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2022年3月22日22時、Insta360(Arashi Vision)より、新しいアクションカメラである「Insta360 ONE RS」が発表、同時に発売が開始された。販売価格とラインナップは以下の通り。
- ツイン版:税込69,800円(4Kブーストレンズと360°レンズの組み合わせ)
- 4K版:税込38,800円
- 1インチ版:税込69,800円
ONE RSは、レンズ、コア、バッテリーの3パーツにより構成されるレンズ交換・組み立て式のアクションカメラだ。レンズを付け替えることで、広角と360°の撮影が可能となる。ONE RSは、旧モデルONE Rをベースに、撮影・編集性能と使い勝手が向上した次世代モデルとなっている。今回の記事では発表前に実機を入手、試用したレポートをいち早くお届けする。
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概要
Insta360 ONE RSは、2020年1月に発売されたInsta360 ONE Rのコンセプトを継承しつつ様々な改良が施された新モデルで、4Kレンズ、プロセッサーを担うコア、バッテリー、マウントブラケットの各パーツが一新されている。
今回の4Kブーストレンズは、1/2インチ4,800万画素のイメージセンサーが搭載され、広角の動画や静止画撮影の画質が向上、RSコアにおいては、カメラ内手ブレ補正やオーディオ性能がアップグレードされている。バッテリーもより大容量となって撮影時間が延長され、マウントブラケットは容易に着脱ができるように改善された。このようなモジュール式のアクションカメラは、筆者の知る限り、このシリーズが唯一だが、そもそも、レンズ交換式には、どのようなメリットがあるのだろうか?
一般的に広角のカメラでは、被写体のアングルが限定的であれば、解像度を有効に活用した撮影が行える。一方、360°カメラの場合は、空間を丸ごと捉えたり、撮影者があえて自らを映し込んだり、編集時に広い視野角の中から、必要な部分をリフレームして利用するといった多様な使い方が可能だ。ONE RSやONE Rであれば、今挙げたこれらの利点を1セットで併せ持つことが出来るアクションカメラという訳だ。
また、4KブーストレンズとONE RSコア、バッテリーベースは、旧モデルのONE Rのユニットとも互換性がある。もう一つの交換レンズであるライカと共同開発された5.3K1インチ広角レンズは、従来のモデルと変更はないが、1インチ(1.0型)の大型のイメージセンサーを搭載、高解像度・高画質を実現するものだ。いずれのレンズを装着しても、ONE Rと同じく、5mまでのIPX8防水性能は変わらない。
初代のONE Rは、その変身合体アイテムのようなコンセプトが評価されたものの、いくつかの課題もあった。高品質の手ブレ補正機能であるFlowStateを施す際に、4K60fpsの場合は、撮影後にモバイルInsta360アプリ、またはPCアプリのInsta360 Studioにおいて後処理が必要であったこと(4K50fpsまではカメラ内のクイックFlowStateの手ブレ補正が有効)。
その他、オーディオの風切り音低減の性能。WiFiの転送スピード。レンズ交換時に必要とされるマウントブラケットの取り外しや取り付けの煩わしさなどがあったのだ。実際に今回のInsta360 ONE RSを試用してみると、ONE Rユーザーからのフィードバックがしっかりと製品に反映され、上記の課題を克服すべく開発されたことが実感できる。
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外観の変更点
以下、具体的に新機能や改善点を説明していくが、まずは、ONE RSの外観から見ていこう。ONE RSコアの外観についての主な変更点は、以下の通り。
- パネル前面に、斜め縞模様のテクスチャが採用されている。
- スピーカーのデザインが変更された。
- 左下の部分に、マイクが1つ追加された(合計3つに)。
- 側面のUSBカバーを、片側からのみ差し込み可能とする仕様に変更することで、水漏れのリスクを低減(新しいUSBカバーは、ONE RSコアのみと互換性あり)。
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ONE RSの取り付けブラケットには、新たにクイックリリースボタンが備わっており、側面を引き上げて開放するデザインになった。それにより、ONE Rの上部ロック式と比較して、カメラの着脱が格段に容易になった。
また、コアの前面をカバーするように放熱素材を配したことで、カメラの録画時間が延長されたとされている。電源・シャッターボタンの感触も改善され、よく指にフィットして操作がしやすくなった。ONE RコアはONE RSのバッテリーと組み合わせることで、このマウントブラケットを使用できる。
バッテリーにおいては、厚さが2mmほど増して、容量がONE Rの1190mAhから、ONE RSでは1445mAhに増量、より長時間の撮影が可能になった。各モジュールは、接続部分の硬度を従来より高めて、変形を予防している。個人的な感想にはなるが、接合のフィーリングもよりスムーズになった印象だ。
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ONE RSの新しいレンズとコアがもたらす新表現
前述したように、新しい4Kブーストレンズは、4,800万画素1/2インチイメージセンサーを備えており、静止画においては、旧4K広角モジュールの4000×3000と比較して、およそ4倍の8000×6000の解像度を達成、より高精細かつ、豊かな色彩表現を実現している。 PureShotモードで撮影すると、さらにダイナミックレンジが向上し、ノイズが低減、高画質の写真が生成できる。動画においても、高品質な4K60fpsの撮影が行えるようになった。
そして、4Kブーストレンズを利用した場合、2つの新機能が実装された。その1つは動きの激しいスポーツ撮影などの場面に有用なアクティブHDRである。アクティブHDRとは、アクションの最中においてもゴーストを最小限に抑えつつ、ハイライトとシャドウのデティールを描写できるというもので、競合機にはない機能だ。
もう1つは、4,800万画素のイメージセンサーを活かした6Kワイドスクリーンモード。2.35:1の比率のワイドスクリーンで、6Kの高解像度の動画撮影ができる。アクションカメラで捉えたとは思えない、シネマティックな映像が演出できて、新機能の中でも、筆者は特に気に入っている。
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4Kブーストレンズ 4K30P鮮やか
4Kブーストレンズ4K30P Log
4Kブーストレンズ4K60P
4Kブーストレンズで、アクションシーンにおいて、豊かな階調表現を可能とするアクティブHDRモード。ただし、暗所でのバイクシーンなどの場面では、使用を控えた方が無難だ
4Kブーストレンズ。2.35:1の比率で、動画撮影ができる6Kワイドスクリーンモード。6Kワイドスクリーン動画は、Insta360 Studioで処理する必要がある
360°レンズのメリットの1つに、撮影時に360°全方位を5.7Kで記録しておき、撮影後の編集において、そこから好きな画角を切り出して2D映像をつくり出せる点が挙げられるが、Insta360 ONE RSでは、360°水平維持機能により、激しいスポーツ撮影や乗り物において撮影中にカメラが回転しても、動画は常に水平を維持することができる。3つのレンズとも、モバイルアプリまたは、PCアプリのInsta360 Studio 2022を用いた場合、映像が水平に補正される。
360°レンズにおける水平維持のテスト動画。自撮り棒をくるくると回転させても、常に水平がキープされている
今回のONE RSコアは、内部のメインチップ、DDRメモリ、Wi-Fiチップ等のプロセッサの改良により、4K60Pにおいても、より強力なカメラ内FlowState手ブレ補正が利用できるようになった(4Kブーストレンズと1インチ広角レンズにおいて)。その場合、動画ファイルは、.mp4として記録される。編集時にFlowState手ブレ補正を選択すると、アスペクト比、水平調整もアプリあるいはInsta360 Studioを利用して適用する。
ONE RSコアのサイズは従来のコアと同様で、既存のONE Rレンズと互換性があり、コアとして利用できる。その他、新しいONE RSコアのアップグレードされた点は、主に以下の通りだ。
- 50%近く、高速になったWiFi転送(最大12MB/s→20MB/s)
- 動画撮影中、最大2.7倍のデジタルズームアップが可能なインスタントズーム機能を実装(4K広角レンズ、1インチ広角レンズ、4Kブーストレンズは、ONE RSコアと組み合わせることで、インスタントズーム機能をサポートする)
- プリセット撮影モードに、簡単にアクセスが可能なクイックメニューを搭載
風切り音低減の機能は海の近くの風のある場所で試してみたところ一定の効果が得られた。PCアプリのInsta360 Studioで、さらにノイズキャンセルのボイスフォーカスやノイズ低減を適用してみたところ、人工的で籠った音響に感じたので、この辺りは環境や用途を考えて、テストしてみることをお勧めしたい。
インスタントズームについては、アクションカメラはワイド系の画角の活躍の場が多いものが、望遠が欲しい場面もあるし、この機能が使えるようになったことはONE RSアドバンテージを高めたと思う。
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クイックFlowState手ぶれ補正(カメラ内)
FlowState手ブレ補正(後処理)
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FlowState手ブレ補正(オフ)
音声/風切り音低減
音声/風切り音低減(Insta360 Studioでマイクフォーカスを適用)
音声/風切り音低減(Insta360 Studioでノイズ低減を適用)
音声/方向強調
音声/ステレオ
録画中に被写体を最大2.7倍までデジタルズームすることができるインスタントズーム(4Kブーストレンズと1インチ広角レンズのFlowStateモードのみ使用可能)
編集のワークフローのアップデート
モバイルのInsta360アプリの「FlashCut」は、クリップ内のハイライトシーンを発見して、BGMまで付加して、AIによる自動編集を施してくれる機能だ。Vlog、ライフ、旅行、スポーツなど、さまざまなテーマが用意されている。そして、編集ラボにも、遊び心溢れるAI編集のエフェクトが更新され続けており、現在は30種ほどのテンプレートが揃っている。新しいエフェクトとしては、360°映像からクリップ間にシネマティックなトランジションを施して、ハイパーラプスを作成できるシネラプスが追加されている。
Insta360アプリ上の360°動画の編集についても、キーフレームによる編集をおこなわずとも、スナップウィザードを使用することで、スワイプで容易に、直感的にリフレームができるようになった。
デスクトップでじっくり編集したい場合は、スタンドアロンのInsta360 Studio、あるいは、Adobe Premiere ProとFinal Cut Pro Xのプラグインが用意されている。
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Insta360アプリの編集ラボの新エフェクト「シネラプス」を試してみた
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まとめ
「より速く、簡単、強力に」をコンセプトに、ブラッシュアップされて新登場したInsta360 ONE RS。レンズ交換式のコンセプトを踏襲して、ハードウェア、ソフトウェア両面におけるアップグレードにより、さらなる機能拡張を実現、表現の可能性を広げようという設計思想は、今さらながら非常にユニークである。
残念ながら、ONE Rでは、最大のアドバンテージであるはずのレンズ交換の際に、マウントブラケットの着脱が些か煩わしいことがネックになっていた。今回のONE RSでは、それが改善され、素早くスムーズなレンズ交換を可能にしたことは評価したい。ただし、マウントブラケットの設計とバッテリーベースのサイズが変更されているので、保護フィルター、NDフィルター、潜水ケース、ONE Rドローンアクセサリー等を使用する際には、組み合わせに注意をする必要がある。最適なパフォーマンスを得るには、ONE RSコアをONE RSバッテリーおよびONE RSマウントブラケットと一緒に使用することが推奨されている。
以下、現時点で把握できた各々の互換性について、今一度、整理しておくと、4KブーストレンズとONE RSコアは、ONE Rのユニットとも互換性がある。ONE Rコアにおける4Kブーストレンズの対応は、リリース後のファームウェアのアップデートでサポートされる予定。ファームウェアの更新は両方の製品が対象とされるが、一部機能は、初期段階においてONE RSのみで利用可能となる場合があり、その後、ONE Rでも利用可能になる見通しだ。
ONE Rコアとレンズは、ONE RSバッテリーベースで使用できる。 ただし、ONE RSバッテリーベースは、サイズが大きくなったため、ONE Rマウントブラケットとは互換性がないため、ONE RSマウントブラケットを使用する必要がある。ONE Rバッテリーベースと既存のレンズはONE RSコアでも使用が可能。
別売りのアクセサリーについても触れておこう。新発売のONE RSコールドシューアクセサリーを利用すると、外部マイクやライト等を取り付けることができる。ONE RSコールドシューアクセサリーは、ONE RSマウントブラケットと共に使用するか、4K広角レンズ、1インチ広角レンズ、4Kブーストレンズに、直接取り付けることも可能。
また、クイックリーダーアクセサリーを使用すると、WiFi経由でファイルを転送する必要がなく、ONE RSに取り付けて、ファイルをクイックリーダー内部のマイクロSDカードに保存し、スマートフォンに直接、接続して編集を開始することができる。その他、ONE RSダイブケース、ONE RSブースドバッテリーベース、360°レンズ用Insta360 ONE RS縦型バッテリー ベース、充電用のType-Cポートと外部マイク用の3.5mmポートを配したマイクアダプター、4Kブーストレンズ用NDフィルターなどが、発売されるという。
最後に、ONE RSは、Insta360アプリを使用して、360°のライブ配信が可能である。パソコンに接続して、ウェブカメラとして利用することもできる。
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