txt:VISIONGRAPH Inc. 構成:編集部
CES2021からSXSW2021へ
毎年1月にラスベガスにて行われる世界的な見本市イベントCESでは、最新の家電や車のコンセプトモデルなど、最先端のテクノロジーと新商品が発表される事で話題になります。今年は完全オンラインでの開催となり、会場で現物を見る事ができないのは残念ではありますが、例年同様に未来感のあるワクワクするようなプロダクトの発表もありました。
そんなCESから、未来のエンターテインメントを変えていくかもしれないプロダクトの数々をピックアップしながら未来の予報をお届けします。更に、3月に開催されるSXSW Online 2021についても、内容が徐々に明らかになってきたセッションの一部をピックアップしてご紹介します。
予報01:コロナ禍で実現する夢のバーチャル共演
コロナ禍でのバーチャルコンサートの事例はこれまでもいくつか紹介してきましたが、CESで発表されたSonyのBOUNDLESSプロジェクトはさらにその可能性を広げるような試みでした。アメリカの人気アーティストMadison Beerのバーチャルコンサートでは、彼女自身ではなく彼女の精巧なアバターがパフォーマンスを行いました。
アバター自体は完全にバーチャルな存在でありながら、収録された本人の表情や動きがリアルタイムに反映されるため、アバターの裏側にリアルなアーティスト本人の存在を感じる事ができます。この技術を使えば、遠く離れた海外のアーティスト同士が同じステージ上で共演する事も可能です。
さらに言えば、アバターの裏側にいる人間は本人でなくても良いわけですから、亡くなってしまった過去の偉人や、自身の一番美しい若かりし頃の姿で登場する事もできます。
さらにSonyは360°立体音響技術もCESで発表しました。この技術も未来のバーチャルコンサートのクオリティを大きく上げる要因として期待できます。
SXSW Online 2021では、FUTURE HYBRID: HOW VIRTUALITY CHANGES LIVE MUSIC(ハイブリッドの未来:どのようにバーチャルはライブミュージックを変えることができるのか?)というテーマのセッションが予定されています。オンライン配信業者やインターネット放送局、レーベル、イベント企画会社によるパネルディスカッションで、技術のトレンドだけでなく、各方面の現場の意見を取り込んだ「バーチャルの使い方」も丁寧に議論されていくでしょう。
予報02:VRデバイスのファッションアイテム化
今年のCESでPanasonicが発表したVRゴーグルは、従来のモノより大幅に小型化され、着脱の容易なメガネ型のこれまでにない形をしています。これが一般向けに商品化されれば、サングラスを付けるような感覚でVRゴーグルを気軽に着脱するスタイルが流行するかもしれません。
VR世界と現実世界を上手に行き来できるようになるためには、着脱しやすいというのは非常に重要なポイントだと思います。これまでのVRゴーグルとは異なり、ファッションとしても取り入れられそうなデザインのため、様々なブランドとのコラボ商品がこれから出てくるのではないでしょうか。VRゴーグルが一般的に広まる次のステップとして、ファッション性が意識されるようになるかもしれません。
もう一つデザイン性の高いVRデバイスとして注目したいのが、触覚を再現するハプティック技術を用いたグローブ型コントローラーのSenseGlove Novaです。ロボット操作のVR訓練用に開発されたようですが、ゲームやEスポーツ等に大いに活用できる技術です。
このグローブをはめた同士でリモート会議の商談を行えば、「握手」というコロナ禍で失われた対人コミュニケーションを復活させる事もできます。握手にどれほどの意味があるかはわかりませんが、人と人とのコミュニケーションを再構築していく上での重要なポイントになるかもしれません。
SXSW Online 2021では、THE FUTURE IS ACCESSIBLE: ACCESSIBILITY IN XR(誰でにも開かれるべき未来:XRにおけるアクセシビリティ)と題したセッションが行われます。学校や職場で導入されはじめるであろうVRデバイスですが、新しいものを作るだけではなく、障がい者や家庭環境による事がないデバイスの普及の議論に注目が集まるようになっていくと考えられるでしょう。
予報03:リモートワークが捗るコックピット型のオフィスチェア
RAZERによる次世代ゲーミングチェアのコンセプトモデルProject Brooklynは、巻き取り式の大型画面を搭載。自分の周囲を取り囲むように画面を展開できるので、一人称視点のゲームとは非常に相性が良いのでしょう。これはゲームだけでなく、リモートワークの効率を高める解決策になるかもしれません。
まさにコックピット型のリモートオフィスは、周囲を遮断し仕事に集中できる自分だけの環境を作り出してくれるでしょう。そしてやはり、使わない時は画面を収納しておけるという点が、書斎を持つことが難しいような住宅環境の人々にとってのポイントになりそうです。
SXSW Online 2021では、THE EMPATHETIC WORKPLACE(共感的なワークプレイス)というセッションが予定されています。新しいデバイスにはワクワクしますが、現在は課題が山積みの段階。それをどう超えることができるか?も問われています。このセッションでは、米国司法省出身のトラウマ解決のプロフェッショナルのスピーカーが、コロナ禍における組織の中での問題に切り込みながらマネジメントで使えるツールなどを紹介する予定です。
まとめ
コロナ禍で変化を余儀なくされたエンターテインメント業界は、まさに今過渡期にいると言えます。こんな状況下だからこそ、テクノロジーの進化によって今まで見た事もないような新しいエンターテインメントが生み出されるのではないかという期待をCESを通して感じる事ができました。
CESに続き、3月にはSXSWもオンライン開催されます。いくつかのセッションを今回ご紹介しましたが、テクノロジーだけではなく、その裏側の社会の動きも同時にとらえることができるのがSXSWの特徴です。音楽や映像も組み合わせた祭典として多様なプログラムが徐々に発表され始めました。SXSWではどんな未来のアイデアが登場するのか注目です。
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