SXSW期間中は多くの企業がユーザーとの接点をつくる「アクティベーション」を行なっている。ドイツの光学機器メーカーであり、シネマレンズでお馴染みのカール・ツァイス社(以下:ZEISS)もその一つだ。この記事では、いかに企業がSXSWでユーザーとの接点を作り、魅力的なブランドを作り上げているかをご紹介するために、ZEISSのアクティベーションについて深くレポートする。
SXSWフィルム部門とは?
延べ40万人を超えるクリエイティブなプロフェッショナル達が行き交うカンファレンス&フェスティバルSXSW。インパーソンで行った2019年のデータでは、フィルム部門には9日間で73000人が参加。8500近い応募作品の中から、長編・短編あわせて250を超える作品がスクリーニングされた。2022年も多くのフィルムが上映中である。
フィルムクリエイターはもちろん、バイヤー、メディア、タレント、コンテンツ・テクノロジー企業まで、様々な領域のプロフェッショナルが集まっている。フィルム部門の他にも、多くのテック企業が参加するインタラクティブ部門、音楽関連企業が参加するミュージック部門があるが、近年はそれらが融合した「コンバージェンスプログラム」が人気となっている。
SXSWは「What’s Next?」を探しにくる人がほとんどだ。なぜ100年以上続く老舗のメーカーであるZEISSが、毎年SXSWに挑戦をするのか?そしてどのようにクリエイターとの接点を作っているのか?その二つを分析してレポートする。
戦略0:展示会(Creative Industories Expo)に拠点をつくる
毎年7万人以上が訪れるSXSW最大の展示会「Creative Industries Expo(旧名:Tradeshow)」。ZEISSは毎年ブースを構えているが、2022年はレンズのショーケースと簡易的なスタジオを設置していた。
SXSWに来る日本のフィルムメイカーにお勧めしたいのはどの製品か?と聞くと、既に簡易スタジオに設置されていた「Lightweight Zoom」をお勧めしてくれた。性能が高いのに軽量で操作しやすい設計になっており、コストパフォーマンスに優れているため、シネマレンズに入門するクリエイターに向けてもお勧めしたい製品のようだ。
戦略02:セッションでクリエイターと一緒に「シネマトグラフィー」を議論する
ZEISSは今年カンファレンスセッションも主催した。「ZEISS Talking Cinematography」というタイトルで、今年スクリーニングをしている作品のシネマトグラファー3人を招いたパネルセッションだ。
オープンマインドで、未来に向けての議論を共有するのがSXSWコミュニティのモットーであり、その考え方にフィットするセッションが盛り上がる傾向にある。プロダクションフェーズの専門的な話がメインだったが、特にZEISSの機材の話に限らず、フィルムクリエイターや制作機器ブランドすべてへの敬意を払いながらセッションを進行していた。非常にSXSWらしいセッションの設計で素晴らしかったと言えるだろう。
戦略03:ディナーパーティを開き、クリエイター同士の交流の場所をつくる
ZEISSは「ZEISS & Friends Film Meetup」というパーティも主催していた。
SXSWではクリエイター同士のコミュニケーションの場をブランドがホストすることは多いが、よりコミュニティに特化していた印象を受けた。展示会よりもフランクに、セッションよりも身近に、ZEISSのスタッフともコミュニケーションを取ることができる場所としてうまく設計されていた。
展示会よりもフランクに、セッションよりも身近にZEISSのスタッフともコミュニケーションを取ることができる。SXSW公式イベントとしてスケジュールにリストしているため、フィルム業界以外の人も参加しており、異業種間のコミュニケーションが行われていた。
SXSWでクリエイターに愛されるブランドをつくる秘訣
SXSWはカンファレンスセッション、スクリーニング、ミュージックショーケース、展示会、企業のアクティベーションなどコンテンツが沢山あり、初めて参加される方は迷子になりがちである。そんな中でZEISSは様々な所にタッチポイントを作り、うまくコミュニティを囲い込むことに成功していた。
2023年には、このような形でたくさんのタッチポイントを作り、よりSXSWコミュニティに愛される日本のブランドが多くなることを願っている。