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SXSW2022期間中の3月13~15日の3日間、オースティン現地ではXRコンテンツの展示会"XR Experience Exhibition"が開催されました。Film Festivalの一環として行われるこの展示会は、SXSWのメイン会場であるAustin Convention Centerに隣接するFairmontホテルにて行われました。体験可能なVRコンテンツの他にも、企業によるラウンジでのプロモーションや、映像系のアート作品の展示も行われ、様々なXRコンテンツが今年はこのFairmontホテルに集結していました。

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XRコンテンツが集まるFairmontホテルは、空中の連絡通路でAustin Convention Centerと繋がっています
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会場外のラウンジにはQualcomm/Snadragonによるアバター自動生成アプリの体験コーナーを設置。来場者の写真を元に3Dアバターを自動生成し、自分のスマホに転送してくれます

照明が落とされた薄暗い展示会場内では、いたるところでVRヘッドセットを頭に付けた人がそれぞれ異なる映像体験をしている不思議な空間が広がっていました。展示会場内には全部で約30点の作品がありましたが、人気のブースには常に長蛇の列ができていて、体験までに1時間以上の待ち時間が発生するコンテンツもありました。

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展示会場内の様子

移動しながら体験するインタラクティブなVRコンテンツが人気

特に人気だったのが「Goliath:Playing with Reality」と「Persuasion Machines」の2つのブースでした。座って体験するVRコンテンツが多い中で、この2つはブース内をヘッドセットを付けた状態で移動しながら参加する必要があります。体験中の人々もブース展示の一部とすることで周囲の目を引くように設計されていて、特に注目を集めていました。

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Persuasion Machinesの体験ブースの様子。1度に3人がブースに入りそれぞれヘッドセットを付けて動き回るので、ぶつかりそうになるとスタッフが誘導してくれます
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Goliath:Playing with Realityの展示ブースには長蛇の列。1度に6人がゲームを体験できますが、プレイ時間が25分もあるのでなかなか順番が回ってきません

VRコンテンツへの没入感を左右する視聴する場の空間作り

もう一つ印象的だったのが、VRドキュメンタリー"Choctaw Code Talkers 1918"のブース設計です。第一次世界大戦当時のストーリーに合わせて、軍事用テントの中で兵士の恰好をしたスタッフが案内をするという世界観の作り込みが見事でした。視聴後にVRヘッドセットを外した後も、現実世界とのギャップが少なく感じられるため、VRコンテンツの視聴において空間作りは非常に大切だと感じました。

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ライブエンタメとVRコンテンツの融合による商業化の兆し

同じく行列を作っていたのが、AMAZE VRによる"Megan Thee Stallion:Enter Thee Hottieverse"のブースでした。アメリカの人気アーティストMegan Thee StallionのVRライブ映像を、ライブ会場の最前列より更に近く、まるで自分もステージ上にいるかのような距離で体験することができます。更にこの作品は実際の音楽ライブと同じように、4月から全米の各都市を回るツアーをするそうです。ライブエンタメビジネスの新しい形として、VRライブ体験がどの程度の収益を上げられるのか、今後も注目してみたいと思います。

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まとめ:アフターコロナのVR展示会の体験設計

2020年の開催中止、2021年の完全オンライン開催を経て、3年ぶりにオースティン現地で開催される事になった本展示会では、SXSWのクリエイティブとテクノロジーが融合するXR部門の人気ぶりを感じることができました。クリエイターから直接作品の説明を受け、作品に込められたメッセージを感じる事ができるという点は、やはりリアル展示会の醍醐味だと思います。

しかしVRヘッドセットという視聴方法のために、かなりの待ち時間が発生してしまうというもどかしさも同時に感じました。昨年のオンライン開催時には、自分のVRヘッドセットで好きな場所・好きな時間に体験できるという大きな利点を感じてしまったために、逆にリアルの不便さが一層際立ってしまったように思います。アフターコロナのVR関連の展示会では、オンラインとリアルそれぞれのメリット・デメリットを考慮しながらの体験設計が今後の課題となりそうです。