txt:江口靖二 構成:編集部

筆者はもともとテレビ業界の人であるが、最近はAIやブロックチェーンにも手を染めてしまっている。こうして17年ほど連続でCESに参加していると、いよいよ本当のイノベーションが我々の社会で確実に進展しつつあると思う。

最初にあまり良い方法ではないのは承知だが、CESをカテゴライズすると以下の11ジャンルになる。これはCESのWEBでの分類だ。この11の区分けに意味があるのではなく、カバー範囲の広がりという意味で列記しておく。

  • 5G AND INTERNET OF THINGS(IOT)
  • ADVERTISING, ENTERTAINMENT & CONTENT
  • AUTOMOTIVE
  • BLOCKCHAIN
  • HEALTH & WELLNESS
  • HOME & FAMILY
  • IMMERSIVE ENTERTAINMENT
  • PRODUCT DESIGN & MANUFACTURING
  • ROBOTICS & MACHINE INTELLIGENCE
  • SPORTS
  • STARTUPS

範囲がとにかく広い。CESはConsumer Electronics Showの略だったのだが、昨年あたりから主催者は「CES is CES」だと言いはじめた。確かにコンシューマーエレクトロニクスとかデジタル家電という範疇ではカバーしきれない領域に年々増殖を重ねているからだ。

ではこうしたカテゴライズ軸を踏まえながらも、CES2019を4つのポイントにまとめ直してみる。

その1.映像視点

LGの8KナノセルTV

言うまでもなく、テレビはCESの主役ではない。CESだけではない、産業としてもそうではない。だが視覚に訴える映像は言うまでもなく必要不可欠だ。今年は8Kに言及する企業が大幅に増加した。それらの多くは中国と韓国系だ。すでにディスプレイのマーケットは14億人の人口と、1%だとしても1400万人の富裕層がいる。市場を牽引するのはこちらだ。8Kが来るとか来ないとかではなく、SDからHD、HDから4Kの経過を見ればわかるように、好むと好まないにかかわらず8K化する。これは8K放送がうまくいく、いかないないの話とは別次元でだ。目先は超解像技術がどうにかしてしまう。この流れの延長線上として、360リアリティオーディオも開発が進むと思われる。

ソニーの360リアリティオーディオのデモ

その2.自動運転

BYTONのカテゴリー3の自動運転車

自動運転とオートノマスビークルは整理して考えたほうがいい。前者は運転からの開放であったり、交通事故の減少という方向性。後者は人や物の移動をスマートにするというもっと根源的な話だ。自動運転のもとでは人は車内で何をするのか。このテーマに対しては、クルマの中で映像を見るという提案が少なくない。これは車酔い対策にかかっていると思う。

DENSOのオートノマスビークルのデモ

その3.話題先行だが油断できない

クアルコムの5G

5Gは世界中で先物食いをしすぎた。リアリティになるまでにはあと2年ほどは必要だ。ここで安心してはいけない。AIについては2極化が激しい。何でもかんでもAIを謳うものがあるのは事実だが、ディープラーニングが想像以上に進化していることを知っておく必要がある。ブロックチェーンはまだ5GやAI以上にまだまだ概念的なものにとどまる。この領域はCESではまだ具体的にカバーできていない。東海岸中心のスタートアップがどれだけ成果を出せるかにかかっている。

インテルが買収したMovidiusのVision Processing Units(VPUs)

メディア&エンターテインメントにおけるブロックチェーンがテーマのセッション

その4.グローバル視点

LGのキーノート

LGが一人で元気だ。キーノートは総花的ではあるが、上流から下流まで一社で全部手がけようとしている唯一の会社と言ってもいい。一昔前の日本企業を彷彿とさせる。そんな中で、情報鎖国中の中国がじわじわ来ている。Baidu、JD、BYTONはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)以上に注目しておく必要がある。ファーウェイの件からもわかるように、世界はIT大戦に突入しているくらいに考えておいた方がいい。

こんな中で、もちろんニッポン頑張れなのだが、CES会場の日本勢スタートアップはニホンジンだけ群れを作りがちだ。LGがそうであるように、ブースにガイジンだけを立たせるくらいの過激な発想があってもいい。

JD.comのブース

J-Startupのブース

PRONEWS読者の多くは映像のプロフェッショナルだと思う。8Kが来るとか来ないとかではなく、本当のガラポンがやって来ると、オオカミ少年的に言っておきたい。そしてオオカミはいつか必ず来てしまうのだ。

txt:江口靖二 構成:編集部


Vol.011 [CES2019] Vol.01