中国ブランドの放送・映像機材は、もはやコストパフォーマンスの高さだけを売りにする存在ではない。BIRTV 2026には、三脚、光学アクセサリー、モニター、カメラクレーンまで、現場の運用を意識した製品が数多く並んでいた。本稿では、会場で目に留まった5つのブースを紹介する。

TERIS、小型雲台から見えた「現場で使いやすい三脚」の進化

最初に訪れたのはTERISのブースである。日本ではSachtlerやVinten、Libecほど名前を聞く機会は多くないが、BIRTVでは各社のカメラ展示でもTERISの三脚を見かけることがあり、中国市場で存在感を持つブランドのひとつだ。

まず目に留まったのは、新しい小型フルード雲台「TS-N6 Mini」だった。会場配布カタログによれば、雲台単体の重量は1.44kgで最大6kgに対応し、6段階のカウンターバランスと4段階のドラッグ調整を備える。単に従来製品を小さくしただけではなく、小型カメラによる撮影を意識した仕様である。

TS-N6 Miniは、TERISが新たに開発した小型フルード雲台で、コンパクトな筐体にカウンターバランスやドラッグ調整などの機構を備える
フラットベースとして使用できる点も特徴だ。ボール式とは異なり、取り付け先にネジ穴があれば、スライダーなどの機材へ直接固定できる。ネジで取り付ける構造のため応用範囲が広く、三脚以外の撮影機材にも組み込みやすい

75mmボールに対応し、カメラプレートのスライド量は7cm。同カタログではソニーFX3、FX5、FX6、PXW-Z380などへの対応例も挙げられており、小型ミラーレスカメラやシネマカメラから業務用カムコーダーまでを視野に入れた設計だ。

クイックリリース周辺にも工夫がある。新設計の2層式プレートを採用し、Manfrotto系とArca-Swiss系の規格への対応を意識しているほか、DJI Roninシリーズとの組み合わせにも配慮している。三脚だけでなく、ジンバルや各種リグへカメラを載せ替える現在の撮影スタイルを踏まえた構成だ。

雲台本体にはネジを締めるための小型工具を収納できるスペースを設け、1/4インチ、3/8インチの予備ネジも保持できる。撮影現場で工具やネジが見つからなくなる場面を減らすための仕掛けである。

TS-N6 Miniと組み合わせる三脚セットとして、会場配布カタログには「TS-N6Mini-463CF」と「TS-N6Mini-1475Q」の2モデルが掲載されている。TS-N6Mini-463CFはカーボンファイバー製で、高さ約34.5~166cm、収納長約79.5cm、脚管径46mm。脚の開脚角度は22°、48°、75°の3段階から選べる。

一方のTS-N6Mini-1475Qは、高さ約50~170cm、収納長約85cm。1つのロック操作で上下の脚ロックを連動して解除・固定できる構造を採用し、セットアップの手間を減らしている。脚を畳んだ際には磁石で脚同士をまとめられるなど、運搬時まで考えた工夫も盛り込まれていた。

担当者によれば、日本での正式な販売時期や価格は今後案内される予定だという。

ブースには長尺ジブアーム向けの専用ヘッドも展示されていた。一般的な三脚用雲台を組み合わせるのではなく、ジブ用ヘッドを一体的に使用できる構造で、ヘッド部分は2本のネジで取り外せる。

担当者によれば、TERISの創業者はもともとカメラマンで、自身が現場で使いやすい三脚を求めたことが製品開発の出発点だったという。TS-N6 Miniにも、載せ替えやセットアップ、運搬まで含めて撮影現場での取り回しを考える姿勢が表れていた。

冀光光学、低価格ワイコンを実機で試してみたくなる理由

TERISが三脚の運用を見直す提案だったのに対し、続いて訪れた冀光光学では、より小さな光学アクセサリーに実用性が表れていた。大規模な展示ではないが、テーブルには業務用ビデオカメラ向けのワイドコンバージョンレンズが並んでいた。

会場で聞いた小型モデルの価格は1万円前後。画質は価格だけでは判断できないが、この価格なら実機で解像感や周辺画質を確かめてみたくなる。

特に目に留まったのが0.75倍モデルだ。担当者によれば、PXW-Z280などで使用した実績があり、アダプターを組み合わせることで別のカメラにも対応できるという。フィルター径72mmのPXW-Z200にも、必要なアダプターを使用すれば装着できる可能性がある。現時点では実機確認前であり、ケラレや周辺画質、ズーム全域での使用可否を含めた検証が必要だが、試してみたいところだ。

ブランド名は「冀光」、アルファベット表記は「JIGUANG」である。「冀」は河北省を表す略称だ。担当者によれば、同社は30年以上にわたり光学関連製品に携わり、以前はCentury Precision Opticsなどの代理業務も手掛けていたという。

BIRTVでは最新カメラや大型レンズに目を奪われがちだが、こうした小さなブースから実用的なアクセサリーを見つけられるのも面白い。冀光光学の0.75倍モデルがPXW-Z200でどこまで使えるのか、実機で検証してみたくなる展示だった。

DESVIEW、24インチクラスの4Kモニターを会場特価5,200元で販売

モニター関連で目を引いたのがDESVIEWの23.8インチ4Kモニター「D24-HDR」だった。オンカメラモニターだけでなく、制作・監視用途を想定した大型モデルまで展開する同社の業務用モニターである。

D24-HDRは3840×2160の4K表示に対応し、SDI入出力も備える。会場で価格を聞くと、通常7,800元のところ、BIRTV会場特価は5,200元。1元=約23.8円で換算すると約12万4,000円となる。その場で購入し、持ち帰ることもできるという。23.8インチ、4K、SDI対応という条件で、この価格は目を引く。

同時に印象に残ったのが、会場で製品を即売していた点だ。近年は海外メーカーが自社オンラインストアやAmazonなどを通じて直接販売する例が増え、レビュー動画などを確認してそのまま購入するケースも珍しくない。業務用途では導入前の検証やアフターサポートを含めて代理店や販売店の役割は依然として大きいが、オンライン販売やイベントで直接購入する選択肢も広がっている。DESVIEWの展示は、製品価格だけでなく、映像機器の買い方の変化も感じさせるものだった。

RUIGE、縦型ショートドラマ向け「AT133HR-3」。3画面を1台に集約

D24-HDRが画面サイズと価格で目を引いたのに対し、同じモニターでも異なる方向性を示していたのがRUIGEである。今回展示していたのは、縦型コンテンツの制作現場を意識した「Eagle Series No.3 AT133HR-3」だ。

一見すると縦長の大型モニターだが、実際には13.3インチ、1080×1920の画面を3枚組み合わせた構成で、それぞれ独立した映像を表示できる。3台のカメラで縦型コンテンツを撮影する場合も、3系統の映像をひとつの筐体で同時に確認できる。

担当者によれば、もともとはショートドラマ制作を想定して開発した製品だという。複数の縦型モニターを並べる場合と比べて設置スペースやケーブルを減らせるため、机のスペースが限られた撮影現場でもシステムを整理しやすい。

映像入力は3系統の3G/HD/SD-SDIに対応し、HDMI入力も3系統の構成が用意される。会場では本体を横方向に使い、複数の映像やYouTube、チャット画面などを並べる使用例も紹介されていた。ショートドラマだけでなく、配信や複数ソースのモニタリングにも応用できそうだ。

価格も、3台のフルHDモニターを別々に用意する場合より抑えることを意識している。担当者によれば、一般的なフルHDモニター1台の1.5倍未満となる価格設定を想定しているという。

もうひとつの特徴が、高速測光機能である。画面内の露出状態を短時間で判定し、露出不足や適正露出、露出過多の範囲を視覚的に確認できる。複雑な照明環境や、短時間でセッティングを決めたい撮影で露出判断を補助する機能だ。

左画面にはセーフエリアを重ねた入力映像を表示。右画面では露出判定機能を有効にし、紫を露出不足、黒を適正露出、白を露出過多として表示するとともに、波形モニターで輝度分布を確認している

担当者によれば、RUIGEはユーザーが現場で感じる不便を製品設計へ反映してきたという。ケーブルの抜けにくさや周辺機器の取り付け、デスクトップでの設置性など、実際の運用を踏まえて細部を設計している。

RUIGEは1994年に創業し、その後プロ用LCDモニターの開発へ進出した。現在は洛陽に生産拠点、深圳にR&Dセンター、北京にセールス拠点を置く。

縦型動画を従来の横型制作環境へ無理に当てはめるのではなく、最初から縦型撮影を前提にモニターを設計する。AT133HR-3は、ショートドラマをはじめとするコンテンツの変化が、撮影機材そのものの形にも影響していることを示す展示だった。

ST VIDEO、伸縮式カメラクレーンにも小型・軽量化の波

こうした現場発想は、小型アクセサリーやモニターだけにとどまらない。最後に訪れたST VIDEOのブースでは、撮影中にアーム長を変えられる伸縮式カメラクレーンが目に留まった。今回のBIRTVでは同様の機構を持つクレーンを複数社で見かけており、ひとつのトレンドになりつつある。

従来のカメラクレーンは、大型のアームとリモートヘッドを複数人で組み立てる大掛かりなシステムという印象が強かった。しかし、カメラやジンバルの軽量化に合わせて、DJI Ronin 4Dのような比較的軽量な撮影システムを想定した小型モデルも登場している。

伸縮式のメリットは、撮影中にアームそのものを伸ばしたり縮めたりできることだ。上下左右の動きに加えてカメラを被写体へ近づけたり遠ざけたりできるため、固定長のクレーンとは異なる軌道を作れる。

実際に展示機を触らせてもらった。少人数で気軽に扱える規模ではないが、アームを伸ばすと可動範囲の大きさがよく分かる。会場では安全のため途中までの操作に留めたものの、撮影しながらアーム長を変えられることが、このタイプのクレーンの大きな特徴だ。

一方、小型化したとはいえ運搬は容易ではない。展示機は一般的なワンボックスカーへ気軽に積み込めるサイズではなく、車両やスタッフを含めた運用を考える必要がある。

担当者によれば、一般的な同クラス製品の価格は1万~1万5,000ドル程度がひとつの目安で、中国メーカー製には100万円台前半を視野に入れられる製品も登場しているという。

ST VIDEOは、標準的な電動伸縮式カメラクレーン「ANDY CRANE」や、小型・軽量化を図った「Andy Telescopic Lite」などを展開している。こうした大型撮影機材にも、小型化と低価格化の流れが及んでいる。

今回取り上げた5社に共通していたのは、価格だけでなく、設置、載せ替え、運搬、制作フォーマットといった現場の課題から製品を考えている点だ。BIRTV 2026では、その変化が小型アクセサリーからモニター、カメラクレーンのような大型設備にまで広がっていることが見えてきた。