
キヤノンはNAB 2025の同社ブースにおいて、AI技術を活用したリモートカメラソリューション「マルチカメラオーケストレーション」を参考出展した。1人のオペレーターが複数のPTZカメラを制御できるシステムで、同システムが米国で展示されるのは今回が初めてだ。
マルチカメラオーケストレーションは、単一のカメラマンが操作可能なカメラ数を増加させ、多様な映像表現の実現を支援するソリューションである。具体的には、一人のカメラマンが操作するメインカメラの動きに連動して、キヤノンのPTZカメラが動作する。例えば、メインカメラマンが撮影中に被写体に寄りたいと考えズームイン操作を行った場合、PTZカメラも同様にズームインし、意図した構図での撮影を可能にする。これにより、効率的かつ質の高い映像制作が期待される。

実際のブースにおける展示では、ステージ上に二人の演者と3台のカメラが設置されていた。モニターの表示では、メインカメラの映像は左上に示されていた。メインカメラはジョイスティックによる手動操作が可能であり、このカメラをズームインすると、サブカメラも同時にズームインし、適切な構図を維持していた。同様に、メインカメラをズームアウトすると、サブカメラもズームアウトする動作が確認された。

この動作は、サブカメラに対してメインカメラとは異なる被写体を同一の構図で捉えるよう事前に指示することで実現される。
他の例では、カメラマンが一人であったため、2台のサブカメラは同一の演者を撮影していた。しかし、カメラマンがステージ上に移動すると、サブカメラは自動的にカメラマンを画角に収めるように向きを変える動作を示した。これは、システムが状況を認識し、適切なアングルへ自動的に調整する機能を示唆する。サブカメラに付与された機能として、メインカメラとは異なる被写体がフレームインした場合、その被写体を自動的に捉える役割が挙げられる。
別の活用例として、インタビュー場面が紹介された。インタビュアーとインタビュー対象者がいる状況において、主要な被写体であるインタビュー対象者のみを複数の画角で捉えたい場合への対応が示された。
具体的には、単一の被写体に対し、寄り、引き、中間の各画角をサブカメラに割り当てることで、多様な映像表現が可能になる。これは、サブカメラにメインカメラと同じ被写体を異なる画角で捉えるよう指示することで実現される。
さらに、近年のニーズとして増加しているグループショットへの対応も紹介された。メインカメラの動きに影響されることなく、常にグループ全体のショットを記録するようサブカメラに指示することが可能である。例えば、メインカメラが特定の人物にズームインした場合でも、サブカメラのうち1台はグループ全体のショットを維持し、もう1台はメインカメラに合わせてズームインする、といった運用が可能になる。
このソリューションは、撮影現場の状況に応じて柔軟な運用が可能となるよう設計されている。事前に全てをプリセットして全自動で動作させるのではなく、撮影者の意図する映像表現を最大限に実現できるよう、自由度の高さを重視した設計となっている。

