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CES 2024でのXRデバイス体験はこれ以降の指標となる

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Apple Vision ProがCESに登場?実はスタートアップEmdoorのデバイス

今年はApple Vision Proの発売も予定されており、XR技術が加速度的に進化する一年になると予想している。そうした未来を見据え、CES 2024でのXRデバイス体験は非常に価値があると考えている。

未来を振り返る「バックキャスト」の手法を用いれば、体験したことが今後の技術の分岐点や進化の可能性を感じさせる貴重な指標になるだろう。そのため、XRブースを入念にチェックし、最新のトレンドを把握したのでその内容をお届けしようと思う。

XR関連はラスベガスコンベンションセンターの一角に展示されていたのだが、昨年までの「メタバース」という言葉は姿をひそめ、その代わりに「空間コンピューティング」というキーワードが印象的に目に入ってきた。Apple Vision Proも空間コンピューティングと謳っているので、その影響だろう。

キーワードだけではなくデザインにもApple Vision Proは影響しているようで、スタートアップEmdoorのデバイスは一瞬、Apple Vision Proが展示されているのかと目を疑った。

メガネ型XRには様々な種類があるが、ここでは屋内利用と屋外利用の2分類に分けて紹介していく。

屋内利用

まずは小型でインパクトが大きかったのがキヤノンのMRコンセプトモデルだ。本体は50グラム以下、片目でフルHD相当の解像度で見ることができる。

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用途に合わせてメガネ型にも双眼鏡型にもできるし、今後ヘルメットやゴルフの帽子など、ユーザーのニーズに合わせてこの小型MRデバイスを装着させていくコンセプトらしい。価格は未定。

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デモではCanon EOSカメラをオンラインで購入する際に、プロダクトをリアルサイズで確認できるというもの。XREALのような視野角の広さはないが、自分が欲しい情報がレンズの中心に来て確認できる。ユーザー調査をしているなかで「カメラのファインダーを覗く際、視野角が広すぎると撮影しづらい」という声を拾い、今回のMRデバイスでも視野角を広げるところは注力しなかったそうだ。

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XREAL

ARグラスとして、今回必ず試したかったのはXREALだ。330インチ大画面相当で、3画面のマルチウィンドウ環境が首を左右に動かすだけで見ることができるNebulaを試してみたかったのだ。私は普段MacBook1台で作業をしているのだが、このXREALをかければマルチウィンドウ作業が楽になりそうなので、仕事用に買いたくなっている。もちろん仕事用だけではなく、映画館で見ているような3D空間での映画視聴体験のデモ体験も新鮮だった。

ケーブルに繋がれてはいるしがらみはあるが、重量は72グラムで、首が疲れずに映画視聴できるのも良い。ただ、難点はグラス型なので光や他の情報が入ってきてしまうので没入体験にはちょっぴり遠いと言う点だ。もちろんザワザワしているイベント会場で試すのと自分の家で試すのは違うと思うが、やはりメガネ型は開放感がある分、没入体験というよりも便利体験を優先するのが良いのではないかと思ってしまう。

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Jorjin

そして、ノーマークだったが、台湾のJorjinだ。これは韓国のLetinARレンズを採用し、ソニーのOLEDをライトエンジンとして活用しているそうだ。80グラムで、解像度は1920×1080。見え方が綺麗だからだろうか、私が試している間中、非常に有名なグローバル企業の方がずっと話し込んでいたのが印象的だった。

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ちなみに、スマートグラス向けレンズ開発のLetinARはシャープとも光学エンジン技術開発で協業している。

屋外利用

かつてGoogle Glassが出てきた時にワクワクしたのは、スマホのながら歩きから解放される生活だった。今それを一部実現しているのがレイバン・メタであり、Amazon Echo Framesかもしれない。レイバン・メタは米国出張中に愛用している。

カメラ、スピーカー、マイクがついているので、ハンズフリーで撮影やコミュニケーションが可能だ。今回CESにてAmazon Echoを初めて試させてもらった。こちらはスピーカーとマイクのみだが、お馴染みの「アレクサ」で起動して必要な情報を取ることができるのでスマホいらずで必要な情報を得ることができて便利だ。

EverySight

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またイスラエルのEverySightもGoogle Glassの正常進化版かもしれない。ソニーのカラーOLEDディスプレイを採用し、プロジェクションすることにより屋外での視覚によるナビゲーションを実現している。

最大8時間利用できるようで、マラソンやサイクリングなどのスポーツシーンでも使えることを目指している。2024年初夏にリリース予定らしい。

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没入体験

ここまでは機能面を重点的にお届けしたが、没入体験もXRの魅力の一つである。キヤノンはボリュメトリック技術と組み合わせてスポーツ観戦のMR体験を提供していた。バスケットボールの試合をテーブルトップで見る体験や、プレイ中のコートに入り選手のダイナミックな活躍を等身大に感じることができる体験だ。

VIREWIRX

すでに日本ではプロ野球ジャイアンツの試合を日本テレビがボリュメトリック映像放送をする実例はあるが、今回のCESでは、来場者一人ひとりが自分の好きな角度から参加できる体験を提供していた。10秒弱の遅延でボリュメトリック映像を会場に転送する技術はVIREWIRXと組み実現している。ミリ波/60GHzで転送が可能なので、Wi-Fiに頼らずCESのような回線混乱する場所でもボリュメトリックの重い画像がVRゴーグルの中でスムーズに体験できた。

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少しXRからはずれてしまうがメルセデスベンツやドルビーも没入体験を提供していたので最後に紹介したい。

「MBUX SOUND DRIVE」

ウィル・アイ・アムのチーム。左から二番目が、ウィル

メルセデスベンツはラッパー・プロデューサーのウィル・アイ・アムと組み新たなAMG車内空間でのサウンド没入体験を提供していた。「MBUX SOUND DRIVE」と呼ばれるもので、車がバーチャルな楽器となりブレーキ、ウィンカー、ハンドルなどの操作に合わせて流れている音楽のエフェクトが変わる。

エンジニアとミュージックエンジニアがコラボして生まれたMBUX SOUND DRIVEは本当に素晴らしい。MBUX SOUND DRIVEは環境やスピードに合わせて同じループして音楽聴いていても違うように聴かせてくれるんだ。聞くだけじゃなく音楽をクリエイトできるようで待ちきれないね

このビデオを見てほしい。車が走り出すとビートが高まり、信号で止まる際にはボーカルが静かになる。ウィル・アイ・アムのチームがAMGのために曲を作っているので車が新たなレコーディングスタジオになり、ドライビングが編集作業へと変わる。

ドルビーも今までドルビーシアターなどでしか味わえなかった特別な映像・音響体験を車内で体験できるように進めている。Dolby AtmosやDolby Visionを搭載した車内で視聴するコンテンツは格別で、車の中にずっと居続けたくなる。車が最高のエンターテインメント空間になるとは言われて久しいが、今回のメルセデスやドルビーの体験を通じて私自身も実感できるようになった。

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CES 2024のXR、没入体験を中心にお届けしたが、この情報がApple Vision Proが出た後の来年以降どのように受け止められるのか?後から当記事を振り返り、いくつか答え合わせをしてみたいものである。

WRITER PROFILE

西村真里子

西村真里子

株式会社HEART CATCH代表取締役。“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。