに現代の撮影現場が求める機動力を体現している。

一方、同社の「TK-210C」は、いわゆるベビー三脚という枠組みながら、低位置対応と高耐荷重を兼ね備えたモデルだ。メインシステムを盤石に支える用途までを想定したこの設計は、足回りの役割を拡張させるという本年度の動向を象徴する一台と言える。

Libec「QL40C」
Libec「QL40C」
※画像をクリックして拡大
Libec「TK-210C」
Libec「TK-210C」
※画像をクリックして拡大

一方で、同じ課題に対して、異なるアプローチからの回答も提示された。

Manfrotto「ONE」は、スチルと動画の両用途を一本で支えることを目的に設計された三脚システムである。撮影ジャンルの横断が常態化する現代において、足回りのハイブリッド化を意識した構成を持つ製品としてノミネートされた。

Peak Designの「PRO TRIPOD」シリーズは、携帯性を重視するトラベル三脚の文脈に、より高い剛性と動画対応力を加えたモデルである。コンパクトさと拡張性を同時に扱おうとする設計思想は、近年のサポート機材においてその構成が含まれていた。

Manfrotto ONE
Manfrotto ONE
※画像をクリックして拡大
PRO TRIPOD
PRO TRIPOD
※画像をクリックして拡大

雲台単体では、YC Onion「CEDAR CB7」がノミネートされた。低価格帯に位置づけられながら、カウンターバランス機構やドラッグ調整を備え、入門機とされてきた雲台の想定を一段引き上げる構成が採られている。

一脚分野では、操作を片手で完結させる設計思想が複数の製品に共通して見られた。

YC Onion「Pineta Pro」は、ハンドル操作による伸縮・ロック機構やフットペダルによるベース解除を備え、操作工程を簡略化する方向に配慮された構成が採用されている。ラン&ガン撮影における操作負荷の低減を意識した設計として、近年複数の製品に共通して見られる傾向と重なる。

YC Onion「CEDAR CB7」
YC Onion「CEDAR CB7」
※画像をクリックして拡大
YC Onion「Pineta Pro」
YC Onion「Pineta Pro」
※画像をクリックして拡大

SmallRigの「カーボンファイバー製一脚三脚」は、レバーを押すとロックが解除され、脚が伸びる。もう一度押し下げると折りたたむことができる。一脚分野において操作性を簡略化する動きの一例としてノミネートした。

ジンバル分野では、DJI「RS 4 Mini」がノミネートされた。ミラーレス向けジンバルにおいて、上位機種の機構を整理・再配置する方向性を示したモデルである。

YC Onion「CEDAR CB7」
SmallRig「カーボンファイバー製一脚三脚」
※画像をクリックして拡大
YC Onion「Pineta Pro」
DJI「RS 4 Mini」
※画像をクリックして拡大

■PRONEWS AWARD 2025 一脚・三脚・ジンバル部門 ファイナリスト

  • Vinten「Versine 240」
  • 平和精機工業 / Libec「QL40C」
  • 平和精機工業 / Libec「TK-210C」
  • ヴィデンダム Manfrotto「ONE」
  • Peak Design「PRO TRIPOD」
  • YC Onion「CEDAR CB7」
  • YC Onion「Pineta Pro」
  • SmallRig「カーボンファイバー製一脚三脚」
  • DJI「RS 4 Mini」

ここに挙げた製品はいずれも、本年度に見られた設計上の動きを読み取る上で、比較対象として並べられた製品群である。その評価は、ここで一度区切られた。
比較は終わり、残るのは結果だけだ。

PRONEWS AWARD 2025 三脚・サポート機材部門 ゴールド賞

平和精機工業(Libec)「QL40C」

PronewsAward_VOL04-09-GOLDRxlQO2RF

いずれも、今年の撮影現場における課題と向き合い、それぞれの答えを提示した製品である。ここからは、編集部の評価が確定した受賞製品を発表する。

まず、ゴールド賞に輝いたのは平和精機工業 / Libecの「QL40C」だ。

今年のInter BEE 2025、平和精機工業 / Libecブースでこの新型三脚を目にした瞬間、思わず唸ってしまった。昨年のInter BEEで発表されたアルミ製モデル「QL40B」のコンセプトを継承しつつ、素材をカーボンに変更して軽量化を図ったモデルだということは事前に聞いていた。しかし、実機に触れ、その仕様詳細を確認してみると、単なる「素材違いの軽量版」などという安易な製品ではないことがすぐに理解できたからだ。
本年度のゴールド賞に迷いはなかった。

数あるノミネート製品の中で、QL40Cは「セッティングの迅速化」という今年最大の課題に、最も実践的かつ完成度の高い回答を提示していたからだ。

驚かされたのは、その潔い仕様変更だ。通常、こうした派生モデルはスペックを維持しようとするものだが、QL40Cはアルミモデルと比較して最大高を約180cmから約151cmへと、大胆にも約30cm下げているのである。一見するとスペックダウンにも思えるこの変更だが、ここにこそLibecの現場に対する深い洞察があると感じた。最大高を抑えた代わりに、最低高は38.5cmまで下げることが可能になっており、ローアングルへの適応力が劇的に向上しているのだ。スライダーやヘッド、カメラを積載しても位置が高くなりすぎず、卓上の被写体を狙う際など、あと数センチの低さが欲しい場面で抜群の安定感を提供する。制作現場の実情を知り尽くしていなければ、この割り切った設計はできないだろう。

もちろん、カーボン素材の恩恵による約500gの軽量化も、機動力を重視する現場では計り知れないメリットだ。そして、特に評価したいのは、アルミモデルから引き継がれた「フリップロック式」の脚部ロック機構である。一つのロックを操作するだけで脚全体の伸縮固定と解除が一瞬で行えるこの構造は、一度体験すると元には戻れないほどの快適さがある。現場でのセッティング時間を秒単位で短縮できるこの機能は、ワンマンオペレーションが増える現代の映像制作において最強の武器となるはずだ。

さらに、持ち運び用のハンドルが標準装備されている点や、3/8インチおよび1/4インチのネジ穴を備えたアクセサリーポートによりモニターやライトを直接拡張できる点など、細部にいたるまで「使い勝手」への配慮が行き届いていることにも感心した。メンテナンスフリーを基本としつつ、必要があればユーザー自身で整備できる設計思想も、長く道具を愛用したいプロフェッショナルにとって非常に心強い。HSシリーズやNXシリーズとのシステム販売だけでなく、三脚単体での導入も可能という柔軟さも嬉しいポイントだ。単に軽くなっただけではなく、撮影スタイルそのものをより低く、より自由に拡張してくれる「QL40C」。その現場視点に立った進化の姿勢に、単なる軽量化や派生モデルではなく、現場のワークフローそのものを更新した点において、QL40Cは2025年の撮影現場を象徴する存在であった。

PRONEWS AWARD 2025 三脚・サポート機材部門 シルバー賞

ヴィデンダムメディアソリューションズ「Manfrotto ONE」

PronewsAward_VOL04-10-SilverOYU62clO

続いて、シルバー賞に選出したのはヴィデンダムメディアソリューションズの「Manfrotto ONE」だ。

Manfrotto ONEは、長年クリエイターを悩ませてきた課題に対して、極めて完成度の高い解を示した製品である。

スチルと動画をまたぐ撮影スタイルが当たり前になった現在、その足回りに求められていた条件を、本機は構造のレベルから整理し直した。

その背景には、「スチル用三脚か、ビデオ用三脚か」という選択が、長年現場で先送りされてきたという事情がある。この製品の全容を知ったとき、単なる新製品の発表という枠を超え、ハイブリッドシューティングの時代における「足回り」の革命がついに起きたのだと直感した。

まず驚かされたのは、そのコンセプトの徹底ぶりだ。写真と動画を一台のカメラでこなす現代のクリエイターにとって、機材の持ち替えやセッティング変更は最大のストレス要因である。しかし、Manfrotto ONEは、スチル三脚に求められる「曲げ剛性」と、ビデオ三脚に不可欠な「ねじれ耐性」を、独自の非円形チューブを採用することで一本の脚に統合してしまった。実際に触れてみると、写真撮影時のシャープな安定性と、動画撮影時の滑らかなパン操作を支える強靭さが同居していることに驚嘆する。

さらに、現場での実用性を極限まで高める高速セットアップの「XTEND機構」の搭載も見逃せない。脚のすべての段をワンアクションで展開できるこの仕組みは、セットアップ時間を劇的に短縮する。一分一秒を争う撮影現場において、機材の展開に時間を取られないことは、すなわちクリエイティブな時間に直結する。

そして、今回最も興味深いと感じたのが、新開発の「Xchangeクイックリリースシステム」である。雲台やスライダーを数秒で付け替えられるこのモジュール性は、機材構成を流動的に変える現代のワークフローに見事に合致している。ロック機構による安全性を確保しつつ、撮影スタイルに応じて瞬時にシステムを変更できる柔軟性は、一度体験すると手放せないものになるだろう。
このシステムの中核を担うXchangeシステム互換の「500X フルード雲台」の設計思想も秀逸だ。横位置と縦位置を瞬時に切り替えられる機能を備えており、昨今のソーシャルメディア向け縦型動画の需要を完璧に捉えている。耐荷重5kgのフルードシステムを維持しながら、ポートレート撮影からリール動画へとシームレスに移行できる点は、まさに「今」求められている機能だと言える。

アルミとカーボンの2モデル展開や、90°センターポールによるローアングル対応など、隙のないラインナップ構成も評価に値する。スチルとムービーの境界線をハードウェアの側面から完全に消し去り、クリエイターを機材の制約から解放した本機は、スチルとムービーの境界を現場レベルで溶かした。その設計は、「どちらかを選ぶ」という行為そのものを不要にした。結果として、足回りに求められてきた長年の迷いに、一つの整理を与えた存在である。