CES2024の醍醐味は多様性を許容していること

世界中からスタートアップが集まるEureka Parkは、毎度多くの人が集まるが、CES会場はここだけではない。 image via CTA

今年も、日本でも、テレビでもインターネットでも、様々なメディアでCESのことが取り上げられている。どのような取り上げられ方をしているのか、というと、やはり主流は「世界最先端のテクノロジーが集まる展示会」みたいな文脈になるだろうか。

メディアなどで「世界最先端のテクノロジーが集まる展示会」として切り取られるCESの陰で、いつも現地に行くたびに「あ、CESってこういうのだった!」なんて思い出してしまう、CESのアナザーサイド、それは、「巨大な電気屋さんとしてのCES」だ。

CESは、現在はその名乗り方を変えたものの、出自は「家電見本市」だ。最先端の商品発表やら生成AIやら、去年あれだけ盛り上がっていたメタバースってどこ行ったのだっけ、みたいな話とは全然関係ないところで、冷蔵庫やマッサージ機や電動歯ブラシだって、家電もいまだに数多く展示されている。

そしてそれらは別に最新技術を使っているわけではない単純な新家電だ。「最先端っぽい」ものよりも、そんな「普通の電気製品」のほうが展示数で言えば、圧倒的に多いことは伝えられていない。

そしてその中には、「どうしてこうなった笑」と思ってしまうユニークな新製品も見掛けられ、思わずニヤニヤしてしまう。CESは、多様性に満ちた電気屋さん大好きっ子たちのワンダーランドでもある。

本稿では今年もたくさん出会うことができた、実は大事な「地味CES」を演出する展示物を紹介していこう。

枯れた技術の水平思考な製品大集合

Graphene Radiator

まずは、「そこにその技術使ったか!」と唸らせてくれたGRAPHENE SQUARE社の新商品「Graphene Radiator」だ。

この「Graphene Radiator」、何なのかというと、「ホログラム暖炉」だ。透明スクリーン投射型の暖炉デバイスは存在したが、このプロダクトでは、いわゆるペッパーズ・ゴーストの手法で炎の映像をガラス面に反射させ、まるでそこに炎が浮かんでいるように見せている。そして、この暖炉、ホログラムで炎を映すだけでなく、実際にヒーターとしても利用できる。

欧米において暖炉は、人々にとって想像以上に重要な存在だ。なにしろNetflixにも暖炉の映像だけを流している番組が存在する。家のどこかに映像でも良いから暖炉を置いておかないと落ち着かない。そこで満を持して登場したのがこの「ホログラム暖炉」というわけだ。2024年、ついに暖炉界にもホログラムが上陸した。この商品はCESイノベーションアワードも獲得している。


Lifespan Fitness

次は、Lifespan Fitness社によるオフィス用エアロバイクだ。CESの展示では、係の方が机でパソコンなどをいじって仕事をしながらバイクを漕ぐような感じで実演をしている。「仕事しながら運動できるエアロバイク」、というこれだけでも、「その手があったか!」と思わせてくれるが、このオフィス用エアロバイクはそれだけではない。

スマートフォン用の非接触充電器がついており、仕事しながら運動しながら、自家発電までしてスマホの充電もできるのだ。「SDGsってなんのことかよくわからなかったけどこういうことか」なんて思わされてしまう。


DR.WELL AF7001

中国系のブースは例年通り多様だが、マッサージマシン系の中国ブースでちょっとしたブームというか、複数見かけたのが「ズボン型マッサージ機」だ。「DR. WELL」の「AF7001」は、空気を送り込むための箱型モジュールとズボンのように足を突っ込んで履くマッサージャーを、エヴァンゲリオンを充電するときみたいな太い空気ケーブルでつないで利用するマッサージデバイスだ(医療領域では利用されてきたものらしい)。

UXはシンプルで、ズボンを履く、空気を送る、ズボンが膨らんで足が圧迫されて気持ちいい、という体験だ。しかし、なかなかどうして、こんなふうに足を重点的にマッサージされることはなかなかない体験で、ちょっとしたブームになっているのもうなずける。


strigブレード型マッサージ器

一方で「これは本当に良いのか?」みたいなアプローチの商品もある。strigの「ブレード型マッサージ器」を体験してみたが、これはあんまり気持ちよさがわからなかった。映像にあるような、ちょっと刃物のような(もちろん切れるようなものではない)機械を腕に押し当ててマッサージする。この機械はマッサージ中プルプル震えている。

「血行がよくなってむくみが取れます」と説明を受けたものの、いまいち腑に落ちない部分もある。毎日続けると効果があるのかもしれない。ここまでは、狙いもわかるし、効果もわかる商品たちをご紹介したが、最後は、「CESにはこんなものだって展示されているんだぞ!」という玉石混淆っぷりを象徴するようなプロダクトを紹介する。


HandFan Bottle

中国のHandFanの「HandFan Bottle」。これは、水筒に小さい扇風機がついている商品だ。水筒と扇風機を融合させる意味がよくわからなくて、担当の方にいろいろ聞いてみた。水筒からミストが出る、とかそういうことでもなく、これは単純に水筒に扇風機を付けただけのものらしい。たしかに、水筒も扇風機も暑いときに必要なものだから、一緒になっていると便利…なのか?すでに販売されていて、Amazonでも入手できる。

「世界最先端のテクノロジーが集まる展示会」の骨頂は、なんでも集まる展示会」

しかし、メディアを通すと「世界最先端のテクノロジーが集まる展示会」のイメージが色濃いCES。実際にラスベガスに行って見ることができる真の姿は「世界最先端のテクノロジーから、扇風機付き水筒まで、なんでも集まる展示会」だ。今年のCESは最終日を終えたが、世界最先端のテクノロジーに興味がなくても、電気屋さんが好きな方には強くおすすめしたいイベントなので、来年は是非足を運んでみてはいかがだろうか?