欧州で開催される放送機器展から見えてくること
毎年9月にアムステルダム(オランダ)にあるRAI国際展示場で開催される欧州の放送映像機器展示会、IBC2010が今年も9月9日(木)〜14日(火)の日程で開催されている。欧州最大規模を誇る映像音響通信機器の展示会だが、ヨーロッパといっても、とりわけイギリス、フランス、ドイツ、北欧などを中心とした北側エリアをターゲットとした映像機器展示会として開催されており、欧州では各国で細かい展示会も開催されている。IBCはもちろんその中でも最大規模で、出展は約1,300社、毎年140カ国から45,000人以上の参加者がある。
ラスベガスで開催されるNAB(全米国際放送機器展)が、アメリカのテクノロジー展示が中心的な存在であるのに対して、IBCはもっとワールドワイド感のある、世界各国の企業が揃って出展しているという万国博覧会的要素が強い。各国の技術を”フェアー”な視点で眺める事のできる展示会、というイメージが強い。欧州各国はもとより、アメリカ、日本、中国、インドなどのアジア圏、中東諸国など出展企業国も様々だ。また母国語が英語でない国も多いので、英語で会話する場合もあまり気が引けないという感じもあって、そんな部分でもどんな来場者にも”フェアー”なイベントという印象が強い。
またNABやInterBEEと大きく違うのは、大手企業などある規模以上のブースには必ずバーカウンターがあり、どの ブースも17時以降はカクテルパーティー会場と化す。そもそもIBCは放送関係者とメーカー技術者とのコミュニケーションの場として活用されており、展示会が人間交流の場として上手く機能しているところは面白い。日本的(!)な堅苦しい技術展示だけの品評会的な展示会とは趣きの違っていることもあって、会場を巡っていてもなかなか楽しいショーとなっている。そんなIBC2010を多角的な視点から数回にわたり、IBC2010レポートをお届けしていく。
週末をはさむ開催日程に意味がある
市内を走るトラム。会期中はフリーパスが配布されるため、街中で参加者と思われる人々を見かける
IBCの特徴として上げられるのが開催日程だ。一般的には変則的と思われる、土日を挟んだ日程(金〜火)で開催されている点も興味深い、出展者の話によれば、当然ビジネスデーを除いた土日に、アムステルダムに来てIBCを見たいというニーズも多いのだが、週末を利用して家族連れでやってくる放送関係者が多く、土日は家族サービスで。金曜か月曜にIBCを見て帰るというニーズも多いらしいことから、この開催日程なったようだ。どこまでが本当かはさておき、その辺の感覚もいかにも欧州らしい。
IBC2010のトレンドは?
IBC展示会ブースより
さて今年のIBC2010だが、2年前のリーマンショックの影響から、昨年はソニーが出展辞退、パナソニックも数年前から本体としては未出展(ディーラー出展のみ)と、不景気の煽りを受けて規模も縮小傾向だったが、今年は3Dなどの盛り上がりとHD化、ファイルベースの加速、またユーロ安の影響からか、欧州全体の景気も回復傾向にあるようで、出展社も多く、また日本の代表メーカーであるソニー、パナソニックもIBCに戻ってきたこともあって、複雑に入り組んだ全13ホールをフルに活用した、賑やかな会場風景となっている。
会場中で、目につくのは中国企業の進出だ。好景気を背景にかなりの数の企業が進出。中でもLEDライトパネルや三脚、撮影周辺機器、またサーバーやRAIDシステムなどのIT関連、通信といった分野でその存在を大きく示しているのも印象的だ。
取材・文:石川幸宏 構成:編集部
[IBC2010]Vol.02 ソニー、パナソニック、キヤノン主要3大メーカー各社の動きは? > |