今から145年前。
かの天才発明家・エジソンが白熱電球を生み出してから
世界の暗闇は様々な電球の灯りで照らされるようになりました。
「街の灯りが とてもきれいね」といえば
ブルー・ライト・ヨコハマですが、自分はレッド・ライトの暗室が好き。
今回は暗室の必須品、セーフライトのお話です。
赤色系のセーフライト
プリント作業時、印画紙を箱から開封する必要があります。
暗室は読んでそのままの通り、暗い部屋。闇です。
全神経を集中させて手探りでプリントをしなければいけません。
と、いうのは冗談で印画紙は特定の波長域の光にしか感光しないため、
それ以外の波長の光には感光しません。
その為、プリント時は感光しない波長光である赤色系のセーフライトを
点灯させて作業を行います。
だからと言って、セーフライトで全ての印画紙が安全に使用できるわけではありません。
使用する印画紙がライト下での安全が確保されていない場合、印画紙がうっすら露光されてしまう「カブリ」と呼ばれる現象が発生します。印画紙のベースである白色が灰色になってしまうため、結果として低コントラストのボケっとしたプリントになってしまいます。
セーフライトの電球交換などを行ったら、必ず確認をしなければなりません。
知人はこれで印画紙を一箱無駄にしました。
自分の好きなセーフライトは、やっぱりKodak製の砲弾型ライト。
金属部のグレー塗装と、フィルターガラスを抑える赤いプラスチック枠がかっこいい。
一時期、病的な勢いで集めまくりました。
因みにフィルターガラスも定期的に掃除したり、劣化をしていないか確認必須です。
当時の参考書を読むと「2、3年での交換を推奨する」とありますが、
製品自体の製造販売をしていない昨今、これは中々難しい問題です。
なので普段からオークションや中古カメラ店で、新品未使用のガラスを見つけると
購入せざるを得ない私がいます。
Kodak製のセーフライトは天井からチェーンで吊るすタイプもあり、
これも暗室の天井から吊り下がっています。
あとマニアな人に人気なのが米国製の「Thomas Duplex Super Safelight」。
よく「トーマス」と呼ばれています。
低圧ナトリウムランプを点灯させるので、一般的なセーフライトの倍は明るいです。
このライトの特徴は発光部上部に可動式の笠が付いており、光量をこれで調節できる所。
発光時のジー…という音もマニア心を掻き立てます。
因みにナトリウムランプが切れると手に入れるのが大変。
が、最近は同規格でLEDライトが売られているようで驚いている私です。
また個人的にツボなものといえば、BRIGHT LABというメーカーの「Jr.Safelight」。
電球に赤い塗料で塗装しただけという簡単にも程があるランプですが、
独特の可愛さが魅力です。
セーフライトも時代の変化で、最近はLEDの商品も多くリリースされています。
ドイツのハイランド・エレクトロニック社製品「Heiland LED Darkroom Light」は
その代表格でしょう。因みに同社があるのはヘッセン州・ウェッツラー市。
あのライカでお馴染みの市にある企業です。
日本でもシルバーソルトさんが販売していますので、気になる方はこちらから。
というか私が欲しい。注文ボタンをクリックしそうになりました。
赤色エレジー
暗室の安全光=赤系の光というのが一般の方にも広く認識されているのは、
映画やドラマの影響もあると思います。
よくサスペンス系のドラマに出てきますよね。
ストーカーとかシリアルキラーとかの隠れ家に暗室があって、そこの壁には…
自分が好きな映画「SE7EN」にもバスルームを改造した暗室が出てきます。
あの犯人、何気にプリント上手いですよね。
大学時代、他学科の学生達と呑んでいたところ暗室の話題になり、
安全光の赤い光を「エッチな雰囲気の明かりでしょ」と言ってきた女子がいて
返答に困った私。
結局笑って誤魔化しましたが、その時頭に浮かんだのが
今回のタイトル「赤色エレジー」というフレーズです。
ショートヘアーの似合う女子、ちょっと雰囲気が幸子に似てました。
愛は愛とて何になる。
確かにあの光に照らされた定着液に浮かぶ印画紙ほど色っぽいものはないと思います。
次回、いよいよ最終回です。
「暗室よ永遠に」。
お楽しみに。
暗室管理人|プロフィール
1990年東京生まれ。日藝写真学科の元落第学生。東京都渋谷区にある24時間・365日稼働の会員制暗室「DARK ROOM 207」創設メンバー 管理・運営人。普段はサラリーマン、一児の父。三度の飯より暗室好き。