BIRTV 2026のキヤノンブースに入って最初に感じたのは、単に新製品を並べるのではなく、中国市場で求められている映像制作のスタイルを意識した展示になっていることだ。リアリティショー、ショートドラマ、ライブストリーミング、バーチャルプロダクションなど、それぞれ具体的な撮影シーンを想定した形でカメラやシステムが配置されていた。
中国ではリアリティショーやショートドラマなどの制作が活発で、コロナ禍以降はライブストリーミング市場も伸びている。
こうした市場に向け、キヤノンはCINEMA EOSシリーズを中心に、シネマサーボレンズやRFレンズを組み合わせたリアリティショー撮影ソリューションを提案している。ブースではEOS C80やEOS C50、ジブアームに搭載したEOS C400などを用途に応じて組み合わせ、マルチカメラ撮影や共同制作を想定した構成を紹介していた。
今回のブースも、製品単体の機能を紹介するというより、それらを中国の映像制作現場でどう使うのかを見せる構成が中心となっていた。
特に奥のエリアで目を引いたのが、中国の伝統芸能とバーチャルプロダクションを組み合わせた展示である。これは単なる技術デモではなく、キヤノンがBIRTV 2026で正式発表した舞台芸術団体向けのバーチャルライブストリーミングソリューションを紹介するものだ。EOS C400とバーチャルプロダクションシステムを組み合わせ、バーチャルシーンの制作からリアルタイム配信までをカバーする。
話を聞くと、伝統芸能の分野では劇場へ足を運ぶ観客が減少する一方、ライブ配信へのニーズが生まれているという。ただ劇場の演目をそのまま映像化するのではなく、テレビや配信で見たときの表現も考える必要がある。そこで背景や演出を映像向けに構築できるバーチャルプロダクションを活用し、劇場とは異なる見せ方を作ろうというわけだ。
キヤノン中国の発表によると、このソリューションはバーチャルシーンの設計からリアルタイムの映像出力までを含む構成で、舞台芸術団体が継続的にオンライン公演を行うための「クラウドシアター」の構築も想定している。
この取り組みでは、中国東方演芸集団がパートナーとして参加し、BIRTV 2026で共同公演を実施した。実際の撮影にはCinema EOS Systemの「EOS C400」が使われ、カメラをアームに取り付け、バーチャル背景と出演者を組み合わせて撮影する様子を見ることができた。技術だけを説明するのではなく、伝統芸能という具体的な用途まで落とし込んでいるのが今回の展示の特徴である。
BIRTVでのキヤノン展示は、NAB Showなどとは少し方向性が違うように感じた。NABでは新製品や新技術そのものが前面に出ることも多いが、BIRTVでは「中国でどう使うか」を具体的な撮影シーンとして見せている。その違いはブースを歩いているとかなり分かりやすい。
もちろん、新しい映像制作機材も展示されている。ブース内を進むと目に入ったのが、シネマサーボレンズ「CN30×40 IAS J」だ。2026年4月に発表されたモデルで、40mmから1200mmまでをカバーする30倍ズームを実現。BIRTV 2026では中国初公開となった。
シリーズ最長となる1200mmの超望遠域と、シリーズ最高となる30倍ズームを両立したモデルで、スポーツ中継やコンサート、野生動物など遠距離からの撮影を想定する。全長と重量は、従来の20倍ズームモデル「CN20×50 IAS H」とほぼ同等に抑えられているという。
実物を前にすると、やはり40-1200mmという焦点距離には目が行く。展示ではEOS C400や周辺機器と組み合わせたシステムとしてセットアップされており、スポーツ中継やコンサート、遠距離からの撮影などでの運用をイメージしやすかった。
もうひとつ、BIRTV会場を歩いていて強く感じたのが縦位置映像の多さである。これはキヤノンブースだけではなく、今回の会場全体で目についた。モニターを縦に設置する展示や、カメラ自体を縦位置に組んだシステムもあり、筆者がこれまで見てきた日本や欧米の展示会と比べても、縦位置を意識した提案が多い印象を受けた。

キヤノンブースにも「电影|短剧拍摄(映画|ショートドラマ撮影)」を掲げたコーナーがあり、EOS C400などを使った撮影システムを展示していた。中国で存在感を高めているショートドラマをはじめ、スマートフォンで視聴されるコンテンツまで具体的な用途を意識した展示である。
リアリティショー、伝統芸能のバーチャルライブストリーミング、CN30×40 IAS J、そしてショートドラマ。扱う分野は異なるが、今回の展示に共通していたのは、「その機材で何を作るのか」を具体的な撮影シーンから見せていたことだ。
BIRTV 2026のキヤノンブースは、新製品やスペックだけを前面に出すのではなく、中国で実際に制作されているコンテンツに合わせてカメラ、レンズ、システムを組み合わせていた。ブースを一周すると、中国の映像市場がどの方向へ動いているのかまで見えてくるような展示だった。