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7月末といえば、QBEEこと九州放送機器展だ。なんといってもここにはNAB Show 2023やCine Gear 2023で参考展示されてた機材が実機として展示されている可能性が大きいからだ。

…と毎回このフレーズで始まるが近年はコロナの影響や円安のお陰で海外取材がまったく行けない。せめて九州まで飛行機に乗ってその雰囲気を味わおうというのが今回の狙いでもある(冗談)。

実際このコロナ影響は各種機材展にも影響があり、小さいブース所謂「長屋系」の連なった部分を見ることができなくなった。同時に大メーカーも出展を取りやめているところもある。ソニーは一昨年からQBEEには展示していない。やはり放送機器展ならソニーとパナソニックが並んでいてほしいと思うのはボクだけではないはずだ。そんな中、常連のように出展しているメーカーも多々ある。今回はその辺りを含め新製品を出しているメーカーを中心に取材していこう。

銀一-RØDECaster Duo/Wireless GO II充電器

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RØDECaster Pro IIはすでに登場している4chデジタルミキサーだが、今回はその2ch版を展示。前日の仕込み日にはなかった物が当日の朝に搬入されるというQBEEならではの醍醐味。

性能は4ch版RØDECaster Pro のまさに半分と言っていい。大きさ的にも二回り小さくコンパクトなので4ch必要ないという現場にはぴったりだ。またWireless GO II用のポータブル充電器も展示。バッテリー内蔵のため電源がなくても約2回分の充電が可能だ。

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エヌ・イー・ピー-新型インバーター/PD対応USBケーブル

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電気系パーツなら相談すれば大体何でも作ってくれるエヌ・イー・ピー。今回の主軸はAC-DC電源だ。Inter BEEですでにVバッテリー2基掛けの電源を展示していたが、今回はさらにそのラインナップを充実させて150Wから最大1000Wの製品を展示。

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どれも正弦波を出しているのでどのような製品を繋いでも安心して運用できる。筆者的に一番目が付いたのはDタップ(パワータップ)からの給電でPD対応のもの。これならDタップが付いている電源から最大100WのUSB Type-C出力ができる。これは良い!

ケンコープロフェショナルイメージング-FXLION NANOシリーズ「NANO ONE/NANO TWO」

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最近流行りの100W未満の小型VバッテリーFXLION NANOシリーズを2個セット、さらに2個同時充電できるチャージャーが付いてビックリなお値段。バッテリー自体は50WのNANO ONEと98WのNANO TWOの2種類があり、ミラーレスでリグを組んでの運用なら50Wのものでも十分なはず。何よりもコンパクトなのが良い。

アイ・ディー・エクス-Imicroシリーズ新製品

各種互換バッテリーのパイオニア的な存在のアイ・ディー・エクス。互換バッテリーの中でカメラに付けて安心して運用できるのは筆者の中ではアイ・ディー・エクスしかない。

今回はInter BEEで発表してた小型バッテリーのリニューアル、全機種USB Type-C充電に対応するのは現場的には非常にうれしい。またシネカメラでも運用できるハイボルテージ使用(24V)のバッテリーも展示。高価な海外製バッテリー以外にも選択肢が増えるはず。今年のInter BEEではさらに期待できる製品を用意中というので期待したい。

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キヤノン-RF100-300mm F2.8 L IS USM

関西放送機器展でも好評だったRFマウントのRF100-300mm F2.8 L IS USMのハンズオン展示。これ、実物を見ると本当にコンパクトで軽量なのでとても300mmズームレンズには見えない。なんといっても前玉の口径が100mmチョイしかないのに全域f2.8を再現できるのは本当に凄い。

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まだEFマウントの頃に聞いたときはこのサイズ感だと前玉120mm以上で価格も200万円近くなると聞いていたので、その半分になったのはRFマウントにしたことによる技術革新とのこと。良いレンズだ!

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朋栄-HVS-190OU

千葉のPIST6の現場では一番お世話になっている朋栄の機材。今回はその中でもコンパクトなHVS-19シリーズを展示。小型のラックマウントに組み込めば中継車どころか軽バンでも十分運べるコンパクトさ。もちろん性能はHANABIシリーズの折り紙付き。意外と朋栄にしては価格もコンパクトなのが印象的だった。

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ビジュアル・グラフィックス-PowerTake

VRやARが得意な同社だが今回目についたのはブラックマジックデザインのHyperDeck StudioをPCからコントロールし順次再生するソフト。簡単に言えばHyperDeck Studioをポン出し機として使うことが可能。最大で4台接続でき、その中でどのグループの何を再生させるかを簡単にできるのは、ワンオペ必須の配信現場にとって保険となるはずだ。

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ローランド-VR-400UHD

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ブース自体は小さいが、その中にこれでもかとSW卓を並べての展示。中でも新製品のVR-400UHDの人気は高い。この機種、SWというよりはシーン切り替え卓と言った方がぴったりくる感じだ。

レイアウトを作ったものをそのままアサインできるので、1バンク8個のレイアウトをシーン毎に呼び出せるのは非常に便利。今までのスイッチャーの概念であるMEというより映像レイヤーの積み重ねという考え方をした方が解りやすい。映像関係者よりも会場施設関係の方からの引き合いが多いというのもうなずける。

ブラックマジックデザイン-ATEM Television Studio HD8 ISO

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関西放送機器展でも話題になってたATEM Television Studio HD8 ISOの展示を中心に、いつもながらの黒魔術パフォーマンスを発揮。このSWは従来のTelevision Studioをさらにブラッシュアップしただけではなく、内蔵M.2 SSD(2TB)にこのSWに入力している全ての素材やPGMをキャプチャーできる。つまり、さらにオーディオ機能もかなり強化されているのでこのSWを単体で持ち込めば、今まで用意してた周辺機器のほとんどを持ち込まなくてもOKだ。

ZOOM-M2 MicTrak/M3 MicTrak/M4 MicTrak

32bitフロート録音が話題のZOOMだが、そのラインナップをさらに増やしての展示。中でも新製品のMicTrak Recorderシリーズはマイクに32bitフロート録音が付いているので何も考えずに電源を入れれば使用できるのは魅力。時間のないインタビュー等ではその威力を発揮するはずだ。

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フックアップ-Apollo x16/IK Multimedia iLoud MTM

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ZOOMブースの向かいにある同社だったが、筆者はこの分野がまるでわからないので、動画を見て説明を聞いてもらいたい。

ヴィデンダムメディアソリューションズ-マンフロット社ビデオバッグ

久しぶりにマンフロットブランドのカメラバックが新しくなった。従来のカメラバックであるPro Lightシリーズの後継機種としてCineloaderシリーズが登場。

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ソフトカメラバックながら、側面と上面は剛性感ある構造で重ねて積んでも中のカメラ本体には何も影響がない。蓋部分に厚さを持たせ空間を作ることにより、その部分にバッテリーやチャージャー、LEDライト等を効率よく収納できるのが秀逸だ。販売まではもう少し時間が掛かるようだが、これはデモをリポートしたいカメラバックだ。

まとめ

最近の放送機器展は映像・音響系技術者とは明らかに立ち位置が違う方を見掛ける。ローランドでも書いたが、施設管理者の方がPTZやSW、それらをキャプチャーする機材を凝視している姿が多く見受けられる。

元々QBEEは生粋のプロ技術者よりも放送系・美術系の学生の見学が多く、Inter BEE等で慣れていると新鮮な気持ちになるのだが、それに加えて施設の運用者が見に来ているのは新しい。

その理由としてはやはりコロナウィルスによる外部接触を嫌ったネットミーティングの浸透が大いに関係しているのでは?4K・8Kというハイレゾリューション映像からの切り出し映像やAIも加わって、これらのことが熟練の技術者でなくても手に入り、オペレーションできるのは本当に凄いことだ。だが、各メーカーもそれらを理解しつつ最終的にはプロフェッショナルと呼ばれている方々へのリスペクトを忘れていない機材作りは喜ばしいと思う。

すでに2024年の開催予定日もアナウンスされているので、1年後は同じ場所でどんな機材が出ているのか今から楽しみである。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。