アビッドは今年もNABに出展し、主に2つの発表を行った。

1点目は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)との協業である。ポストプロダクションのワークフローをクラウド上で実現する内容を発表した。従来オンプレミスで提供してきた共有ストレージであるNEXISストレージをクラウド上に展開し、Media Composerもクラウド上で動作させることで、ポストプロダクションのワークフローをクラウド上で実現するというものである。この内容は、アビッドのブースおよびAWSのブースで紹介された。

アビッドブースでの新しいAvid on AWS制作フレームワークデモ
AWSブースでの新しいAvid on AWS制作フレームワークデモ

2点目は、昨年アビッドが買収したヨーロッパの企業Wolftechに関する発表である。同社は、主にニュースやスポーツといった制作システムのワークフローを提供する企業であり、ヨーロッパを中心に多数の導入実績を持つ。大きな特徴として、クラウドネイティブなSaaS型ソリューションであることが挙げられる。

Wolftechのシステムは「ストーリーセントリック」という概念に基づいている。従来のニュースやスポーツ番組制作のワークフローが放送を主眼として構築されていたのに対し、現代においては、同じニュースコンテンツをソーシャルネットワーク、YouTube、ストリーミングサービスなど多様な媒体へ展開することが一般的となっている。Wolftechのソリューションは、この異なる媒体への展開を単一のワークフローで実現することを目指している。

具体的には、記事作成を起点として、取材担当者、取材場所、使用機材といったリソース管理から、編集、レビュー、承認、そして放送や各種媒体への公開まで、一連のプロセスを記事単位で統合的に管理する。コンテンツ管理、アセット管理もこの枠組みに含まれる。

アビッドのブースでは、「ストーリー・ドリブン・ニュースルーム・コラボレーション」というキーワードが示されていた。これは、放送だけでなく、記事を中心としたワークフロー構築を特徴とし、必要なリソース管理や媒体へのパブリッシュといった機能が一気通貫で実現できるサービスであることを意味する。

アビッドは従来より、iNEWSやMediaCentralといった報道制作ソリューションをグローバルに展開してきた実績がある。今回、これらの既存ソリューションとWolftechのシステムを統合し、単一の画面から両方の機能を利用可能にすることで、ユーザーは複数のアプリケーションを切り替えることなく、効率的なワークフローを構築できる。

Wolftechのシステムは、記事作成をワークフローの起点とし、人的リソース、スケジュール、社内プロセスなどを統合的に管理し、最終的に放送媒体のみならず、ソーシャルネットワーク、YouTube、ストリーミングサービスといった多様な媒体へのコンテンツ配信をクラウドネイティブな環境で実現することを目指している。

NABでは、アビッドが培ってきたMediaCentralベースの報道ソリューションとWolftechのニュースソリューションを統合し、単一の画面から両方の機能を活用できる新しいソリューションが、AI機能も組み合わせて紹介された。

その他、オーディオ関連の展示として、イマーシブオーディオに関する技術や、Pro ToolsへのAIによる文字起こし機能の実装などが紹介された。