キヤノンは2025年4月3日、光学系パーツの組み込みにより、背景をぼかし被写体を際立たせる映像表現「Novel Look」を実現する有償サービスの受付を発表した。NAB 2025の同社ブースにおいては、122倍のボックスレンズ「UHD-DIGISUPER 122」に新たな光学ユニットを搭載した実機が初展示された。

同社の展示コーナーにおいて、最初に注目を集めたのはNovel Lookを用いた野球の映像であった。その映像では、被写体と背景の分離が明確に認識された。従来の野球の映像では、観客と選手が比較的鮮明に映り、俯瞰的な視点での中継という印象であったのに対し、Novel Lookを実現した映像は、特定の対象に焦点が当てられているように感じられた。

このように、「Novel Look」は、スポーツやコンサートの中継などにおいて、浅い被写界深度による印象的な映像表現を支援する。通常の放送用レンズでは、動きの速い被写体やピント合わせの困難な状況が存在するが、この光学ユニットを追加することにより、精密な焦点合わせがしやすくなり、背景と被写体を分離した印象的な映像の撮影が期待される。

近年、スポーツ中継などにおいても、印象的な映像を追求する目的でシネマレンズが用いられることがある。しかしながら、実際には色合わせの困難性や、放送オペレーションに習熟した技術者にとってシネマレンズの操作が不慣れであるといった課題が存在する。

この有償サービスの特筆すべき点として、色再現性に関しては元から放送用レンズなので、既存の放送システムとの親和性に関して心配する必要はない。操作性においても、現在使用しているコントローラーをそのまま利用でき、通常時の1倍、2倍のエクステンダー切り替えに加え、「Novel Look」への切り替え操作も可能である。

これにより、撮影シーンに応じて映像表現の選択肢が増える。印象的な映像を必要とする場面では「Novel Look」を選択し、通常の撮影やエクステンダーの使用が必要な場合には元の状態に戻すことができる。一つのカメラポジションで多様な撮影方法に対応できる点が特徴である。

デモンストレーションは、ソニーのシステムカメラ「HDC-5500V」との組み合わせで行われた。「HDC-5500V」は光学式可変NDフィルターユニットを標準搭載しており、アイリスではなく可変NDフィルターを用いて明るさの調整が可能。特に屋外などの高照度な環境下では、アイリスを開放に近い状態(F1.7やF2)に保ちつつ、NDフィルターで適切な明るさに調整することで、浅い被写界深度を維持した映像を継続的に撮影することが可能となる。他のカメラ機種でも利用可能であるが、特にこのVシリーズとの組み合わせにおいて、より高い適合性が示唆されている。

「Novel Look」の使用による映像の暗化といった悪影響はないとされる。従来のレンズと同様の明るさを維持しつつ、焦点合わせの容易化が主な特徴である。焦点が合いやすいように、フォーカスのピークを若干緩やかに調整されている。この調整により、全体的に焦点が合いやすくなり、比較的動きの激しい被写体に対しても安定した焦点合わせが可能になるという。