昨年に続きSXSW XR EXPERIENCEはどうだったのか?
この3月11日から20日までの10日間、SXSW2022が開催されました。今年はリアルとXRの同時開催リアルは2年ぶりの開催となり、開催地であるアメリカ・テキサス州オースティンの街は、大いに盛り上がったようです。
筆者は去年同様XRのみ参加。VRChatを中心に開催された「SXSW XR EXPERIENCE」をレポートします。
今年もオースティンの街並みが再現されたメタバースが登場。広い去年とうってかわり、今年のCongress Avenueは縦に長い、階層構造を持ったデザインのWorldです。ところどころ設置されたエレベーター(写真青い透明のチューブ)へ乗り込むと別会場へ移動できるゲート(ポータル)の前に瞬間移動するという。エレベーター以外にも、巡回タクシーをボタンひとつで呼び出せたり、メアリーポピンズのような空飛ぶ傘が用意されていたり、お楽しみギミックが用意されていました。
エントランスとなるCongress Avenue以外の会場は、テクスチャ(カラー)を少し変えた形で去年のデザインがそのまま踏襲されていました。
メタバースでは「メタバース」「Web3」「NFT」まつわるテーマが多く語られた
出展スポンサー及びいくつかの体験型XR作品は、VRChat内に独自会場(ワールド)を設置。各プログラム開催日時に応じて会場へジャンプするゲート(ポータル)がCongress Avenueに出現しました。日本からもVRメタバース関連製品を販売している株式会社Shiftallが出展し、日本のアーティストによるパーティクルライブ(音楽に合わせた光の演出ライブ)が開催されました。
The Contemporaryでは去年に引き継ぎ複数のトークセッションが開催。今年は「メタバース」「Web3」「NFT」まつわるテーマが多く取り上げられており、中核事業をメタバースへ切り替える舵きりを行ったMeta社(旧Facebook)の発表以降、世界的な関心の高さが窺えます。
「Ferryman Collective」によるVRシアターショーを語るトークセッションの後には、チームによる出展ワールド「Gumball Dreams」の案内がありました。ゲートをくぐれば目的地にひとっ飛びできる広報活動は、VRならではの試みではないでしょうか。
セッションやスポンサー展示が中心のVRChatとは別に、SXSW2022 FILM FESTIVAL受賞作品のXR展示会場として用意されたのが「VAST」です。北京のプロダクション「Sandman Studios」によるVR展示会プラットフォームで、Unreal Engineで構築された細密なグラフィックはVRChat会場とはまた違うリアルな世界観がありました。
2D映像作品は併設された動画プレイヤーから再生し、体験型VR作品はポスターからアプリを起動します。18作品のポスターが街中に展示されているので、美術館を巡るように作品を楽しむことができます。
強く記憶に残った「Komez Alef O」は、ユリア・イッサーリス(Ioulia Isserlis)による、ホロコーストを題材にしたVR作品。戦争のトラウマ、故郷から強制的に追い出されたトラウマを、サバイバーである実父ザルモン・Aによる音声記録をベースに辿る作品です。VRは2次元の画面の鑑賞とは比較にならない臨場感が伝わるため、ナラティヴ・アプローチに最適であることを再確認しました。
メタバースの中でも交流が
United For Peace in Ukraine
United For Peace in Ukraine 🇺🇦
— ぴちきょ🌐『仮想空間とVR』『VRChatの歩き方』 (@pichikyo) March 19, 2022
DJ @m1notor によるチャリティーパーティーへ!このWorldを作ったのがフランスのチームS1NTDNSということもあり?とにかくフランス人率が高い🇫🇷 向こうは夜中。かなりへべれけでハッピーなパーティでした😉#SXSW2022 #SXSW #SXSW日記 #VRChat @sxsw pic.twitter.com/WSW5H54Mzc
去年に比べネットワーキングが少なかったのは残念ですが、フランスのVISIVプロジェクトによるテクノDJパーティーが開催されました。「United For Peace in Ukraine」。ウクライナの平和を祈るチャリティーイベントです。フランス人の参加が多く、盛り上がりました。
興が高じて始まったのは日仏ダンスバトル。日本からは去年のSXSW XRのダンスコンテストで優勝したYoikami氏がパフォーマンスを披露しました。バトルの後は強く抱き合って互いの健闘をたたえあう、平和を願うチャリティーにふさわしいシーンに立ち会うことができました。
PCやVRに関するリテラシーが高めの自分でも情報のキャッチアップが難しかったSXSW XR EXPERIENCE。英語の関連Tweetを漁りながらXR側のプログラムを調べましたが、今年もなかなか難易度の高い参加になったように思います。
交通費や滞在費の必要もなく世界中からアクセスできるのがVRイベントの良いところ。せっかくリアルイベントが再開したのであれば、来年はリアル会場とXR会場を双方配信で繋げるネットワーキングなど、シナジーのある企画を期待したいところです。