この10年、制作ツールのデジタル進化によって撮影スタイルにも様々な変化が生じている。カメラもデジタルカメラが一般的になり、筐体も小型でフィルムカメラに比べて取り回しもしやすくなったことで、新しいアイディアの特機や周辺機材の工夫から個性的な撮影が誰でも出来るようになってきた。EOS 5D MarkⅡの出現やGoPro HD HEROなどの登場でその幅がまた大きく広がったが、それらで撮影されたフッテージがプロ・コンテンツにも実際に活かされるようになって、新たな特機や周辺機材を考案する人自体が増えたことも明らかだ。またこれまでの特機というジャンルに当てはまらない個性的なアングルや画角、フレーミング・ポジションなどからの映像も見受けられるようになっている。Cine Gear Expoには毎年、そんなオリジナリティを活かした撮影を可能にする特機が出品されるのも楽しみの一つだ。今年もまた新たなメーカー、製品、アイディアが軒を連ね、映画製作者のクリエイティブマインドを刺激していた。

エアリアルシューティン

CGE04_a_RADFLIGHT.jpg

このところ多くの展示会で一番人気を呼んでいるのがこのラジコンヘリによる撮影システム。最近はスポーツイベントなどで大型クレーンや長距離スライダーでは撮影不可だった、極端なクレーンアップ風の映像などを目の当たりすることも多くなったが、その映像の張本人がこれだ。先に行われた韓国のKOBAショーでも何社か韓国メーカーのモノも展示されており、いまや世界中の様々なメーカーから多種多様な製品が出ているようだ。

CGE04_b_REDBARON.jpg

仕組みは4枚〜8枚のプロペラ駆動でジャイロシステムを積んで安定した飛行が可能なラジコンヘリである。Unmanned Aerial Vehicles(UAV:無人飛行装置)とか、FLIGHTING ROBOTやQUADCOPTERと呼んだりと名称は様々あるようだが、Cine Gear Expoで話題となっていたのはRADFLIGHT社のRED EPICを搭載して空中撮影が可能なその名も『RED BARON』。8枚のプロペラ駆動でかなりの高度(安全操縦の圏内は4〜400 ft=約1.2m〜122mまで)まで上昇可能でGPSによるコントロールもできるという。価格は仕様によって様々で、この現行最大クラスの仕様だと200万円くらいだとか…。

LEDビッグライティングの進化

CGE04_c_airstar.jpg

今年のCine Gear Expoのプラチナスポンサーでもある、Airstar Film Lights社は、1997年からバルーンライトを専門に製造販売しているライティング機器メーカーだ。現在35カ国の映画撮影現場等で使用されているという。毎年、Cine Gear Expoのエキシビションでは、初日が夕方の4時から夜の9時、2日目は朝9時から夕方5時という変則的な開催になっているが、夜の時間帯に展示時間を設けているのは、屋外でのライティング効果を実際に見せる為の配慮でもある。

CGE04_d_spaceinvader.jpg

今回Airstar Film Lightsの新製品は四角いライティング天井となる「Ceilair」、そしてもう一つは会場内で一躍注目を浴びていたその名も「Space Invader(スペースインベーダー)」!直径5mはあろうかという巨大な円盤状のバルーンライトがオールドNYシティのど真ん中に登場。同社でも過去最大級のバルーンライトだそう。その下では各種ドリンクが楽しめる”Cine Gear Bar”が夜遅くまで開店していた。

ZACUTOから新発想、トルネードグリップ登場!

CGE04_e_ZACUTOTornado.jpg

2000年にシカゴの機材レンタル&機材販売会社としてスタートしたZACUTO。Jens Bogehegn、Steve Weiss、Mandy Rogersという、ビデオ、写真、フィルムのジャンルで長年活躍して来た3人のベテランデザイナーによって設計されているパーツ群は、すでに世界のスタンダードとなっている。DSLRムービーの隆盛以降、さらに各地の展示会でも常連で老舗の貫禄を見せているが、そのZACUTOも展示会ごとに新製品を出してくる。

CGE04_f_ZACUTO.jpg

今回はキヤノンC300用のリグシステム「C300 Recoil」と、そのセットモデル内でも使用されている、手元でフォローフォーカスコントロールが可能なカメラグリップ&コントローラー「Tornado Grip」。その名の通り竜巻というか、巻貝のような形状のラバー製グリップで握りも良く、しっかりとフィット。またグリップ上部にダイヤル式のフォローフォーカスが付いている。先のNAB 2012でVideomaker誌から、Best of NAB 2012/Best Support Awardを受賞していたが、デザインも機能もユニークな製品だ。いずれもまだ試作段階で価格と発売時期は未定。

今年のトレンド、ワイヤレスモニター

CGE04_g_iKan.jpg

今年は会場の随所でワイヤレスモニターを見かけた。ロケ現場でカメラが小さくなるとどうしても難しいアングルからの撮影が求められてくる。その中でディレクターはもちろん各スタッフが映像を確認するためのモニターは場所を選ばない物が望ましい。ikanの「MR7 Director’s Kit」は、7インチのHD液晶パネルを要した収録機能付きMR7モニター(2K入力、HD-SDI、HDMI、CVBS)に上部等にワイヤレストランスミッター(別売)を装着できる優れもの。内部メモリーは4GBだがSDカードスロットがあり、SDカードへの収録で32GBまで拡張可能だ。ikanからはもう一つ、リアルカチンコにiPadをはさみ込んで、リアルカチンコの”アクション!”に反応してiPadのカチンコソフトが動く新製品なども展示。

高品位NDフィルターの進化は日本企業

CGE04_i_TrueND.jpg

すでに国内で発表されているので日本ではお馴染み、三友が開発したNDフィルター『TRUE ND』がCine Gear Expoにも登場。蒸着製法を採用しカラーシフト(色転び)がほとんど無く、高精度の透過率で正確な色再現を実現するNDフィルター。濃度の高いNDを使用する際でも赤外領域750nmまでフラットな透過率を維持できる。ND濃度は0.3/0.6/0.9/1.2/1.5の5種類。サイズと価格は4×5.65で6万円、6.6×6.6は8万円で国内販売。海外での販売はBandProから。

txt:石川幸宏/猪蔵 構成:編集部


Vol.03 [Digital Cinema Bülow] Vol.05