Obsidian Proは、8基のAPS-Cイメージセンサーと、F2.8のフィッシュアイレンズを搭載。8つのレンズの絞りやフォーカスを、一括でコントロール可能とした超ハイエンド~シネマティック12K360°3DVRカメラだ。4月に中国・北京でローンチイベントが開催され、その後7月に日本にわずか数台が入荷した。筆者はこの希少な実機に触れることが出来たので、今回はまず開封レポートをお届けする。
Kandao社の概要
同連載でも度々取り上げてきた中国・深圳のKandao Technology社は、2016年の創立以来、VRイメージング製品やAIデジタル画像をはじめとする最先端の次世代映像技術の研究・開発に注力してきたスタートアップ企業だ。
Kandao社は、プロシューマー向けのVRカメラObsidianシリーズ、5G+8K VRライブストリーミングシステム、そして、コンシューマー向けVRカメラQooCamシリーズを発売。さらに360°ビデオ会議システムとして、Kandao MeetingとKandao Meeting Proをリリース。9月には新製品Kandao Meeting Sのローンチを予定している。
これまで開発した製品は、「CES Best of Innovation Awards」、「Red Dot Award」、「iF Product Design Award」などの数多くの国際的な権威ある賞を受賞している。
Kandao社は、中国のエンターテインメント企業ALPHAグループ、深圳のカメラ製造会社SKY LIGHT、台湾のIT企業Foxconn(鴻海科技集団 / 富士康科技集団)から継続的に投資を受けている他、この8月、CDF-CapitalとSHENZHEN Guaranteeが主導する新しい資金調達ラウンドにおいて、数百万ドルの調達に成功している。
同社のCEOであるChen Dan氏は、「Kandao社は、5G時代のVR / ARにおける画像技術と製品の市場について楽観的です。未来はメタバースの時代であり、オンラインとオフラインのサービスはさらに統合され、仮想世界と現実世界はより密接に接続され、イメージングは最も重要な部分の1つでなければなりません。将来的には、ビデオを見たり、リモートミーティングをおこなうにしても、イメージングの形式は間違いなく平面だけではありません。画像のキャプチャと画像処理に注力し、努力することで、新しいイメージングの革新に参加し、主導できることを願っています」と語っている。
ObsidianシリーズとObsidian Proの登場
Obsidianは、火山岩の一種である「黒曜石」を意味するネーミングが施されたKandaoのプロシューマー向け360°VRカメラシリーズだ。これまでにObsidian R、S、GOの3機種がリリースされてきた。
Obsidian R(レゾリューション)は、最大8K×8K 30fpsの解像度優先の動画性能を持つ。S(スピード)は、4K×4K 120fpsのフレームレート優先の性能。GOは、4K×4K 30fpsのスペックの初心者向けプロ機としての位置付けであった。
その中でObsidian Proは、今年満を持して登場したObsidianシリーズのフラッグシップ機だ。4月15日、北京の商業の中心地である朝陽区のSONY Academy of Imaging Technologyを会場として開催されたローンチイベントにおいて発表された。新型コロナウイルス感染予防のため、招待客の人数は制限されたが、このイベントには80~100人ほどのジャーナリスト、ディストリビューター、エージェント、KOL、そして、パートナーが参加した。
Obsidian Proのスペック
次に、Obsidian Proの仕様を見てみよう。筐体の大きさは369.2mm×236.8mm。重さは、11.16kg。
8つの2400万画素のAPS-Cサイズのイメージセンサーを配した360°3DVRカメラだ。ISO感度は最高12800で、14ストップのダイナミックレンジを持ち、輝度差が激しい環境や低照度において、ディテールの再現性が期待できる。8つのレンズを搭載しており、すべてのアングルについて、3つのレンズで撮影ができるので、オーバラップが十分とれ、ステッチの精度と立体視の効果を両立する設計が成されている。
F2.8~F16まで16段の絞りを電子制御方式で変更できるため、被写界深度をコントロールして、表現に反映できることは、画期的である。また、電子フォーカス制御により一体型VRカメラとしては初めて、「近距離」と「通常」の2つの焦点距離の選択を実現している。
Obsidian Proは、最大12Kx12K 30fpsの360°3D動画を撮影することができ、下記のメーカー公式サイトの仕様表には記載がないが、実はソフトウェアのAI画像処理を介せば、12K 60fpsの360°3D動画もサポートする。
動画のフォーマットとしては、10bitのApple ProRes 422 HQビデオ、12bitのRAWビデオ等に対応。フレームレートは、23.976、24、25、29.97、30、50、59.94、60となっている。
静止画においては、QooCam 8Kでもお馴染みの同社が誇るDNG8モードを搭載。14bit RAW写真を8枚連続で撮影し、アプリ「 Kandao Raw + 」 を介して、低ノイズの高品質な16bit RAW写真を生成することが可能だ。
ストレージは、4TB、8TB、16TBの専用のSSDがオプションで用意されていて、8つのレンズから得られたデータを一括で記録できる。カメラ内部でステッチされた4Kプロキシファイルは、microSDカードに保存され、編集時に利用することができる。
マイクは本体の下部と外側のパネルの後ろに、8つ内蔵されており、空間音声に対応。その他、底面にある3.5mm接続端子は、外部の標準オーディオのステレオ音声入力をサポートしていて、マイク入力とライン入力を選択することが可能だ。USB Type-Cのポートからもオーディオ入力が出来、マルチオーディオ入力チャンネルをサポートしている。
カメラ内部で8K 30fpsや6K 60fpsの360°VRライブ配信を処理。RTSP、RTMP、RTMPS、SRTの複数のストリーミング・プロトコルをサポートしており、HDMI出力の最大は、8K 30Hzとなっている(現時点では、ライブ機能は実装されておらず、9月頃、アップデート予定だ)。
ブレ補正のためには、9軸ジャイロスコープが内蔵。また、ストリートビュー撮影のために最適化されたGPSが内蔵されている。内蔵バッテリーは搭載していないので、給電は、AC/DCアダプターによるか、Vマウントバッテリー2台を、専用のバッテリーホルダーに装着して、使用する。
放熱対策としては、超高解像度の録画を安定的におこなえるように、新開発の熱放散システムである4mm 16ヒートパイプの液体冷却および120mm空冷が採用されている。
Obsidian Proの仕様
主な仕様 | センサーサイズ | APS-Cx8 |
レンズ | 195°高解像度の魚眼レンズx8 | |
F値 | F2.8〜F16、1/3 EV | |
焦点距離 | 近距離、通常 | |
焦点距離 | 6.6mm | |
ISO感度 | 100~12800 | |
静止画 | 静止画のモード | スタンダード、 DNG8、タイムラプス |
静止画のフォーマット | 14ビットDNG、8ビットJPEG、JPEG+DNG | |
動画 | 動画のフォーマット | 12bit KDRaw 10-bit Apple ProRes 422 HQ 10-bit Apple ProRes 422 10-bit Apple ProRes 422 LT 8bit / 10bit H.265 |
動画の解像度 | 11520×11520 @ 30fps (12K 3D) 11520×5760 @ 30fps (12K パノラマ) 5760×5760 @ 60fps (6K 3D) 5760×2880 @ 60fps (6K パノラマ) |
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ライブ配信 | ライブのプロトコル | RTSP、RTMP、RTMPS、SRT |
ライブ配信のモード | カメラ内側ステッチング | |
ライブ配信の解像度 | 7680×3840 30fps (8K 30fpsパノラマ) 5760×2880 60fps (6K 60fps パノラマ) |
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ハードウェア | HDMI最大出力 | 8K@30Hz |
Wi-Fi | Wi-Fi 6(802.11.ax) | |
Bluetooth | Bluetooth 5.0 | |
内蔵センサー | 9軸ジャイロセンサー、GPS内蔵 | |
ストレージ | 8-in-1の一体化SSDモジュールx1(オプション) マイクロSDx1(プロキシファイル用のストレージ) |
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接続 | 3.5mmオーディオ入力 USB Type-C HDMI 2.0 Type-A 10Gbイーサネットポート |
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電源入力 | プッシュプルセルフロックコネクタx1 XLR 4-Pin & 航空コネクタ 4-Pin 2B ケーブル |
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最大入力電力 | 160W | |
給電方式 | Vマウントバッテリー電源(オプション)x 2 | |
110~220V AC / DCアダプター 入力電圧:20V |
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ネジ穴 | 1/4、3/8、マルチ穴 | |
外観 | 重量 | 11.16kg |
サイズ | 369.2mm×236.8mm |
いよいよ、Obsidian Proを開封
今回、いち早くObsidian Proを導入したジュエ株式会社、三友株式会社のお誘いのもと、筆者は両社での開封の儀に立ち合うことが出来た。また筆者には、Obsidian Proのアンバサダープログラムにより、後日実機が提供されたので、ここにObsidian Proの本体や付属物を紹介する。
まとめ
今回はObsidian Proを電源に接続する前の状態で、開封レポートをお届けした。Obsidian Proは、現存するプロシューマー機の中でも最高峰の仕様であり、APS-Cセンサーを8基搭載しているだけに、筐体は非常に大きく、重量もあるので、1人でオペレーションするとなると機動力には欠ける。
超高解像度が必要なシネマティックVR制作のモチベーションのもとで、チームでの運用が実用的と思われる。スペック表には、タイプラプスが実行可能と表記されているが、発売当初は、実装されていたものの、現在、バグ調整のため、再実装は9月以降になる見込みだ。
また撮影後のステッチ作業については、自社ソフトのKandao Studioの対応も、やはり9月以降となり、それまではサブスクリプションで使用できるスペインのSGO社のステッチ専用ソフトMistika VRでステッチ処理を行うことになる。ライブ配信機能も9月以降に実装される予定だ。
次回以降には、本格的な検証レポートをお送りしたいと考えているので、そちらもどうぞ楽しみに、お待ちいただきたい。