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2022年のSXSWは初のハイブリッドの開催となっている。日本からの参加はほとんどがオンラインだが、すでにCovid-19は収束したかの如く、オースティン現地は3年前と同じような空気感であふれている。巷ではメタバースがパワーワードだが、今回は、IRL(=現実社会)だからこそ感じ取れる最新のコンテンツテクノロジー体験について、いくつか紹介していこう。

音響ソフトウェアのSpatial:アーティストやコンテンツ企業とのコラボで新しい音響体験を提供

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SPATIAL holodeckはオースティンコンベンションセンターの目の前だった

2017年設立の音響ソフトウェアをつくるスタートアップSpatial社は「Holodeck」という大きなハウスをコンベンションセンターの近くに立ち上げた。没入型の音響に強みがあるSpatialは、アーティストやコンテンツ企業とのコラボレーションを通じて、自分たちのサービスの強みを積極的にアピールしていた。

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Meow Wolfの体験型施設。独特の世界観で色彩に飲み込まれる

アメリカの人気クリエイターMeow Wolfと協業し、彼らが手掛ける独特な世界観の体験型インスタレーションをHolodeckに隣接した形で発表。Meow Wolfのインスタレーションはアメリカ各地をまわっているようだが、オースティンでの展示は今回が初めてのようだ。

夜にはナショナルジオグラフィックともコラボレーションを行い、ハウス内で上映会を開催していた。非常に人気で行列が長く、筆者は入ることができなかった。

その他にも、音響に関わる複数のセッションをHolodeck内やコンベンションセンターで行なっていた。

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holodeck内でのセッションの様子。CEOがセッションの合間にビジョナリーな発言をして好印象だった

音響映像サービスDolby.ioラウンジ:Covid-19により加速する音声技術開発

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JWマリオットホテルに設置されたDolby.ioのラウンジ

オーディオ&ビジュアルソリューション大手Dolbyは、開発者向けのソフトウェアライブラリサービスDolby.ioのラウンジを設置した。メディアやコンテンツ系の著名人がセッションを行う部屋の近くにラウンジを設置しているため、多くの人の目に触れたのではないだろうか。Dolby.ioの製品自体はエンジニア向けの商材ではあるが、実際のデモも体験できるようになっていた。

もともとはpodcastなどのオーディオコンテンツ市場の成長を想定して研究・開発されていたものだったが、パンデミックを通じて今が好機と捉えられるようになったとスタッフは話している。というのも、リモートワークなど含め「ビデオ」へのニーズが非常に高まっており、相乗効果でオーディオに求められる技術やサービスが広がってきているそうだ。

SXSWも3年ぶりのインパーソンイベントということもあり、デモとしての共感度が高く、自社の技術をうまくアピールできていたのではないかと思う。

Foxが設立したNFTスタジオBCL:今年のSXSWは5分歩けばWeb3に当たる?!

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オースティンコンベンションセンターの目の前にできたBlockchain Creative Labsのハウス

Foxが設立したNFTスタジオ「Blockchain Creative Labs」は、SXSW2022のスーパースポンサーとなった。大きなハウスを立てたり、セッションを行なったり、ライブをホストしたり、SXSWのNFTショップをオープンしたり…と、次々とSXSWをNFT色に染めていた。

XR関連の大型イベントも相まって、オースティンの街中を5分歩けば、NFT/Metaverse/Blockchain/Web3…といったキーワードが目に入るくらいだっただろう。毎年発表されていたSXSWのブレイクアウトトレンドの発表が今年はなかったが、間違いなく今年人々が一番見かけたトピックは、Web3関連のものだったのではないだろうか。

しかし、SXSWではこのWeb3についての議論はかなり前から行われている。ブロックチェーン・トークンエコノミー・スマートコントラクトなど、2016年くらいから話の焦点を変えながらも盛り上がりを見せていた。果たして今までとは何が違うのか?

それは、今年は明らかに「フェーズが変わった」からだと筆者は考えている。セッションの登壇者も今までのようなエンジニアではなく、使い手であるクリエイターが多かった。まさにすぐにきそうなWhat’s Next?で、爆発寸前の勢いといった感じである。2013年頃の3Dプリンターによるメイカームーブメントと、空気感としては近いように感じた。

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SXSWにあわせて開催される非公式のイベントも多かったようにも感じる。このようなNFT系の勝手イベントのチラシも多く見かけた

VRを使ったシミュレーション系スタートアップが元気!

Web3の裏で、ひっそりと熱を感じていたのが、VRによるシミュレーションのスタートアップである。SXSWでVR系のスタートアップが出始めてきたのが2014-15年頃。その後は、セッションやアワードを通じて様々なトライアルを目にすることが多かった。

今年のSXSWでは「シミュレーション」に特化したVRサービスが増えてきているように感じた。教師向け/撮影者向け/医者向けなど、様々な対象に向けたシミュレーションサービスだ。

以前からもこのようなVRを活用したシミュレーションを手掛けるスタートアップはあったが、今年は確信を持って「有効である/実感が伴っている」というフェーズに移っていたように感じる。

SXSWコミュニティはここ数年、一過性の盛り上がりになってしまう「Hype」をしっかりと見極めて距離感をとっている。このVRを活用したシミュレーションは、HypeではないVRの活用方法として定着してきているようだ。

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精神的なケアが必要な患者との接し方を、VRでシミュレーションできるAEGROS。医者や医療従事者向けに作られており、患者側のアバターはAIではなく、人間が演者となってアバターを動かす。このような人間が演者となってアバターを動かす形式のスタートアップは今年のSXSWで多く見かけたVRスタートアップのやり方だった
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動画撮影者向けのCGシミュレーションのCyclops AR。プロユース仕様なのに、iPadだけで完結する。NetflixやHBOなどもクライアントだそうだ

コンテンツテクノロジーとクリエイターが交わる交差点、SXSW

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毎年進化を続けるSXSWだが、今年は更に様々なコラボレーションが行われていた。ショーケースに出演するミュージシャンがアートプログラムの作品を使ってライブを行ったり、NFT企業がミュージシャンのハイブリッドライブをプロデュースする…など、まさに収束(=コンバージェンス)を改めて象徴する年だったと言えるだろう。

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韓国出身のLAのミュージシャンCIFIKAと、ライティングデザイナーのAlex Griffは、極省スペースのプロジェクションマッピングの技術を用いて、インスタレーションライブを行なった。SXSW Art Programとしてリストされた
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UKがベースのクリエイター集団のMiro Shotは、ヘッドマウントディスプレイをつけながら体験するVR&ARバンドライブを行なった。

VISIONGRAPH Inc.は、イノベーションリサーチとコンセプトメイキングが強みの、戦略デザイン会社です。複数年にわたったSXSWのレポートなどにご興味のある方は是非問い合わせを。

また、SXSW Japan Officeとして日本から出展する企業のアカウントマネジャーの役割も担っている。もしアクティベーションに興味がある方がいたら、SXSW Japan OfficeのWEBサイトから是非問い合わせをして欲しい。