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TOKYOコミコン2022で盛り上がる特撮

米国サンディエゴでコミック、映画、SFなどの大衆芸術の認識と理解を広めるための活動として1970年代にスタートしたコミコン(Comic-Con International/SAN DIEGO COMIC CONVENTION)。日本でも2016年からTOKYOコミコンがスタートしており気になっていたのだが、ようやく今年、ウルトラマン監督で有名な八木毅監督と一緒に進めるプロジェクトがTOKYOコミコン会場で出展、ステージ登壇するとのことで初めて東京コミコンに足を踏み入れた。

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八木毅監督

東京コミコン2022は「バックトゥーザフューチャー」シリーズのドク役のクリストファー・ロイド氏や、「スターウォーズ」シリーズC-3PO役のアンドにー・ダニエルズ氏など、超一流ハリウッド俳優が登場し、メインステージのMCも「47RONIN」出演の日米で活躍する米本学仁氏が行う。コスプレイヤー達もDCコミックやMARVELのキャラが多く、コミケやロサンゼルスのアニメコンとは少し空気感が違うのも面白い。

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スパイダーマンが井口昭彦氏デザインの怪獣「ピタゴドン」を前に記念撮影
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来日セレブリティーとの撮影会も長蛇の列となっていた

東京コミコン、初お披露目作品「AKARI」。八木毅監督の特撮技術を伝える

さて、八木毅監督が登壇したステージは、「Naro.tv」という日本の達人の技や考えをレクチャーとして英語圏に発信するオンデマンドビデオプラットフォームのメンバーと共に行われた。

八木毅監督はNaro.tv上で「特撮」をレクチャーするのだが、他にはアニメを押井守監督、日本の食ではミシュランシェフ「天風良 にい留」新留修司氏や「アジアのベストレストラン50第一位を取得した「傳」長谷川在佑氏が講師を務める。

この「特撮」講座では円谷プロ仕込みの八木毅監督の特撮の技術を、短編映画を作ることにより、紹介する。それが、今回東京コミコンで初お披露目した「AKARI」である。

5分程の短尺動画ではあるが、日本の特撮怪獣デザインの巨匠 井口昭彦氏に怪獣「ピタゴドン」を、そして怪獣キャラデザインで有名なマット・フランク氏にヒロイン「AKARI」をデザインしてもらい、さらに、世界観はビジュアルアーティスト、NFTアーティストとしてもクリスティーズに出品もしているマッド・ドック・ジョーンズ氏も加わっている。

特撮ファンの方はぜひ6分程の映像である「AKARI」を見てみてほしい。

AKARI

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東京コミコンステージ上で特別上映した後、会場から温かい拍手が起きた

CGは使っていない。「光」と「色」における表現の追求が「特撮」的テーマ

八木毅監督は当映像作品「AKARI」を、レトロフューチャーなイメージでいろんな冒険をしようと考え、特に「光と色」にこだわったと語る。撮影はわずかな期間だったが、八木毅監督が懇意にしているマット・フランク氏にヒロインデザインの依頼をしたり、空手を得意とするアクション女優宮原華音氏や、アクション監督には小池達郎氏など錚々たるメンバーをこのために招聘した。

八木監督は3日間という短期撮影でも見応えのある映像を作り上げた。 八木毅監督に日本の特撮の特徴、そして「AKARI」で注力した点を伺った。

八木氏:

日本の「特撮」は、それが作りものであるということを前提にしています。現実世界をいかに超える映像世界を撮影することを追求してきたからこそ、美学的価値があると考えています。
「AKARI」の特撮ではこのことを前提に、街の未来的雰囲気、怪獣の優しさと恐怖感、ヒロインの美しさと凛々しさなど様々な現象を表現するにあたって「光」と「色」における表現の追求を「特撮」的テーマにしました。
映画は光の芸術です。撮影監督のアレックスさんとスタジオでライティングと色彩のテスト、検討を重ね、現場ではコンピュータ制御で全ての光と色をコントロールしました。「AKARI」では2076年の未来都市を現実を超えた光と色のイメージで表現し、そこでAKARIと怪獣ピタゴドンが存分に暴れます。今回はCGは使用していません。新しくて王道な「特撮」を追求しています。

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特撮は停滞してはいけない。常に新しい挑戦をし続けるべきである

個人的には「ピタゴドン」の光の具合と、「AKARI」のアクション、街、電線、破壊される際に飛び散る破片などの細部への作り込みに惹き込まれると同時に、八木監督の「特撮は停滞してはいけない。常に新しい挑戦をし続けるべきである」という言葉が非常に印象に残っている。

CG、VFXが当たり前の映像世界に慣れてしまっている私の目には、特撮映像に人間味、温かさも感じた。意外と、CG全盛期の時代だからこそ特撮の温かさ、迫力が再注目されるのかもしれない。

記事で読んだ内容となるが、「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる庵野秀明氏が、特撮は日本が誇る文化のひとつと語っている。「AKARI」は、日本と海外のアーティストが「特撮」を軸につながっている。GODZILLAを愛する人たちが集う「G-Fest」というイベントも米国にはあるらしい。「特撮」に注目することが、日本の魅力を知るための一つのきっかけともなりそうである。

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WRITER PROFILE

西村真里子

西村真里子

株式会社HEART CATCH代表取締役。“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。