ジャパンモビリティーショー(JMS2025)が、10月30日〜11月9日まで、東京ビッグサイトにて開催されている。テーマとして「モビリティの未来/カルチャー/創造」を掲げており、単なる車の展示だけでなく、技術・サービス・産業横断で「体験」「共創」の場と位置づけられている。その中で、デジタルサイネージ/大型ディスプレイは「体験価値を高める演出」「没入型空間」「ブースのアイキャッチ化」「来場者誘引・情報提示」のキー要素になっている。
今回はJMS2025における各メーカーのデジタルサイネージ関連の状況を中心に紹介する。紹介は順不同である。
マツダ
マツダ ビジョンX 展示スペースに大型のLEDディスプレイを設置。コンテンツはイメージ映像。
三菱
背景壁面に大型LEDディスプレイを1面設置。
トヨタ
広大なブースの壁面全部に、超横長にLEDディスプレイを設置した。設置は平面ではなく曲面が構成されていて、変化をつけている。この超横長のキャンバスを5、6面に使い分けていた。広大なブース空間には車とLEDディスプレイしかないといった印象である。
センチュリー
新型センチュリーは、トヨタとは独立したブースを展開。車両の背景に大型のLEDディスプレイを曲面を付け、さらに上部は異型処理されている。表示コンテンツはブランドイメージと共通のオレンジ色のCGによる動画である。何らかの情報を表示するのではなく、完全に変化する背景と割り切った内容である。
レクサス
レクサスも独立ブースを展開。壁面全体に大型のLEDディスプレイを設置。面数で言えば1面。表示コンテンツは様々なイメージ映像である。
ダイハツ
背景に大型LEDディスプレイ、天井部リング状のLEDディスプレイを設置。リングLEDは動くサインとして利用。
ホンダ
大中小のLEDディスプレイを背面に設置。車両の横に各車両の説明の自立型LCDディスプレーを配置。ホンダブースではサステナブルなロケットの実機の展示があった。
ホンダのサスティナブルロケット
スズキ
背景壁面に大型LEDディスプレイを1面と天井にリング上のLED。ダイハツと同じ構成。
BMW
背景壁面にL字の大型LEDディスプレイを1面設置。
Mercedes-Benz
背景に中型のLEDディスプレイを配置。メルセデス・ベンツ ビジョンVでは車内エンターテインメントを提供する。運転席エリアと乗車エリアとを可動式の大型OLEDディスプレイで仕切ることができる。映画やゲームを楽しむという提案で、オーディオ装置とシートもそのために考慮されている。
BYD
背景壁面に中型LEDディスプレイを1面設置。
いすゞ
「みんなの未来バス」では、「うごく美術館」「うごくオフィス」「うごく旅館」の3つの未来を提示した。これは実車ベースではなくコンセプトプレゼンである。
三菱ふそう
ブース上部にシースルーの大型LEDディスプレイーを設置し、主にブランド名などのモーショングラフィックスを表示した。
シースルーにすることで、時々画面表示がない時に空間を広く感じさせ、全面LEDよりは圧迫感がない表示になっていた。本来シースルーは向こう側が透けて見えて、そこに何らかの意味があることが最大のメリットだが、FUSOブースは必ずしもそうである必要はないことを感じられた。
ヤマハ
背景壁面に大型LEDディスプレイを1面、その周辺に縦長の両面LEDディスプレイを6台設置した。表示はそれぞれが独立したコンテンツを表示する時と、ブース全体を一つのキャンバスに見立てて空間演出に利用していた。
AGC
透明マイクロLEDを封入したサイドウインドウを展示した。またプラスティック光ファイバー「FONTEX」は、ガラスではなくフッ素型の樹脂を使用した光ファイバーケーブルで、25Gbpsの高速伝送が可能。曲げにも強く、車内の複雑な配線設計に適している。映像制作現場でも使えそうだが、現時点では伝送可能な距離に関しては未確認とのこと。
まとめ
ジャパンモビリティーショーには、前回の2023年実績で112.2万人が来場した。他のイベントと比較して、車という大きなものを展示するのでブースサイズが大きく、混雑緩和のためにブース間の通路スペースもかなり広く取られている。そのため、最近の開催ではリアルなブース設営は最小限にして、LEDディスプレイを多用している傾向がある。そこで今回筆者が注目したのが、LEDディスプレイをどう使いこなすのという点である。
こうした期待に対して、目新しいLEDディスプレイの利用は少なかったのではないかと感じる。車を並べて、あとはLED映像でお茶を濁す、とまでは言わないが創意工夫の余地がまだまだ多く残されている。次回の開催に向けて、大阪・関西万博の事例なども参考にして、デジタルサイネージ関係者からの斬新な提案が出ることを期待したい。
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