
パナソニックブースにおいて最も注目を集めていたのは、「AG-CX350」の後継機種「AG-CX370」の実機展示であった。初の一般公開となる実機を一目見ようと、多くの来場者が集まっていた。
最初にAG-CX370の製品ラインナップにおける位置付けについて説明しておくと、CXシリーズのラインナップとしては、放送用B4レンズマウント・ショルダータイプのAJ-CX4000GJ、ハンドヘルドタイプのAG-CX350、そして先日発表されたAG-CX20が存在する。AG-CX370は、AG-CX350の機能を拡張した後継機種として位置づけられ、その登場によりCXシリーズは全4機種のラインナップとなる。パナソニックにおいては、3連リングを搭載したHC-X2/X20といった機種も存在するが、これらは民生機として展開されている。

12G-SDI出力とGENLOCK搭載でマルチカメラライブ制作を強化
AG-CX350からAG-CX370への主要な変更点の一つに、12G-SDI出力への対応が挙げられる。AG-CX350のSDI出力は3G-SDIに準拠しており、HD解像度が出力の上限であった。4K解像度での出力はHDMI出力に限定されていた。AG-CX370は12G-SDIに対応しており、順当な進化と言える。

パナソニックは、リモートカメラやスタジオカメラ、複数のカメラを用いたライブ運用に注力している。小型なAG-CX370もライブシステムのカメラの一つとして活用したいというニーズは存在すると考えられる。そのような状況において、12G-SDIへの対応や、新たにマルチカメラ同期収録を可能にするGENLOCK入力端子の搭載、さらに有線での各社リモートコントローラーへの対応といった点が強化されている。これらの要素を含め、システム運用やマルチカメラライブに適した製品となっている。
4chオーディオ入力で現場のニーズに応える
さらに、最大4系統のマイク収録に対応可能な4chオーディオ入力端子および4ch入力ボリュームもAG-CX370の特筆すべき点である。従来のAG-CX350も4チャンネル記録に対応していたが、その構成は内蔵マイクと外部入力2チャンネルを組み合わせる方式であった。

近年、多くの撮影現場において、スタッフの削減と機材のコンパクト化が進む傾向がみられる。音声担当者とカメラマンの2名体制というパターンは減少しつつある。そのような現場からの要望として、外部入力を含めた4チャンネルオーディオ記録へのニーズが高まっていた。この要望に応え、AG-CX370のカメラ本体には、3チャンネルと4チャンネルの入力端子が新たに追加された。
これに関連して、4チャンネルの外部オーディオ入力に対応したことに伴い、4チャンネル分のオーディオボリューム調整が「AUDIO LEVEL CHつまみ」から直接操作できるようになった。

従来は、「AUDIO LEVEL CH1つまみ」と「AUDIO LEVEL CH2つまみ」の2チャンネル分のボリューム調整のみが可能であり、3チャンネルと4チャンネル目の調整はメニュー画面で行う必要があった。今回、外部から4チャンネルの音声を入力できる仕様になったため、4チャンネル全ての音量調整が物理的なつまみで可能となっている。
さらに、細部においては縦型動画の撮影への対応が挙げられる。縦動画撮影時に縦型動画フラグ機能が働き、クリップに縦方向の映像であるという情報が記録されるようになった。これにより、縦型動画撮影後の編集作業が効率化される。
ズームリングの応答性を向上させ、操作感を改善
最後に、AG-CX350から継承された基本的な特徴として、1インチセンサーによる高画質と、35mm判換算で24.5mmの広角から始まる光学20倍電動ズームレンズの搭載が挙げられる。1インチセンサーと20倍ズームの組み合わせは、CX370においても依然として優れた特性である。

さらに、4K60Pの10ビット記録に対応している点も特徴である。この仕様は、放送局レベルでの使用を想定したCXシリーズのコンセプトを反映していると言える。
CXシリーズ特有の点として、IP関連機能の充実も挙げられる。NDIに対応したカムコーダーは多くないが、このモデルはNDI機能を搭載している。
加えて、3連リングも搭載されている。この3連リングはCX350からわずかに進化しており、ズームリングの応答性が向上している。リングの動きを検知してレンズを駆動するという基本的な構成に変更はないものの、この改善は歓迎されるべき点であろう。操作感としては、民生機ビデオカメラ「HC-X2」とほぼ同等になったと考えられる。

