MARK IS みなとみらいの地上にあるエントランス
今年の6月に、横浜みなとみらい地区にオープンした大型商業施設である「MARK IS みなとみらい」に遅ればせながら行ってきました。地上6階、地下4階建て、延べ床面積4万3000平米で、みなとみらい地区の商業施設としては最大級とのことです。いわゆるショッピングモールとしてのMARK IS みなとみらいに対する私の感想は、建物の構造はとてもシンプルで、六本木ヒルズのようなあえて迷路のようにしているということはない、スクエアな構造です。テナントのジャンルや傾向としては、どちらかと言うとナチュラル系、アウトドア系が多く出店している感じで、50歳くらいまでの女性がメインターゲットと思われます。
MARK IS みなとみらいのデジタルサイネージに思う
大空間に比較してディスプレイが小さい
アクセスはみなとみらい駅と地下4階で直結していますが、JR桜木町駅まではランドマークプラザを経由して歩いて8分くらいかかります。更にこのルートは、ランドマークプラザとは直結しておらず、いったん公道に出て、屋根のない横断歩道を渡る必要があります。そのために、主たる流入動線は地下のみなとみらい駅からになっているようです。
アナログとデジタルのサインが離れている
デジタルサイネージについては、面数はそれなりに設置されていますが、正直目立ちませんし、見られている感じもしません。これにはいくつか原因があると思います。まず、広大な空間に対して設置されている画面サイズや台数が不足しているために、視界の中で認識されにくくなっています。またデジタルではない館内案内図の設置場所や表現方法などのサイン計画がどうもチグハグです。
フロアマップだが、店名リストはこの裏面に表示されているので不便
写真のようにアナログとデジタルのサインが微妙に離れた位置にあるので、どちらにとっても使いにくいものになっています。アナログの案内板も、店名リストがある面とフロアマップがある面が裏表になってしまっているので、店名がわかっても場所がわからず、場所がわかっても内容がわからないといった状態です。
設置場所も、エスカレーター動線に対して背を向けていたり、防火扉の影に隠れて見えにくい場所にあったり、全体としてデジタル・アナログ含めて、サインを重視していないのではないかと感じざるを得ません。
下りエスカレーターの天吊りモニターはかなり低い
ユニークなのは、エスカレーターの上に天吊りされたディスプレイが、一般的な設置よりもかなり低いところまで降りているために、非常に目立ちます。ただしこれも主に2箇所あるエスカレーターのうち一箇所の、下り側だけにしか設置されていないので、館内移動をしていてもこれを見ようという意識が起こりにくくなっています。これをやるなら上り下り全部に、できれば数台ずつ設置して初めて効果が出ると思います。
デジタルサイネージ、肝心のコンテンツは?
テンプレートによるテナント案内画面の横バージョン
肝心のコンテンツはどうなっているのでしょう。これもどうも現場での視聴状況を考慮されていない、机上で考えられたものといった印象が強く、とにかく文字が小さいのです。せっかくデザイン性が高く作られているのですが、実際の視聴環境ではどのディスプレイにおいても情報を理解することができません。仮にこのコンテンツを利用する場合は、80インチ以上のモニターでないと歩きながらの認識は難しいのではないかと思います。コンテンツ内容を全て把握したわけではありませんが、テナントの情報をテンプレートにはめ込んで、順番に表示しているようです。縦横それぞれのテンプレートがありますがこれは配置を変えただけで基本は同じものです。ここにテナントからの文字原稿を流し込んでいます。この手法自体は悪くないと思うのですが、それ以外のコンテンツがなく、ぱっと見た感じでは中身が変わったことを意識しないと思います。
縦バージョン
テナント側からは制作側が期待するような素材やデータがいつも上がってくるとは限りません。そんな中で、写真と文字は比較的簡単です。写真と文字を利用して、まずは目を引く工夫をするのがいいと思います。そしてテナントの満足度を上げることはちょっとした工夫ですぐできることばかりだと思うのですが。ハードウェアの追加や変更をしなくても、コンテンツの表現を変えるだけで、MARK ISのサイネージは劇的に良くなると思います。
開業後4ヶ月近く経過してもこのまま運用されているのは、ひょっとしてサイン系を重視していないのではないかと思ってしまいます。デジタルサイネージにも愛情を注いでやるべきです。決して環境が悪いわけではないので、工夫次第で開花する事例ではないかと思います。