Google I/O会場のサンフランシスコのモスコーンセンター受付

映像に関する大きなアップデート

2014年6月25日から26日の2日間、Gogoleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2014」が米国サンフランシスコのモスコーンセンターにて開催されました。今年は、世界85ヶ国から会場の定員いっぱいの6,000人を超える参加者を集めました。シリコンバレー近辺の開発者はもとより、インド、アフリカ、ヨーロッパ各地、アジア圏からの参加者も多くみられました。さらにネット経由でセッションを動画視聴する参加者は数百万人にも及びました。それでは、数多くの発表の中から、映像関連の話題をピックアップしてお伝えします。

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基調講演会場への入場を待つ人々

新たなセットトップボックスAndroid TVの登場

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Android TV筐体。微妙にカットされた形状で、設置面が浮くように作られている。10cm四方ほどの大きさ

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リビングルームを模したステージで発表されるAndroid TV

Android TVは、HDMI端子でハイビジョンテレビに接続し、各種ネットサービスを楽しむセットトップボックスです。一部の国以外では、あまり普及しなかったGoogle TVの後継で、三度目の正直、Android TVとして再登場しました。

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Android TV用のゲームコントローラ

Android TV用スマホリモコンアプリ画面

中身は、今回新しく発表のあったAndroidスマートフォン向けの新しいユーザインタフェースデザイン、Android L Developer Previewに沿ったフラットでシンプルなデザインで、テレビ向けにカスタマイズされたものが用いられています。機敏でスムーズに動き、一般的なテレビリモコンは使用せず、ゲームコントローラまたは、スマートフォン用のシンプルなリモコンアプリで操作、または音声認識機能で利用できます。


キーノートで発表の際には、英語で「2002年のアカデミー賞にノミネートされた映画は?」と自然言語での音声検索が実現していました。Android TVは映像を観るための端末でありながら、YouTubeや、Google Playにある動画コンテンツなど世界中の動画を一括して検索し、興味のある事柄を検索、YouTube、映画、ドラマ、共演者、出演作などの情報を得るというGoogleならではの「検索」を中心とした動画視聴体験に特化したデバイスであることがわかります。またゲームでのテレビ利用にも力が入っており、タブレット上のゲームアプリと対戦も実現していました。

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2002年のアカデミー賞にノミネートされた映画を音声検索で探している様子

Android TV用のアプリは、米国ではすでにオンラインビデオ視聴サービスNetflix、Huluのものなどがあり、アプリの開発はAndroidアプリと同様になるため、サービス提供者、開発者の裾野は広がります。作ったアプリはスマートフォンのアプリと同様にGoogle Playストアで公開されます。

Googleからは、TV用のデザインガイドラインが用意されています。それらの内容は、大変役立つものであり、画面から3m程離れて使うものであること、タッチパネル画面とテレビとの違い、今何が選択されているのか、常にフォーカスがあたって明確に選択されているものがわかること、画面の周辺部は見えなくなることが多いので、余裕をもって使わないことなど、一般のスマートフォンアプリ開発者では気付きにくい、テレビならではの細かい点に配慮がなされています。

Android TVのハードウェアのスペックは、最新スマートフォンと同等のものです。

  • NVIDIA Tegra 4のチップセット
  • 2GB RAM、16GBのストレージ
  • 2系統のWi-Fi、Bluetooth 4.0対応
  • 有線ネットワーク、イーサネット端子も装備
  • HDMIポートでテレビと接続

専用のゲームコントローラつきで、日本でも発売開始しているChromecastの機能も包括しています。コントローラにはAndroidスマートフォンと同様に戻るボタンや、ホームボタンがあり、スマートフォンに慣れた人には分かりやすいと思います。静音性に優れ、静かな家庭内で映画を楽しむことも考慮されているのがうれしいです。リリース時期は 2014年秋と言われ、日本での発売は未定。ASUS、RAZRなどのメーカーから発表されるもようです。

さらに、Google I/O開催後、SONYが2015年度からBRAVIAにAndroid TVを全面採用することを明らかにしました。一部のテレビ商品ではなく「全て」であることが注目され、Android TV機能の普及度が期待されます。まだ詳細なアナウンスはありませんが、SHARP、TP VisionもAndroid TVに賛同しています。

日本でも売れに売れているChromecast情報

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世界中でのChromecast増加率の説明

Chromecastが日本でも2014年5月に、税別4,200円で発売開始され、AmazonなどのオンラインECショップで常に販売上位ランキングに入っているようです。Chromecastは、パソコンや、スマートフォン、タブレット端末の対応アプリの映像をTVで見ることができるデバイスです。MiracastやAppleのAirPlayのように端末の画面をそのまま転送して表示する仕組みとは違います。

例えばスマートフォンとChromcast間での通信は、指定された動画情報だけであり、実際にはネットからChromecastが指定の動画を取り寄せて観る仕組みのため、大変スムーズな動画映像をテレビで観ることができます。

さらに先日Googleが買収したSlickLogin社の技術を使い、テレビから人間の耳には聴こえない超音波を発して、スマートフォンと接続設定、ペアリングさせる機能をこれから提供することが噂されています。また、Google純正アプリしかChromecastに対応していない現状から一歩進んで、サードパーティや一般の開発者も新しく公開されたGoogle Cast SDKにより、Chromecast対応アプリを作ることが出来るようになりました。

つまりテレビに映像を映し出したり、テレビ画面を活用したアプリを平易に作ることができ、ますますテレビを取り囲む映像と、ネットワークの環境が整ってきたことが強調されていました。

地味に機能拡充YouTube関連情報

Google I/O 2014のお祭り騒ぎの影に隠れてしまいましたが、従来30fpsであったYouTubeのHD動画モードが、48fps、60fpsに数ヶ月以内に対応することがアナウンスされました。いち早く60fps動画のプレビュー映像が公開されています。

さらに、動画クリエイターの映像制作のための小額資金援助をする方法や、クラウドソーシングで一般の人々が翻訳字幕の制作を手伝う方法が加わりました。無料で使える効果音ライブラリが追加されたり、制作時にコラボレーションしたクリエイター達のクレジットを入れやすい機能、チャンネル管理用のモバイル向けアプリ「YouTube Creator Studio」が提供され、動画コンテンツ提供者向けのサービスを拡充したり、世の中の動画コンテンツ周辺の流行や現状を素直に反映した機能が整ってきました。

段ボールで安価なVR環境。Google CardBoard

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仕組みを熟知した開発者であれば、1~2分で制作可能。段ボールVRメガネCardboard

先日安価なVR(バーチャルリアリティ)用ヘッドマウントディスプレイを提供する企業Oculusが約2000億円で買収されました。それを意識してかしないでか、Googleエンジニア有志による、段ボールで作られたVRメガネ“CardBoard”が会場内で無料配布され、大変話題になりました。

CardBoardは日本で言うところの、いわゆる「段ボール」を示す英単語です。プロダクトの試作やプロトタイプ制作に段ボールを使うのは理解できますが、このCardBoardは配布用に、量産化され、レンズや、磁石、NFCタグなど、必要な部品も同梱されています。磁石は組み立て完成したCardBoardにはめ込まれたAndroidスマートフォンに搭載された地磁気センサーを騙して、スイッチとして応用するために用意されたアイデア機能です。

コンテンツとしては、YouTubeの立体視映像、Google Earthアプリ、Google Mapsのストリートビューなど。会場で配布された段ボールの設計図、展開図はネット上にも公開され、会場で入手できなかった人も、自由に制作することができるようになっています。会場内では一番の盛り上がりを見せたとともに、VRの神髄はこんなものではない、CardBoardはチープ(貧弱)すぎるという意見もありました。新しいバージョンのOculusや、SONY製のヘッドマウントディスプレイはもっと凄い映像が観られるので、CardBoardで興味を持った人たちが、さらにVRの世界の広がりを知ってもらえると良いと考えているようです。

総括

今回のGoogle I/O 2014での内容を大きくまとめると、以下のようになります。

  • マルチプラットフォーム戦略がより強固に、家電[テレビ]、人[ヘルスケア]、車[カーナビ]、家[エアコン]にも進出
  • ライバルを牽制する印象が強くなった。Facebook、Apple、Amazonに対抗意識
  • Androidブランドを中心に、単なる技術指向ではなく、デザインやユーザー体験をより重視する傾向に
  • 未来すぎるコンセプト提示はいったん控え、堅実に必要だと思われるユーザーの要望を実現することに注力
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一人でカメラマンとレポーターを兼任する、Youtuberの自画撮りリポート風景

会場では、手に持ったCanonのセルフィー(自画撮り)対応ビデオカメラiVIS miniを用いて現地リポートするYoutuberの女性の姿も観られ、単なる検索と広告の企業と思われていたGoogleが、非常に多岐に渡って世の中の技術サービスを牽引し、世の中の情報やコンテンツを上手に扱い始めた印象を強く持ったGoogle I/O 2014でした。

WRITER PROFILE

安藤幸央

安藤幸央

無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPHをはじめ、 国内外の映像系イベントを独自の視点で紹介します。