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暗室との出会い

「アンシツ」という単語を聞いて、多くの人は何を想像するでしょうか。

写真の主要媒体が銀塩からデジタルへシフトし、誰しもがスマートフォンで高画質な写真を撮影・世界中にシェアできるようになった今日。

恐らく、大多数な方の脳内には「?」が浮かぶでしょう。

そこで赤いセーフライトや大型シンクや引伸機・現像タンクが脳裏に浮かび、酢酸や現像液の匂いを思い起こした方は、筆者の同志です。

私が暗室という空間を始めて知ったのは、高校時代に遡ります。

当時通っていた私立高校には廃部寸前の写真部があり、4棟ある校舎の1つ・1階階段下の4畳半ほどのスペースを使った暗室がありました。

錆びついたロッカーや草臥れたフジB型引伸し機、琺瑯バットが乱雑に並んだ黴臭い暗室で、高校3年間の放課後を過ごしました。夏は灼熱、冬は極寒。

1960年代に建てられたコンクリート校舎の暗室は決して快適とは言えませんでしたが、私の写真原点を作ってくれた空間でした。

暗室が好きだから

高校の暗室を経て、15年近くが経過した今日まで多くの暗室に出会ってきました。

高校時代、自室に最初に作った座敷暗室。
新宿のレンタル暗室。
大学で使用した大型暗室。
麻布十番にあったラボの暗室。
友人宅に間借りして作った4畳半暗室。
社会人になり、初めての一人暮らし宅に作ったリビング暗室。
結婚して、妻に頭を下げて作った6畳の暗室。

デジタルが当たり前、フィルムや薬品の入手が困難になりつつある今。

何故未だに銀塩写真に拘るのかと問われたことがあります。

「デジタルにはない銀塩写真独特の表現方法が…」

「印画紙にしかない画像の再現性が…」

そんなアクビが出そうな難しい話は、専門家の方に任せることにします。

「暗室が好きだから」それが自分の答えです。

セーフライトの赤色に光る薬品バット、タイマーの秒針音、シンクの流水音。

暗室という空間、そこで作業する事の面白さを知らなければここまで写真を続けてはいなかったでしょう。

darkroom207誕生

そんな私が、今から6年前に共同暗室の管理を始めました。

きっかけはとある不動産のWeb募集。

「どなたか暗室を引き継ぎませんか?」

渋谷にある写真学校が暗室を閉めることを決定したが、原状回復に費用がかかるため興味のある方にそのまま引き継いで欲しい。

そのような旨の案内を読み、管理会社へすぐに連絡を取りました。

ちょうど息子が産まれ、これまでのような暗室を続けていくことが難しくなるなと悩んでいた矢先の出来事でした。

生活環境の変化、それにいかに対応できるかも表現者の技量だと思います。

暗室機材が倉庫で埃を被ることなく、使い続けられることが決まり心底ホッとしました。

幸いにもその数年前から共同暗室の構想を練っており、設立メンバーがある程度揃っておりました。

マンションの207号室にある暗室だから、名称は

「darkroom207」。

開始当初のメンバーは10名。一人当たり月¥12,000という価格で、共同暗室207はスタートしました。

掃除の分担やレイアウト変更、予約管理や各種支払い対応、トラブル対応なども管理人の役目です。

面倒臭くないかですって?そんなことを思うなら、最初から暗室なんてやっていないです。

「世の中の大事なことってたいてい面倒くさいんだよ」

以前ドキュメンタリーで世界的有名なアニメーション監督がそう呟いていましたが、まさにその通りだと思います。

その後、メンバーの入れ替わりや会費の値上げ等などがありましたが、6年が経過した今でも暗室は続いています。

これを書いている先ほど、暗室の予約状況を覗いたら2ヶ月先まで予約はビッチリ。

最近では都内にあるレンタル暗室の稼働率も高いようですね。

興味はあるけれど、暗室を所持するのはハードルが高いなという方にオススメです。

ハマり過ぎると私のようになりますのでご注意。

最後に都内にある私のオススメレンタル暗室を紹介いたします。

詳細は各リンク先からどうぞ。

Tokyo Darkroom

写真ギャラリー・プレイスMに併設されている暗室です。
カラー・モノクロどちらも対応可能。
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-2-11 近代ビル3F

WORKS(ワークス)

カラープリントの暗室を探している方にオススメです。
〒160-0022 東京都新宿区新宿6丁目21-17 セラヴィ新宿B1F

Darkroom cafe

四谷にある写真学校「現代写真研究所」のレンタル暗室です。
モノクロ専門です。
〒160-0004 東京都新宿区四谷3丁目12沢登ビル5階

アトリエ・シャテーニュ

モノクロ・カラー・古典技法、それぞれに強いスタッフさんがいます。
ワークショップも定期的に開催しています。
ここの暗室は一見の価値あり。
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-20-9 八丁堀FRONT B1F

アウラ舎

カフェ・ギャラリースペースが併設されている暗室です。
夜はお酒の提供もあります。
オーナーのセンスが光る店内に魅了されるファンも多いです。
〒131-0045 東京都墨田区押上1丁目15−5

これを読んだ読者様に、暗室好きな方が一人でも増えれば私も嬉しいです。

が、再三ご注意申し上げておりますがあまりハマり過ぎると危険なので要注意です。

さもないとリビングのど真ん中に引き伸ばし機が鎮座したり、棚が現像タンクで溢れたりします。

誰の話ですかって?私のことです。

暗室管理人|プロフィール
1990年東京生まれ。日藝写真学科の元落第学生。 東京都渋谷区にある24時間・365日稼働の会員制暗室「DARK ROOM 207」創設メンバー 管理・運営人。 普段はサラリーマン、一児の父。三度の飯より暗室好き。