NiSiといえば、これまで自分の中では「フィルターのメーカー」という印象が強かった。ところが最近は、その認識を少し改めたほうがよさそうだ。レンズ、それもかなり攻めたスペックのレンズを次々と見せてくる。今回のBIRTVでNiSiブースを訪れて、その思いはさらに強くなった。

会場で目に入ったのは「50mm T1」と「26mm F0.7」の2本。数字を見ただけでも、普通のレンズを並べているわけではないことが伝わってくる。特に気になったのは26mm F0.7である。「26mmでF0.7?」と、思わず展示の前で立ち止まってしまった。
まず50mm T1。NiSiでは「T1 PRIME 50mm」として発売を予定する大口径シネマレンズで、BIRTV会場で確認した説明では、16枚構成の光学設計、18枚の絞り羽根、46mmのイメージサークルを採用する。重量は約2.29kg、レンズ前面には95mm径のフィルターネジを備える。

50mmという焦点距離でT1。この組み合わせだけでも、シネマレンズとしてかなり気になる存在である。低照度環境で光量を確保しやすく、被写界深度を浅くした画作りも期待できる。実物を見ると、コンパクトさを追求したレンズというより、映画制作の現場でしっかり使うことを意識した堂々としたサイズ感だ。

会場の説明パネルでは、T1の絞り開放から実用的な描写を狙った設計であることもアピールされていた。また、FUJIFILM GFX ETERNA 55やBlackmagic URSA Cine 17K 65などのOpen Gate撮影をカバーし、ARRI ALEXA 65の5.1Kモードにも対応するという。大きなイメージサークルを確保することで、大型センサーを搭載したシネマカメラでの使用を意識した設計となっている。

描写については、クラシックレンズを思わせる味わいと現代的なボケ表現の両立をコンセプトとして掲げていた。44×33mmフォーマットで使用した場合は、フルサイズ換算で約40mm相当の画角となる。50mmという焦点距離ながら、大型センサーとの組み合わせでは標準域よりやや広めの画角として使える点も興味深い。
NiSiはすでに「ATHENA PRIME」や「AUREUS PRIME」などのシネマレンズを展開しているが、50mm T1を見ると、大口径レンズの開発にもかなり力を入れていることがうかがえる。
そして、今回どうしても気になってしまったのが、BIRTV会場で展示されていた26mm F0.7である。


最初にスペックを見たとき、「F0.7」という数字を二度見した。F1.0でもF0.95でもなくF0.7。しかも50mmや85mmではなく26mmの広角である。ぶっちゃけ、今回のNiSiブースで個人的に一番引っかかった数字がこれだった。
26mm F0.7は、26mmの広い画角とF0.7という極めて明るい開放F値を組み合わせたレンズだ。極めて浅い被写界深度と優れた低照度撮影性能を狙い、光学系には2枚の大口径研削非球面レンズを採用する。大口径化だけではなく、解像力やコントラストとの両立も狙った光学設計となる。

ここが面白い。広角レンズは被写界深度を確保しやすいというイメージがあるが、26mmでF0.7まで開けば話が変わってくる。広い画角を維持しながら被写界深度をかなり浅くできるため、人物と背景の関係を残しつつ、被写体を浮かび上がらせるような映像表現が考えられる。
さらに、光量の少ない場所でどこまで撮れるのかも気になる。照明を大きく組まず、その場にある光を生かして撮影するようなシーンでは、F0.7という明るさが撮影方法そのものを変える可能性もある。もちろん、実際の描写や周辺部の画質、フォーカス操作の感触などは、きちんと撮影してみなければ判断できない。それでも、このスペックを見せられると一度使ってみたくなる。
もうひとつ面白かったのが、50mmが「T1」、26mmが「F0.7」と表記されている点だ。

T値はレンズの透過率を考慮した実際の光量を示す指標で、F値は焦点距離と有効口径の比から求められる。そのためT1とF0.7を数字だけ並べて、「こちらのほうが何段明るい」と単純比較することはできない。
それでも26mmでF0.7という設計そのものは興味深い。単に数字のインパクトを狙ったレンズなのか、それとも実際の映画制作で使える描写まで仕上げてくるのか。このあたりはぜひ実写で確かめてみたいところである。

NiSiブースを見終えて感じたのは、「フィルターメーカー」というイメージだけで見ていると、現在のNiSiを見誤りそうだということだ。フィルターで培った光学技術をベースにしながら、シネマレンズ、中判向けレンズ、そして今回のような大口径レンズへと領域を広げている。
50mm T1も面白い。しかし、個人的にはやはり26mm F0.7が頭から離れない。「広角26mmでF0.7を使ったら、実際にどんな画になるのか」。スペック表を眺めるだけでは答えは出ない。
だからこそ撮ってみたい。BIRTVのNiSiブースで見つけた26mm F0.7は、久しぶりに「これ、実際にカメラにつけて試したいな」と素直に思わせてくれた一本である。