2025コンセプト:銀幕の「国宝」に捧ぐ、技術の「花道」——PRONEWS AWARD 2025 開幕に寄せて
2025年、カメラモニターは「見る装置」から「制御する装置」へ
2025年のカメラモニターおよび映像伝送分野を俯瞰すると、単なる高輝度化や解像度競争の枠を超え、撮影現場のワークフローをどのように再構築するかという問いに対して、各社がそれぞれ異なる回答を示した一年であった。
モニターは、もはや映像を確認するためだけの周辺機器ではない。カメラ制御、複数台の統合管理、記録と伝送、さらにはクラウド連携やポストプロダクションへの接続までを担う存在として、その役割を大きく拡張しつつある。この変化はハイエンドの制作現場に限らず、エントリークラスやスマートフォンを活用した制作領域にまで広がった。
本年度のPRONEWS AWARD カメラモニター・映像伝送部門では、こうした潮流の中で明確な設計思想と、現場で実際に機能する実装力を示した製品群を選出した。
再構築と引き算──ATOMOSが示した二つの回答
モニター兼レコーダーというカテゴリーにおいて、2025年に明確な転換点を示したのがAtomosである。
「Ninja TX」は、外部レコーダーの存在意義が改めて問われる状況に対し、高速記録・高速転送・ネットワーク連携を前提とした設計へと刷新するという方向性を示した。一方で「Shinobi GO」は、高機能化が進む市場に対し、あえて機能を限定することで高輝度モニターとしての本質的価値を明確にするアプローチを採っている。
この二機種は、Atomosというブランドが2025年に提示した「再構築」と「引き算」という二つの思想を、それぞれ異なる形で体現する存在であった。
制御を武器にする──Portkeysの実装力
「カメラコントロール」という潮流を、最も具体的かつ実践的に製品へ落とし込んだ存在がPortkeysである。
「LS7P」は、モニターを単なる表示装置から、撮影システム全体の操作を集約する端末へと進化させた。対応するカメラにおいては、ワイヤレス接続によるタッチ操作を用いたフォーカス制御や設定変更が可能であり、マルチカメラ運用やワンマンオペレーションの現場において、実用的な効率化をもたらしている。
また「PT5 III」は、低価格・軽量クラスでありながら、現場で必要とされる機能を過不足なく備え、コストパフォーマンスの基準を一段引き上げた点が評価された。
ワイヤレスと記録の融合──Accsoonの実用解
ワイヤレス伝送とモニターを一体化する動きも、2025年に成熟が進んだ分野である。
Accsoon「CineView M7 Pro」は、送受信機能を内蔵した設計により、従来必要だった外付け機器や煩雑な配線を簡素化するとともに、記録やクラウド連携までを視野に入れた「スマートモニター」という実用的な選択肢を提示した。ケーブルレス運用を前提としながら、撮影後の共有やバックアップまでを一貫して扱える点は、現場志向の完成度が高い。
※画像をクリックして拡大
ハイエンドの別解──SmallHDが示す安定した基準
SmallHDは、新型10インチモニター「Ultra 10」において、ハイエンドモニターとしての完成度をさらに高めた。
派手な機能競争に踏み込むことなく、表示品質、操作性、信頼性を着実に磨き上げる姿勢は一貫しており、「確実に使えること」を重視するハイエンドの基準点としての立ち位置を改めて示した存在といえる。
※画像をクリックして拡大
スマートフォンは「代用品」ではなくなった
本年特筆すべきもう一つの流れが、スマートフォンを前提とした制作ソリューションの成熟である。
Accsoon「SeeMo 4K HDMIアダプター(Android対応)」やHollyland「Vcore」は、スマートフォンを単なる簡易モニターとしてではなく、現場で通用する制作・記録デバイスとして活用する道筋を示した。特にVcoreは、条件付きながらProRes収録を可能とし、ポストプロダクションまでを見据えたワークフローへの接続を現実的なものとしている。
カテゴリーの境界を溶かす試み
さらに、厳密にはモニター部門の枠を超えるが、「Blackmagic Camera ProDock」も2025年の動向を語るうえで欠かせない存在である。
iPhoneを、ゲンロックやタイムコードを備えたプロフェッショナルな撮影システムの一部として組み込むという発想は、カメラ、モニター、周辺機器の境界を意図的に曖昧にする試みであり、今後の制作環境を考えるうえで示唆に富む。
※画像をクリックして拡大
- Atomos「Ninja TX」
- Atomos「Shinobi GO」
- Portkeys「LS7P」
- Portkeys「PT5 III」
- Accsoon「CineView M7 Pro」
- SmallHD「Ultra 10」
- Accsoon「SeeMo 4K HDMIアダプター」
- Hollyland「Vcore」
- Blackmagic Design「Blackmagic Camera ProDock」
以上がカメラモニター・映像伝送部門のノミネート製品となる。
PRONEWS AWARD 2025:カメラモニター・映像伝送部門 ゴールド賞
ゴールド賞に選出したのは、Atomos「Ninja TX」である。
カメラ内部でのRAW収録が一般化する中、本機が採用したCFexpress Type B対応と高輝度パネルの組み合わせは、高解像度・大容量データを前提とする現代の制作環境において、実務的な価値が高いと判断した。
特に評価したのは、長年続いたSATAベースの設計から脱却し、将来的な拡張を見据えたアーキテクチャ刷新に踏み込んだ点である。すべてのニーズを満たす製品ではないが、停滞感のあったモニターレコーダー市場に対し、次の方向性を明確に示した意義を評価し、ゴールド賞とした。
PRONEWS AWARD 2025 カメラモニター・映像伝送部門 シルバー賞
シルバー賞には、Portkeys「LS7P」を選出した。
長らくSmallHDが基準を築いてきたハイエンドモニター市場に対し、LS7Pはワイヤレスによるカメラコントロールという明確な切り口を提示した。対応するソニーやキヤノンの一部シネマカメラにおいて、タッチ操作によるフォーカス制御などをケーブルレスで行える点は、ワンマンオペレーションを主体とする現代の制作現場において高い実用性を持つ。
また、限定的ながらARRI製カメラのREC操作や基本設定に対応している点からも、従来の勢力図に挑もうとするメーカーの意志が感じられる。独自の露出管理ツール「Log Stops」も含め、モニターを単なる映像確認装置から操作の中心へと押し上げようとする姿勢と実装力を評価し、シルバー賞とした。
2025年のカメラモニター・映像伝送分野は、単なるスペック競争ではなく、現場の自由度と効率をどのように高めるかという本質的な問いに対する、多様な回答が出揃った一年であった。本部門の選出製品群は、その転換点を記録する存在である。