撮影周辺機器の傾向としてこのところ顕著なのは、リグ、スライダー、ドリー・ミニジブ/クレーンなどの製造元も多岐に渡ってきているということだ。どの展示会に行ってもその種類、様式が益々増えており、特に2010年以降、DSLR系を中心とした小型ムービーカメラ用の特機は様々なアイディア製品や安価な製品も増えて、たった3年で一大市場を作り上げてきた。またこれまでの多くは中国製や韓国製などの安価で手頃な製品ばかりだったが、プロが使用して来た一流三脚メーカーなどの有名ブランドも、プロ仕様のデザインで堅牢性の高いシステムリグなどのパーツ製品を出して来ているのが近頃の傾向だ。今年のCine Gear Expoでは、そこからさらに進化した現場での使用シチュエーションを深く研究した、プロフェッショナルな現場使用にも充分耐え得る製品が出て来ている。

ブランドメーカー各社の新機軸

CGE03_a_SYMPLA.jpg

先行しているARRI、ザハトラーに続いてマンフロットは先のNAB 2012前にプロフェッショナル用の撮影サポート製品をシステム化した『SYMPLA』を発表。その中の蛇腹式のラバーフード「Manfrotto Flexible Mattebox System」は耐水性で雨天等の撮影に向き、さらに平たく折り畳み可能で携帯性にも優れている。回転式のフィルターステージと50mm幅で上下移動可能なエレベーター機構なども付いている。

元グリップマンが開発したコンパクトドリーシステム

CGE03_b_RCGslider.jpg

ハリウッドにはロケセットの建て込みとは別に、撮影機材や照明機材周辺の様々な機材設置や、ときには建設工事的な大掛かりな機材のセッティングを手がけるGRIP(グリップ)という仕事がある。日本に存在しない仕事なので知らない方もいるかもしれないが、彼らはまさに映画制作の縁の下の力持ち。カメラマンが撮影に、Gaffer(チーフ照明マン)などの照明テクニシャンがライティング技術のみに専念出来るように、その他の機材設置や足場作りに専念する、いわば撮影全体を支える影の立役者的存在だ。

そのGRIP出身のMike Romans氏(写真)が多くの現場経験で得たアイディアを元に製造したドリーシステムが「RCG(Romans Cine Gear)」のRCG SLIDERだ。まさにDSLRなど小型で高性能シネマカメラが出て来たこの時代に合わせて作られた製品で、全てがポータブルなケースにすっぽりと納まるポータブルなドリーシステム。レールは幾らでも延長可能で、レール幅も各車輪部分がフレキシブルに伸張できるため変更自由。価格も最小限のセットで599ドル(約47,500円)やその他各パーツも99ドル〜1,199ドルまでとどれも非常にリーズナブルだ。

RED EPIC/SCARLET用フレキシブルケージ

CGE03_d_ViewFactor.jpg

堅牢なカメラ用ケージなどを制作しているView Factorの新製品は、RED EPIC用のケージ「FMJ」シリーズ。堅牢なトッププレートとサイドアームで構成されたシンプルかつ機能的なケージシステムで、サイドアームの数はその使用によって増やす事ができる。

CGE03_e_VF.jpg

また同社のカメラストラップ「LEVO Camera Strap Kit」を使用すれば、RED EPIC/SCARLETをDSLR風に持ち歩くことも可能だ。

GoPro×Technicolor=protune

CGE03_f_GoPro.jpg

NAB 2012でも更なるブース拡大を果たしたGoProがついにCine Gear Expoにも登場。しかもシルバースポンサーとなって入場パスのネックストラップも提供しているほど浸透率が高い。そのGoProがTechnicolor社のCinestyle開発チームと共同開発したフリーダウンロードソフトウェア「protune」は、HD HERO2カメラ用にLogカーブでのカラープロファイルを設定できるソフトウェア。35Mbpsのデータレートで圧縮を感じさせない画質と自然なカラープロファイルを実現、またポストプロダクション等で使用されるプロフェッショナルなカラーコレクションプロセスとも互換性を持ち、DIなどのカラープロセスでより大きな露光範囲を得られる。

また過度なシャープネスやノイズリダクションの調整を軽減でき、ワークフローに柔軟性を持たせることができる。ソフトはGoProのサイトからフリーダウンロード可能で、さらにCineForm Studio Premium($299)もしくはProfessional($999)であれば、より広範囲な色補正が可能で、プロユーザーのためのカスタマイズ自由なプリセットが提供される。ちなみにGoProは、すでにLAX(ロサンゼルス空港)の免税店街に並ぶ売店でも販売されており、その守備範囲の広さにも驚かされた。

年々進化するEVF

CGE03_g_ALPHTRON.jpg

1920×1080で1,540fpsまで撮影可能な高性能小型ハイスピードカメラとして注目を浴びる、Phantom MIRO M320S。その上部についているのは、ALPHATRON社製の新型EVF「EVF-035W-3G」だ。年頭に登場したTVLogicが製造元のこのEVFは、HD-SDI/HDMIのI/Oが各1(計4つ)でHDMIからHD-SDIへのコンバージョンアウト有り、3.54インチ/960×640/16:9、24bit RGBディスプレイは、ブライトネス、コントラスト、色温度、シャープネスなどの基本機能のほかスキャンモード、ユーザーアスペクトのマーカー、ズーム、HDビデオの3Gレベル(A/B)等々…現場で必要な調整がほぼ全て可能な仕様となっている。メニューはダイヤル式で4つのファンクションボタンに機能割り付けも可能。ちなみに2月の発売以来人気の商品で品薄が続いており、LAの機材ショップでは次回の入荷は7月以降の見込みだそうだ。価格は$1,395(約11万円)。

Blackmagic Cinema Cameraの周辺機材が早くも登場!

CGE03_i_BMCChandle.jpg

会場の一角のワゴン1台のみという小規模だが、NAB 2012で話題を独占した噂のカメラ、Blackmagic Cinema Camera(BMCC)専用のハンドルやリグが早くも登場!Blackmagic Design社本体もCine Gear Expoには参加しておらず、BMCC筐体自体を会場で見かける事は無かったのだが、 ここでは段ボールで作った特注モックアップとともに展示!このCINESTAR INDUSTRIESという小さなメーカーが出して来たのはBMCCの上部に取り付けられる、ハンドル位置を180度回転させてポジショニングできるグリップハンドル「180° ROSETTE TOP HANDLE」。これは5D MarkⅡや7Dにも活用でき、ホットシューからのクイックリリース用専用クランプまで用意されている。また両手持ち用の「LEATHER ROSETTE HANDLES」はグリップ部が360°回転、どちらの製品もグリップ部はレザー(合皮)仕様とちょっとユニーク。

CGE03_h_CINESTAR.jpg

txt:石川幸宏 /猪蔵 構成:編集部


Vol.02 [Digital Cinema Bülow] Vol.04